(写真:表彰セレモニーで優勝を喜ぶboldiiies<左>とUTSUNOMIYA BREX)

 18日、3人制バスケットボールの第9回3X3日本選手権大会最終日が東京・大森ベルポートで行われた。女子はboldiiies(千葉)が初優勝。男子はUTSUNOMIYA BREX(栃木)が3連覇を達成した。MVPは女子が浅羽麻子、男子がテオドール・アタナソフ(セルビア)と優勝チームからの選出となった。

 

 各都道府県、東・中・西日本エリア大会を勝ち上がった男女各16 チームが大森に集い、日本一を争った。女子はboldiiiesがDay1で1回戦でEPIC(兵庫)に、準々決勝ではGREEN ARROWS (三重)に勝利。Day2の準決勝でOWLS(福島)を破り、ファイナルに進出した。対するYOKOHAMA GFLOW(神奈川)だ。

 

(写真:デグビオンは長身と長い手を生かし、インサイドで力を発揮)

 開始早々、桂葵のパスから大橋実奈が決めて幸先よく先制する。しかしYOKOHAMA GFLOWの吉武忍、矢上若菜を中心にスコアされ、リードを許す展開に。188cmのアマ・デグビオン(ドイツ)、180cmの桂に加え、浅羽が内に外にと決めて追いかける。3分20秒を残した時点で11-15と4点差をつけられた。

 

 それでもboldiiiesは果敢にゴールにアタックした。YOKOHAMA GFLOWは反則がかさんでいく。3x3は個人ファウルがないが、7個目以降のチームファウルは2本のフリースローが与えらえる(10個目以降はさらにフリースロー2投後、マイボールからスタート)。boldiiiesはフリースローを着実に決め、残り1分半を切ったところで逆転に成功する。

 

(写真:自身3度目の日本選手権優勝で初のMVPに輝いた浅羽)

 スコアは19-17。残り約30秒となったところで、boldiiiesはタイムアウトを要求した。桂によれば、終盤のタイムアウトではこう話し合っていたという。
「相手のファウルが増えていたので、『ファウルをもらいにいこう。強くプレーしよう。ノーファウル、ノーツー(2Pシュートを打たせない)。とにかく我慢して攻めよう』と声を掛けていました」
 再開後、桂がスコアして20-17で残り20秒を切った。その後、YOKOHAMA GFLOWのシュートが外れると、うまく時間を使い、試合終了のブザーを聞いた。

 

「私たちは草バスケチームと呼んでいるんですが、やりたい人たちが集まって日本一を目指せるのが3x3の魅力。特に日本選手権は各都道府県予選からつながって日本一を目指せる場所。いろいろな人が目指してほしいし、いろいろなチームと対戦したいです」
 桂が「草バスケチーム」と評するboldiiiesは、昨年秋に集まった“即席チーム”だという。

「自分たちがただバスケを楽しもうという感じで始めた。プロチームではありません。自分たちが自由にわがままにバスケを楽しむ集団です」

 

 昨年の日本選手権は、浅羽と大橋が準優勝のTEAM HUSTLE(千葉)、桂はベスト8のBEEFMAN(岐阜)で出場した。

「集まって間もないメンバーの組み合わせ。個々の能力は高いけど、ポジションのバランスが取れているわけでもない。(浅羽)麻子さん以外はみんな本来の役割と違うチャレンジだった。大会を通して、うまくアジャストできたと思います」と桂。浅羽も試合を重ねるごとに「ケミストリミーも良くなった」と振り返った。ただチームとして今後、どう活動していくかは未定だという。「自由にわがままにバスケを楽しむ」ことを追求していくのだろうか。

 

(写真:不調だったという桂<右>「全然乗れない中、チームメイトが助けてくれた」と感謝した)

