(写真:2022年から女子日本代表の指揮を執る山本監督 ©︎JBFA)

 ブラインドサッカーの国際親善試合「さいたま市ノーマライゼーションカップ」(17日、さいでん科学アリーナさいたま)を控え、女子日本代表の山本夏幹監督がオンラインで取材対応した。同大会で最新の世界ランキングで1位の日本は同2位のインド代表と対戦する。

 

 日本は女子初の世界大会となった昨年8月の「IBSAブラインドサッカー女子世界選手権」(イギリス・バーミンガム)決勝でアルゼンチン代表に1-2で敗れた。王座奪取に向け、日本は動き出している。続投が決まった山本監督が強化方針を報道陣に説明した。24年から4シーズンにわたる中長期強化方針を立てており、今季は世界ランク1位の維持、10月にアルゼンチンで行われるIBSAブラインドサッカー女子ワールドグランプリ(WGP)で優勝することを目標に置いている。

 

 指揮官は<ボールも人も連動して動き続けるワクワクするサッカー>を標榜し、そのために取り組んできた戦術を動画を披露した。ノーマライゼーションカップでは、攻撃のスイッチを入れるパスを何本通すことができるか。今回は得点源の菊島宙を招集しない。世界選手権でもチーム最多の6得点を挙げたエースがいない中で、どのような得点パターンを見出せるか――。その相手が世界ランク2位で、昨年の世界選手権準決勝(0-0でPK戦勝利)で対戦したインドとあれば、格好の腕試しの機会と言えよう。

 

 山本監督は<世界一を勝ち取るためには女子日本代表として戦う選手一人一人が心も体も強くあらねば世界では通用しないことを痛感しました>(日本ブラインドサッカー協会HP2023年11月17日配信)で述べていた。この点について、補足した。
「世界選手権決勝に向かう過程の中、長期でチーム活動をすること自体が初めてでした。ピッチ外のところでミスコミュニケーションがあったことがオン・ザ・ピッチでも表れてしまった。相互理解を深めていく必要があります。またトーナメントを勝ち上がっていく中でのメンタル。自分たちが掲げてきたサッカーを実現できない中でも戦える力を付けていきたい」

 不測の事態が起こったとしても、動じない心ということか。時には合宿で選手を追い込み、メンタルを鍛える考えもあるという。

 

 また日本ブラインドサッカー協会(JBFA)としても、来年開催予定の第2回世界選手権(開催地未定)での優勝を目指すため、選手発掘に力を注いでいる。その取り組みのひとつが3月17日に実施する「2024 ブラインドサッカー女子日本代表GKキャンプ」(東京・MARUIブラサカ!パーク)だ。現在、女子日本代表の強化指定選手は9人。そのうちGKは和地梨衣菜ただ1人だ。世界選手権は和地と寺林眞智子がゴールマウスを守った。GKに必要な条件として、山本監督は「ブラインドサッカーを掲げるビジョンを理解していることが大前提」と挙げ、こう続けた。
「テクニック的にはセービング能力が大事になってきます。サッカーに限らず、フットサルとハンドボールを経験している人にも応募してもらいたい」

 

 普及と強化の両輪を回しながら、名実ともに世界一を目指す。JBFAの挑戦は続く。

 

(文/杉浦泰介)

 

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