なでしこ、2大会連続の五輪出場決定 ~女子サッカー・パリ五輪アジア最終予選~

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 サッカー・パリ五輪アジア最終予選、日本女子代表(なでしこジャパン、FIFAランキング8位)対北朝鮮女子代表の第2節(初戦は0対0)が28日、東京・国立競技場で行なわれ、2対1でなでしこジャパンが勝利した。この結果、なでしこジャパンが今夏のパリ五輪への出場が決定した。

 

 山下、ライン上でのビッグセーブ(国立)

なでしこジャパン 2-1 北朝鮮女子代表

【得点】

[な] 高橋はな(26分)、藤野あおば(31分)

[北] キム・ヒヨン(76分)

 

 4日前、中立地サウジアラビア・ジッダで行なわれた初戦は0対0。5-4-1を敷く北朝鮮になでしこジャパンが採用した4-3-3がほとんど機能しなかった。

 

 ホームでの2戦目、池田太監督はDF熊谷紗希(ローマ・フェミニーレ)を最終ラインの中央に落とした3-4-3を選択した。昨年のオーストラリア・ニュージーランドW杯でも採用した慣れ親しんだシステムだ。

 

 右のシャドーに入ったMF藤野あおばと、FW田中美南(INAC神戸レオネッサ)、DF清水梨紗(ウェストハム・ウィメン)らの連係が見事だった。相手の左サイドバックと左センターバックをわざとボールに食いつかせてから裏を取る狙いが見えた。前節からのシステム変更が「5バック攻略」の背中を後押ししたようにも映った。

 

 先制したのは、なでしこジャパンだった。26分、左サイドからのFKを北川ひかる(INAC神戸レオネッサ)が左足でクロスを入れる。これは相手DFに跳ね返されたものの、FW上野真実(サンフレッチェ広島レジーナ)がヘディングで折り返す。ニアで田中が頭で合わせたがシュートはバーに嫌われた。このこぼれをファーサイドに詰めていたDF高橋はな(三菱重工浦和レッズレディース)が押し込んだ。

 

 前半終了間際、なでしこにとってこの日最大のピンチが訪れた。右サイドからのグラウンダーをMFチェ・クンオクに右足の技ありヒールでゴールファーサイド(左)を狙われた。クロスに対してニアのスペースをケアしていたGK山下杏也加(INAC神戸レオネッサ)が飛びつきながら懸命に右腕を伸ばす。ボールの3分の2はラインを割っていたが、3分の1はライン上に残っていたところで守護神が掻き出した。「ボールのスピード的に追いつける自信があった。誤審だけが怖かった」と山下。相手に流れを渡さないビッグセーブが飛び出し、なでしこが1点リードでハーフタイムに入った。

 

 後半31分、きれいな展開からなでしこが追加点を奪った。まさに先に述べたような見事な5バックの崩しだった。敵陣右サイドで相手の最終ラインと中盤の間のスペースに下がってボールを受けた藤野。マーカーの注意を引き付けつつフォローに入ったMF長野風花(リバプール・ィメン)にワンタッチで落とす。前を向いてボールを受けた日本の司令塔は右サイドの急所を深くえぐるようなスルーパスを通した。これに反応したDF清水梨紗(ウェストハム・ウィメン)が追いつき、相手DFの股を抜いて突破。ルックアップして、クロスをあげると、さきほどビルドアップにかかわった藤野がニアに走りこんでいた。本人いわく「ヘディングでのゴールは初めて」。めでたいプロキャリア初のヘディング弾はなでしこにとって貴重な追加点となった。

 

 この5分後、ビルドアップのもたつきからFWキム・ヒヨンにループ気味のシュートを決められ、リードは1点差に。ここでなでしこのイレブンは自主的に集まり、意思を統一。「1失点してやることがはっきりした」(藤野)。

 

 以降、なでしこジャパンは敵陣の深い位置でうまく時計の針を進め、タイムアップのホイッスルを聞いた。

 

 試合後、藤野はゴールシーンをこう振り返った。

「クロスには入っていきたいと思った。軌道的には(ゴール中央にいた清家)貴子さんを狙っているのかなと思ったが、自分で決めたかったので、そこは飛び込んで。GKが(ニアからファーへと)移動しているところもしっかり見えていたので、あとはあてるだけだった。パリへの出場権が決まったよかった」

 

 主将のDF熊谷はパリ五輪を見据え課題を口にした。

「自分たちの形、プレースタイルを確立していきたい。(Wでも採用していた)3-4-3は1つ、自分たちの形ですが相手によって4-1-4-1とか4-2-3-1だったり、自分たちがピッチの中で戦い方を変えることがもう少しできればいいな、と。五輪は短期決戦になるので、そこのレベルアップは絶対に必要。まだまだ世界で勝つには足りないが、ひとまず世界で戦うチャンスは得られたのでよかった」

 

 夏までにピッチ上で柔軟にシステムを変えられるようになっているか。約5カ月間の猶予をどう有効活用できるかにかかっている。

 

(文/大木雄貴)

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