「NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24」ディビジョン1第8節が1日に行われ、横浜キヤノンイーグルス(横浜E)が三重ホンダヒート(三重H)を50-21で下した。ペナルティートライを含む8トライを挙げた横浜Eは3トライ差以上(三重Hは3)ボーナスポイント1を加え、勝ち点5を獲得。通算成績5勝3敗、勝ち点23とした。敗れた三重Hは8戦全敗で勝ち点はゼロでシーズン折り返した。

 

 横浜Eは前節の東芝ブレイブルーパス東京戦であわや完封負けという7対27で敗れた。試合後の記者会見では、沢木敬介監督は厳しい言葉を並べた。中5日のショートウィークとなった第8節に向けては週半ばに「バチバチにタックルとコンタクトをやった」(沢木監督)と原点に立ち返り、気を引き締めた。今季から東京サントリーサンゴリアスから移籍してきたPR祝原涼介が「スイッチが入って試合に臨めた。敬介さんなりの雰囲気づくり」と言えば、FL嶋田直人は「先週、コリジョンのところで前に出ることができずイーグルスのラグビーができなかった。そこ(タックル、コンタクト)を突き詰めたことで、いい感触でゲームに入ることができた」と口にした。

 

 そして迎えた三重H戦。会場は6日前と同じ東京・秩父宮ラグビー場だ。今季リーグワン初の金曜ナイターは、指揮官からバチッとスイッチを入れられた選手たちは開始早々から仕掛ける。2分、LOマックス・ダグラスが力強い突破でインゴール中央にトライ。SO田村優のコンバージョンキックが決まり、7点を先制した。

 

 7分にはラインアウトからのモールでインゴールの侵入を許したが、嶋田らが身を挺してグラウンディングは防いだ。「いい我慢ができた」と嶋田。19分には敵陣深く攻め込み、パスが一瞬乱れ、こぼれたボールをダグラスが拾い、インゴール右中間に滑り込んだ。田村が再びコンバージョンキックを成功し、14点をリードする。

 

 27分には田村の左へのキックパスが大外で待つ嶋田の胸にすっぽり収まった。「前にスペースがあったので優さんに声をかけたら蹴ってくれると信じていた」。要求通りの正確なパスを受け取った嶋田は1対1で相手のタックルを受けながらもインゴール左に飛び込んだ。前半終了間際にはWTB竹澤正祥のトライ、田村のゴールで26-0で試合を折り返した。

 

 後半、モールからのトライを2つ、スクラムからのトライ(ペナルティートライ)を1つとセットプレーを中心に計4つのトライを挙げたが、三重Hにも3トライ与えた。50-21でボーナスポイントを得ての勝利だったが、沢木敬介監督は「この内容で喜んでいる選手が多いとこのチームの成長が止まってしまう。ハングリーな選手を増やさないといけない」と厳しい表情だった。

 

「先週、ああいう不甲斐ない試合をして、自分たちでなくした自信を取り戻そうと臨んだ試合でした。前半はそういう気持ちが出ていたと思う」と評価しつつも、後半の戦いぶりには苦言を呈した。

「ウチに足りないところはきつくなってきた時にソフトになること。簡単なトライを取られるし、キックチェイスをサボるヤツもいればタックルをして起きるのが遅いヤツもいる。本当に強いチームはそういう選手が絶対的に少ない」

 

 キャプテンのCTB梶村祐介も「チームとしては今日の結果に全く満足していません」と同意見だ。

「今日は“自分たちのラグビーを取り戻そう”という話をして、ゲームに臨みました。前半は、完璧ではありませんが、自分たちが目指すラグビーを少なからずできたかなと感じました。でも、このチームに足りないのはそのパフォーマンスを80分間、一貫性を持って出し続けられないこと。後半、キツくなってきた時、タフな選択をし続けられる選手が増えてくるように、自分としてはパフォーマンスでリードしていきたいと思います」

 

 昨季はチーム最高の3位に入った横浜E。今季のチームスローガンにも掲げる「NEXT」を実現するためには進化が求められる。「現状、上位チームとは力の差がある。何かのスイッチが入るとチームは劇的にパンと変わる瞬間がある。それを掴んで戦い続けなければいけない」と指揮官。目先の勝利に一喜一憂しない。見据える先がある。

 

(文・写真/杉浦泰介)