昨年度のJ1王者と天皇杯王者が戦うサッカー・富士フイルムスーパーカップのヴィッセル神戸(J1王者)対川崎フロンターレ(天皇杯王者)の一戦が17日、国立競技場で行われ、川崎Fが1対0で勝利した。試合は後半3分、DFファンウェルメスケルケン際がセットプレーの流れから押し込み、川崎Fが逃げ切った。

 

 川崎F、新戦力をスタメンに5人起用

ヴィッセル神戸 0-1 川崎フロンターレ(国立)

【得点】

[川] ファンウェルメスケルケン際(48分)

 

 今季、川崎Fの注目選手はプロ2年目のFW山田新だ。元々、同クラブの下部組織出身の選手だ。ユースから直接トップには昇格せず、桐蔭横浜大学に進学。2022年には特別強化指定選手としてトップチームに登録され、翌年に晴れて正式に“古巣復帰”した。

 

 175センチと上背はないがポジショニングの良さ、相手の背後に抜け出す動きで勝負するタイプだ。本来ならば2トップの一角が一番生きるのかもしれない。しかし、川崎Fのメインフォーメーションは4-3-3。この日は右ウイングで先発した。

 

 本来のポジションとは異なるが、随所に魅せ場はつくった。前半16分、山田は右のワイドに開き、パスを受ける。相手DFが詰めてくると、歩幅を読み、ダイレクトでまた抜きを披露し、右サイドを難なく突破した。クロスは相手GKにキャッチされたが、キラリと光るセンスを見せつけた。

 

 後半11分、センターフォワードのバフェティンビ・ゴミスが右サイドの深い位置にスルーパスを送る。山田はDFと競りながら、フィジカルで弾き飛ばし、ゴールラインギリギリでボールに追いついた。期待の20番は軸足の裏を通すトリッキーな切り返しでゴール方向を向く。ルックアップし、ゴミスにラストパスを送ったが、審判の判定は無情にも、山田の位置でゴールラインを割っていたとして、ゴールキックとなった。スローで確認したが、山田は確かにピッチ内にボールを残していた。

 

 川崎Fの右ウイングは長年、FW家長昭博の定位置である。彼も今年で38歳を迎える大ベテランだ。「(メンバーを入れ替える)こういう戦いが今シーズンは増える」と鬼木達監督。家長の体力的な負担を考慮すると、右ウイングでの山田の起用は増えるだろう。

 

 チャンスメイクのみならず、「点の取れるウイング」として山田が覚醒できるかどうか。FW小林悠がセンターフォワードから右サイドにコンバートされ、「得点」というはっきりとした結果を出したように――。

 

 昨年度天皇杯王者の20番から、目が離せない。

 

(文/大木雄貴)