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スピアーズ、ニュージーランドのチーフスに惜敗 日本勢通算1勝3敗 ~クロスボーダーマッチ~

 10日、ラグビーの国際交流試合「THE CROSS-BORDER RUGBY 2024」が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(リーグワン)のクボタスピアーズ船橋・東京ベイがスーパーラグビー・パシフィック(SRパシフィック)のギャラガー・チーフス(ニュージーランド)に30-35で敗れた。同日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で横浜キヤノンイーグルスはブルーズ(ニュージーランド)に22-57で敗戦。リーグワン発足後初のクロスボーダーマッチはリーグワン勢の1勝3敗で終わった。

 

 昨季リーグワンを制したスピアーズと、SRパシフィック準優勝のチーフスが対戦した。チーフスは1週間前の埼玉パナソニックワイルドナイツに14-28で敗れており、2連敗は避けたいところ。前節出場したCTBクイン・トゥパエア、SOジョシュ・イオアネらニュージーランド代表(オールブラックス)のキャップフォルダーに加え、同70キャップのCTBアントン・レイナートブラウンがスタメン入りした。

 

 先制したのはスピアーズ。9分にPGをCTBハラトア・ヴァイレアが決めた。13分に敵陣深くに攻め込み、トライを予感させるアタックで場内を沸かせた。15分にトライとゴールで逆転されたものの、スピアーズも粘りを見せる。

 

 25分、CTBリカス・プレトリアスの突破から敵陣深くに侵入。最後はSO岸岡智樹の飛ばしパスから右サイドでボールを持ったWTB根塚洸雅が仕掛ける。迫ってきたチーフスディフェンス2枚の間を縫うようにしてインゴールへ。最後はタックルを受けながら右手を伸ばし、ボールをインゴールに置いた。「相手が外側を張っていて、内側の人のカバーも遅かった」と冷静に局面を見極めたトライだった。

 

 しかし32分は自陣攻め込まれ、最後はFWに押し込まれた。39分にはオフロードパスを駆使したニュージーランドらしいアタックから大きくゲインを許し、8-21で前半を終えた。

 

 ハーフタイムでアーリーエントリーによりメンバー入りを果たした帝京大学4年の江良颯を起用。その名前がアナウンスされると秩父宮ラグビー場が沸いた。後半最初の得点は、その江良が起点となった。左サイドで獲得したラインアウトで長身LOルアン・ボタへ放り込む。そこから右へと展開すると、岸岡が大外のWTB山崎洋之へ飛ばしパス。山崎はインゴール右隅に飛び込んだ。

 

 PGで5点差まで詰め寄ったスピアーズだが、17分にはラインアウトモールから失点。リードを12点に広げられた。それでも20分、ラインアウトモールから江良が抜け出し、インゴールに迫る。ここはトライを防がれたが、フォローしたPR才田智が押し込んで再び5点差に詰め寄った。

 

 24分、オフロードパスの連続でディフェンスラインを切り裂かれ、トライを与えてしまう。またしても12点差を追う展開となったスピアーズは36分。タッチライン際でボールを受けた山崎が持ち前のスピードを生かしてトライを挙げた。FB島田悠平がコンバージョンキックを決め、5点差に迫った。残り時間は約3分。その後もゴールに迫る場面もあったが、インゴールには届かず、ノーサイドの笛を聞いた。

 

 試合後、スピアーズのフラン・ルディケHCは敗れはしたものの、「最後まで勝負の行方が分からない試合ができたと思っています。ネガティブな面よりもポジティブな面のほうが多い試合だった」と総括。ポジティブな面というのは、「若手に成長する機会」を与えられたことだろう。

 

 この日がスピアーズのデビュー戦となった江良は、ボールキャリーの強さを発揮。スクラムで相手のコラプシングを誘発するなど存分にアピールした。ルディケHCは「いいパフォーマンスでスクラムを安定させた。才能のある選手であること示した」と高評価。江良本人は「いい経験をさせてもらえた。この経験をしっかり自分のものにしたい」と前を向いた。

 

 今季はSHでも起用されている岸岡は“本職”で好プレーを連発した。「高校時代から両足蹴られるのがスタンダードだよね、という指導を受けていた」。状況に応じて蹴る足をスイッチできる点はエリアマネジメントにおいて非常に有効だ。2トライを演出したロングパスも健在。指揮官も「彼はXファクター(特殊能力の持ち主)」と話ししていただけに今後、SOの位置で起用も増えるのではないか。

 

 スピアーズは来週はバイウイークとなり、24日のコベルコ神戸スティーラーズ戦からリーグ戦再開となる。リーグワン2連勝中。クロスボーダーラグビーで得た収穫と課題を手に、勢いを加速させたいところだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)