2024年シーズンのJリーグが2月23日に開幕する。

 

 今季からJ1、J2、J3のクラブ数が20に統一され、J1は下位3クラブが自動降格となり、J2は上位2クラブと3位から6位によるプレーオフ優勝クラブがJ1に昇格するなどレギュレーションも変更された。

 

 各クラブとも開幕に向けて準備していくなかで、シーズン前の話題となるとやはり新戦力。“大型すぎる補強”を敢行した浦和レッズをはじめ見どころがたくさんある。個人的に注目しているのが欧州から14年ぶりにJリーグの舞台に戻って来た40歳のベテランGK、川島永嗣だ。J1に昇格したジュビロ磐田をけん引していく立場にもなる。

 

 2022-23年シーズン限りでストラスブールと契約満了になるとフランスのアマチュアクラブでトレーニングを続けてきたという。半年ほど所属先がない状態だったことになるが、その点はまったく問題ではないだろう。

 

 というのも2015年にはベルギー1部スタンダール・リエージュを退団してから半年ほどチームが見つからなかったことがある。欧州の様々なクラブに練習参加したものの、契約には至らなかった。それでもスコットランド1部ダンディー・ユナイテッドへの移籍にこぎつけ、コンスタントに出場してキャリアを先に進めた。2016年6月からは日本代表にも復帰。ロシアワールドカップでも3大会連続で正GKを務めている。

 

 フランス1部FCメス、ストラスブールでは「第3GK」の立場からのし上がって、自らの手で出場機会をつかんだ経験も持つ。ロシアワールドカップの前に彼がこんなことを話してくれたことがある。

 

「僕が大切にしてきたのは、苦しいときこそ卑屈にならないということです。誰々のせいで、とか思ったり、それこそ周りの人に当たったりとかすると、結局それって自分にはね返ってきてしまう。卑屈になることなく、難しい局面に自分がいるのを認識する、そして向き合ってみる。半年後、1年後になってようやくうまくいき始めたときに(卑屈になってしまった場合と)差がつく。これはスポーツの世界だけじゃなく、人生においても同じことが言えるんじゃないですかね」

 

 逆境を乗り越えるたびにたくましさを増す。それだけに2022-23年シーズンの出場ゼロや半年間の無所属が懸念材料になるどころか、むしろ自分と向き合い成長の糧としてきたことは容易に想像がつく。

 

 川島と言えばトレーニングの虫。40歳になった今もそれは変わらないと聞く。ヴァイッド・ハリルホジッチが日本代表監督時代にGKコーチを務めたエンヴェル・ルグシッチがメスでプレーする川島のトレーニングを視察して「彼はいつも120%でトレーニングするプロフェッショナルな姿勢を見せてくれました」と感心していたことを思い出す。

 

 ハリル時代、所属チームでの選手のプレーをブルー、グリーン、オレンジ、イエロー、レッドと5段階で評価し、それを選手選考に反映させていた。

 

 ルグシッチは2017年4月、川島のリーグアンデビューを現地で見ている。パリSG相手に3点を失って敗れたものの、高評価を与えてこう言った。

 

「彼は非常に良いプレーをしていました。ゲームの内容だけ見れば評価のカラーは2番目のグリーンだったかもしれません。しかしこれまでの取り組みを含めて、1番上のブルーとしました」

 

 ルグシッチは点ではなく、線で川島を見ようとしていた。実際、川島の貢献によってメスはここから奮闘して1部残留を決めている。

 

 点をしっかりと線にしていく力が川島にはある。

 

 川島の豊富な経験が、まずはJ1残留というミッションをクリアしなければならないジュビロの大きな力になることは言うまでもない。それはピッチ内にとどまらず、ピッチ外においても。日々のトレーニングから妥協を許さない120%の姿勢は特に若い選手たちに多大な影響を及ぼすことにもなるだろう。

 

 ジュビロの開幕戦は2月24日。ホームのヤマハスタジアムに昨季王者のヴィッセル神戸を迎える。

 

 14年ぶりのJでどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか――。


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