11日、ムエタイのラジャダムナン・ワールドシリーズ(RWS)の日本開催第1回大会『RWS JAPAN』開催を控え、前日公開計量が行われた。メインイベントはラジャダムナンスタジアム認定スーパーフライ級王座統一戦。暫定王者の名高・エイワスポーツジム(吉成名高)と正規王者プレーオプラーオ・ペップラオファー(タイ)が対戦する。

 

 ムエタイの聖地ラジャダムナンスタジアムで開催されてきたRWSが日本初上陸だ。舞台は日本格闘技界の聖地・後楽園ホール。1978年3月、タイ人以外で初めてのムエタイ王者に、“キックの神様”こと藤原敏男が就いたのも、この会場である。名高は「自分が格闘技を始めて、プロの試合を観に行った時からずっと聖地と言われている場所。そこで最高の相手と対戦できて光栄。メインに選んでいただいたからには、観ている人が感動するような試合をしたい」と意気込んだ。
 

 計量では互いに 115ポンド (約 52.16kg) のリミットをクリア。51.82kgでパスしたプレーオプラーオが人気漫画『ドラゴンボール』のかめはめ波のジェスチャーを決めれば、52.12kgの名高も人気漫画の『僕のヒーローアカデミア』の主人公・ 緑谷出久 (みどりや・いずく)のポーズを取った。

 

 名高は昨年12月、タイのラジャダムナンスタジアムで行われたスーパーフライ級暫定王座決定戦で過去に敗れたことのあるシューサップ・トー・イッティポーン(タイ)を2ラウンドKOで下し、ベルトを巻いた。“3階級制覇”を達成したが、これは完全ではない。なぜなら正規王者のプレーオプラーオがいるからだ。名高はこう抱負を述べた。
「記念すべき大会で、昔から戦いたかったプレーオプラーオ選手と試合ができることをうれしく思っています。明日は最高の試合を見せ、自分が必ず3階級制覇を成し遂げる」

 

 日本初上陸のRWSで、勝つことはもちろんムエタイの魅力を伝えたいと考えている。

「格闘技はどうしても野蛮な、ちょっと怖いなっていうイメージを持たれますが、ムエタイはもちろん激しさもあるんですけど、自分は美しさがあると思っています。例えば相手に対するリスペクトだったりとか、そういう気持ちを常に持って戦っている。技術的な面ももちろんなんですけど、ムエタイの文化を僕たちの試合を観て感じてもらえるような試合をしたい」

 
 名高の所属するエイワスポーツジムの中川夏生会長は「本場のものを、そのまま持ってきたのがRWS JAPAN。今回の大会開催はスポーツ文化、格闘技文化の交流に近い」と言い、ムエタイの魅力をこう語った。
「相手を敬って戦うところ。互いの鍛錬の成果や強さを純粋に競い合うものです。ワイクルー(戦いの前にリング上で行う舞い)は家族、師匠、生まれ育った土地・国に感謝する。それを試合前に行うのが僕はすごく好きです」
 
 RWS JAPANの佐々木洋平代表もムエタイの魅力にハマッた1人だ。「タイでRWSを観た時、1ラウンドからマストラウンドシステムで、分かりやすかった。このシステムなら日本でも受けると思いましたし、日本でムエタイが立ち技最強であることを広めたくて、RWS JAPANの開催を目指しました」。今回を契機に定期開催を視野に入れる。「年に4回くらいやりたいと思っています」。今大会は日本とタイの対抗戦やプレミナリーファイトを含め計16試合で前売りチケットは既に完売。当日券も若干売りに出されるという。
 
 会場に足を運んだ観客、そして配信の視聴者をどれだけ魅了できるか。今後を占う新たな船出となるだろう。
 
(文・写真/杉浦泰介)