「NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24」ディビジョン1第7節が17日に行われ、埼玉パナソニックワイルドナイツが東京サントリーサンゴリアスを24-20で下した。ワイルドナイツは開幕からの連勝を7に伸ばし、勝ち点33でリーグ首位をキープ。敗れたサンゴリアスは連勝が4でストップしたものの、7点差以内の敗戦よるボーナスポイントを獲得。通算成績を5勝2敗(勝ち点24)とした。

 

 トップリーグ時代からしのぎを削ってきた両チームだがリーグワンがスタートしてからはワイルドナイツがプレーオフを含め4連勝中だ。今季初対戦はワイルドナイツがリーグ戦6連勝中、サンゴリアスが4連勝中で迎えた。

 

 舞台はワイルドナイツのホストスタジアム、埼玉・熊谷ラグビー場。先制したのはワイルドナイツ。3分、敵陣でFLラクラン・ボーシェーがプレッシャーをかけ、サンゴリアスの反則を誘った。これで得たPGをSO松田力也が着実に決め、3-0とリードした。

 

 アタッキングラグビーを標榜するサンゴリアスは9分、ハイテンポのパス交換からWTB江見翔太が抜け出した。一気に敵陣22mライン内に侵入すると、右へ展開。最後はCTB尾﨑泰雅のパスを受けた兄・晟也がインゴール右に飛び込んだ。SO髙本幹也がコンバージョンキックを成功させ、7-3と逆転する。

 

 ワイルドナイツもアタックで魅せる。WTBマリカ・コロインベテの突進でボールをキャリーし、CTBダミアン・デアレンデが左サイドでわずかスキを突く。最後は大外のCTBディラン・ライリーにボールを渡した。フリーのライリーはインゴール左にトライ。松田のコンバージョンキックが決まり、10-7と再びリードを奪った。両チームがPGを1本ずつ決め、前半は13-10、ワイルドナイツリードで終えた。

 

 後半5分、サンゴリアスは髙本のドロップゴールで同点に追いつくと、直後の6分に髙本が自陣からランを仕掛けてチャンスメイクする。連続アタックでワイルドナイツの守備陣を崩すと、FL桶谷宗汰のパスでCTB中村亮土がフィニッシュ。髙本がコンバージョンキックを成功し、20-13とサンゴリアスがリードする。

 

 ここまでリーグ最多得点、最多トライのワイルドナイツも流れるようなアタックを披露。デアリエンデが生み出したスペースを突き、WTB長田智希が大きくゲインする。敵陣深くへ攻め込むと速いテンポでパスを回し、最後はFB野口竜司がインゴールに運んだ。松田のコンバージョンキックは外れたものの、18-20で射程圏内に。

 

 21分、松田のPGで逆転すると、シーソーゲームを締め括りにかかる。光ったのはワイルドナイツの持ち味である堅守。25分、SH小山大輝のタックルで相手のノックオンを誘った。30分にはデアリエンデがジャッカル。自陣に攻め込まれてもゴールは割らせない。

 

 堅いのは守備だけではない。堅実な試合運びもワイルドナイツの強さである。38分、敵陣でペナルティーを得るとスクラムを選択。相手がヒザを着き、ニーリングの反則を犯すと今度はショットを選んだ。場内に表示されている時計は39分を回っていた。PGは1分以内に蹴られなければいけない。逆に言えば59秒までは時間をかけることが許される。キッカーの松田は試合終了のホーンが鳴るのを待ち、ボールを蹴った。PG成功で3点を加えたワイルドナイツが4点差でサンゴリアスに競り勝った。

 

「全員が同じ絵を見れていた」とは松田。スクラムを選択したシーンを振り返る。タッチに蹴り出してモールを組んだ場合、相手にスティールされる可能性がある。ショットを選んだ場合、残り時間を考えると、PGが決まったとしても相手の攻撃が1プレー残る。野口が負傷し、1人少ない状況でもあった。逆転のリスクは最小限に。松田は「そういうクレバーさはラグビーに必要だと思う。勝つことを優先した」と胸を張った。

 

 途中出場で、キャプテンのHO坂手淳史に代わってゲームリーダーを務めた堀江翔太が補足する。

「時間を使いたかったし、スクラムが安定している自信もあった。あとセンタースクラムはディフェンスもしにくい。ラインアウトでの反則も嫌やし、一番時間を使えて自信があるものを選びました。ウチは10番、僕(やキャプテン)が決めたことに対し、頭を全部、そっちに向けられる」

 

 試合後、ロビー・ディーンズHCは「グレイト・コンテスト」と語り、「規律高くプレーできたことが勝因」と総括した。坂手も「ゲームの大半、規律よくできていた。それはワイルドナイツのDNA」と言う。トータルの反則数はパナソニック5に対し、サンゴリアス13。規律よくできていたとは反則のみならず、帰陣の速さからも見られてた。「ゲームの中でブレイクされることはある。みんなで戻ってディフェンスを繰り返し、ターンオーバーを起こす。そこに繋げられていることに関しては、みんないい戻りをしていました」と坂手。スコア以上にワイルドナイツの強さが際立ったゲームだった。

 

(文・写真/杉浦泰介)