安倍前首相の突然の辞任に続いて、民主党の小沢代表が辞意を表明した。「民主党はまだ力不足。次の選挙で勝つのは難しい」と大批判したが、小沢氏はわずか2日で翻意した。
 与野党激突と言われる中、党首会談の場では自民・民主の「大連立」というウルトラCが協議されていた。
 厳しい権力闘争を繰り広げる政治家たちの言動から、リーダーたる人間の資質について考えた。(最終回)
二宮: 「大きな政府」vs.「小さな政府」とか、「官から民」vs.「官治政治」とか、対立軸をはっきりさせて勝負したほうが国民にはわかりやすい。僕は経済の専門家ではありませんが、中川秀直さん(元自民党幹事長)や竹中平蔵さん(元総務大臣)らの成長路線、財政規律重視の主張は、まだわかるんです。

 しかし、与謝野馨さん(前自民党幹事長)や谷垣政調会長らの主張は“大きな政府”に戻るという意味に聞こえてしまう。これでは未来に大きなツケを残しますよ。同じ自民党なのに、これだけ意見が違っていいのかと思います(笑)。

伊藤: それとまるっきり同じ構造が民主党にもあるんです。今後は政界再編が重要なテーマになると思います。
 過去の「角福戦争」の再来のように言われて、田中角栄的な政治の小沢氏と、福田首相のぶつかり合いに注目が集まっています。でも、本当はその先にあるものが重要なんです。つまり、私たちのような中堅や若手が「修羅場をくぐれるのか」「勝負できるのか」ということが問われている。

木村: 福田首相は対立軸を出すというよりは、対立軸を消す方向で対処していますね。今後はなんでも「丸飲み」でいくんですか。

伊藤: ボクシングのクリンチ作戦ね(笑)。

木村: 「クリンチ」を繰り返す福田首相の指導の下で、日本はいい方向に進むんでしょうか。

伊藤: 座談会の冒頭に、本宮さんが今の日本の政治状況を言い当てています。社会が非常に多元的になり、価値観が多様化した。その中で、2大政党制が本当に機能するのかということが問われています。こういう多元的な社会で、多様な価値観を政治の世界にうまく反映させるためには、もう少し比例代表制の比例の部分に重点を置くべきだと思うんです。
 
 しかしその一方で、日本が直面している問題は、多様性の中で解決するというよりも、まだ壊さなきゃいけない部分があるし、戦わなければいけない部分もある。例えば格差問題がそうです。アジアの中で、国際競争で負けたことが、格差の原因です。日本がアメリカのような競争社会になったから、格差が生まれたわけじゃない。これは国内問題ではないということです。

 確かに「地方を救う」「弱者を守る」ことは正しい。しかし、国力が落ちていく中で、果たして本当にそうできるのか。だから「できること」「できないこと」をはっきりと国民に言える政党や政治家、そしてリーダーが求められているんじゃないでしょうか。

木村: 結局、銀次郎は強いから優しくなれるんですよね(笑)。強くない人は絶対に優しくなれないもの(笑)。

本宮: それは本当にそうだと思う。いつの時代もそのままだよ。だから、さっき独裁者と言ったのも、根底には絶対的な正しさと優しさを持った独裁者ということですね。

木村: 福田さんも小沢さんも、リーダーを目指す人たちには、まずは『硬派銀次郎』を読んで勉強してもらいましょう(笑)。

二宮: そう! それが今日の座談会の結論ですね。

木村: 皆さんお忙しい中、今日はどうもありがとうございました。

(終わり)

<この原稿は「Financial Japan」2008年1月号に掲載されたものを元に構成しています>
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