 MVPは先輩の浅羽に譲ったが、桂は勝負どころでの得点力が光った。日独混合チームの“Düsseldorf ZOOS”の一員として「FIBA 3X3 Women's Series」を2シーズン戦った3X3を代表するプレーヤーだ。本人によれば「今大会は調子が良くなかった」という。「決勝までは試合をシュート練習のつもりで調整していくイメージでやっていました。ただ決勝では切り替え、“とにかくアタックしよう”と考えていました」

 

 試合開始前、桂は審判に近付いてグータッチで挨拶をする。良い悪いではないが、審判に向かって軽く手を挙げるだけの選手もいる。桂に試合前の“儀式”について聞くと、こう答えが返ってきた。

「ワールドツアーでもやっていることです。いい試合は選手だけなく、審判も一緒につくっていくものだと思っています。“いい試合にしましょう”という思いを込めているんです」

 

 個人としての今後も聞いた。

「ここから先はまだわからないです。ただ言えることはチャレンジを続けたい。どんなシーンでも自分にとって手が届かさなそうな目標に向かっていくのが楽しい。そういうチャレンジを続けたいと思っています。私が挑戦を楽しんでいる姿を見て、後に続く人が出てくれたらうれしいし、仲間が増えていけばいい」

 目を輝かせながら彼女は前を見据えた。

 

(写真:インサイドで無類の強さを発揮したアタナソフはMVPにも選ばれた)

 男子は大会2連覇中のUTSUNOMIYA BREXが今季好調のALPHAS(埼玉)を下した。ALPHASはJAPAN TOUR EXTREME カテゴリーの2023シーズン王者。UTSUNOMIYA BREXの大黒柱・齊藤洋介は言う。
「ALPHASがものすごい強いことは承知していた。あまり言いたくないが、僕はALPHASを倒すことだけ考えていた」

 

 UTSUNOMIYA BREXはGUJO BEEFMAN (岐阜)を21-11 、HACHINOHE DIME.EXE(青森)を21-16で破ってDay2を迎えた。準決勝の信州松本ダイナブラックス (長野) 戦は18-17で逃げ切り、3大会連続のファイナル進出を果たした。試合の立ち上がりは、ALPHASが小澤崚の2Pシュートなどで先行。最初の3分足らずでALPHASが8-2とリードした。

 

 残り6分半を切ったところで、齊藤の2Pシュートで追撃開始。一度は引き離されたが、斉藤諒馬の2Pシュートが決まり、6ー10と再び4点差に迫る。徹底して外からリングを狙うと、今度は中へ。2m5cmの長身アタナソフがペイントエリアで猛威を振るう。ゴール下での得点、ポストに入ってのアシストで貢献した。

 

(写真:決勝では6本の2Pシュートを成功させたUTSUNOMIYA BREX)

 残り3分半、ここでUTSUNOMIYA BREXが仲西佑起の2Pシュートで12-12に追いつく。さらにアタナソフ、斉藤選手、齊藤による長距離砲が炸裂。試合をひっくり返し、20-16で王手をかけると、最後は仲西が決め、21-17で試合を締めくくった。逆転優勝したUTSUNOMIYA BREXはワールドツアーマスターズのアジア・オセアニア大陸予選大会の出場権を獲得した。齊藤は「宇都宮を背負って世界と戦いたい」と意気込んだ。

 

 特設された約500の観客席はほぼ満員。立ち見客もいた。「世界と比べても日本は盛り上がっていると感じています。こんなにたくさん大会があったり、応援に来ている方がいるのは世界でも有数のマーケット。国内規模の大会でこれだけ集まり、固定のファンがいるのは世界でも珍しいと思います」と桂。3X3はストリートバスケを起源に、FIBA(国際バスケットボール連盟)が2007年に正式競技化したばかり。試合時間は10分と短く、攻守交代は目まぐるしい。日本では各地の複合商業施設で開催し、物珍しさに足を止める人も少なくない。近隣店舗の協力で、飲食や物販を充実させれば、将来的にはビジネス化も見えてくるのではないか。

 

(文・写真/杉浦泰介)