19日、いよいよBCリーグ2年目が開幕しました。今季より新加入した群馬ダイヤモンドペガサスにとって記念すべき開幕ゲームは白星で飾りたかったのですが、惜しくも信濃グランセローズに5−6と逆転負けを喫してしまいました。翌日の試合は1−1の引き分けに終わりました。2試合ともヒット数は群馬が勝っていましたし、ピッチャーもいい内容のピッチングをしていただけに非常に残念です。
 開幕投手を務めたのは地元出身の34歳ベテラン、富岡久貴(高崎工業高−東京ガス−西武−広島−西武−横浜−西武−楽天)です。13年間NPBでプレーしてきた経験をもち、若手の多いチーム内で一番年上の彼は、兄貴的存在です。性格的にも面倒見がよく、自分から他の選手たちに声をかけてアドバイスしてくれています。今では、若手の方から富岡に聞きに行くほど、信頼されています。

 開幕戦では7回まで信濃打線を無安打に抑えるパーフェクトピッチングと、元NPB投手としての貫禄を見せてくれました。終盤にエラーで1点を失い、ズルズルと悪い流れを断ち切ることができずに逆転を許しましたが、8回を無四球で終わらせたことは評価できると思っています。

 20日の信濃戦第2戦で登板した雁部竜太(埼玉・狭山ヶ丘高−青森大−JR水戸−ダイキン茨城)は、187センチとチーム一の長身ながら変化球で打たせて取るタイプのピッチャーです。今回は打線の援護がなく、勝ち星がつきませんでしたが、5回を5安打3奪三振1失点。四球はわずか一つのみと、まずまずのピッチングを見せてくれました。

 今のところ、富岡と雁部を先発の柱として考えていますが、5月以降には3連戦がありますので、小暮尚史(埼玉・児玉高)やキム・ジョンファン(韓国)は先発兼中継ぎで起用するつもりです。

 小暮は将来的にはNPBへの道も夢ではないほどの高い身体能力を持っているピッチャーです。持ち球はストレート、カープ、スライダーで、一つ一つのボールにはキレがあります。しかし、右打者の胸元を突くようなボールを投げられなくてはプロでは通用しません。そこで、小暮にはキャンプでシュートを教えました。配球のバリエーションも増えましたので、今後の活躍が非常に楽しみです。

 一方、アンダースローのキムは強気のピッチングが持ち味です。投球リズムがよく、野手にとっては守りやすいので、安定した試合運びができるピッチャーです。ストレート、緩急のついた2種類のカーブ、スライダー、シンカーを投げますが、なかでもストレートには自信を持っています。渡辺俊介(千葉ロッテ)のように手元でホップしてくるので、バッターは打ちづらいと感じているはずです。

 中継ぎ候補としては通事慧太(沖縄・豊見城高−国際武道大−サウザンリーフ市原)、大木拓朗(群馬・利根商業高)、寺田創(神奈川・東海大相模高−ロサンゼルス・ドジャース<ルーキーリーグ>)、鈴木康崇(高崎経済大付高−大東大文化大−オール高崎野球クラブ)、飯塚知之(群馬・沼田高−明治大−エスエスケイ)の5人。そして左のワンポイントには齋藤裕貴(大商大高)を予定しています。

 なかでも通事は、ランナーを背負ったピンチにも動じない精神的強さがあり、中継ぎの柱として考えています。テンポよく、どんどん攻めていくことのできるピッチャーなので、毎回のように異なる場面で投げなければならない難しい中継ぎ役も立派に果たしてくれるのではないかと期待しています。

 試合を締めくくる抑えには越川昌和(千葉・多古高−上武大−サウザンリーフ市原)です。越川は140キロ超のストレートとフォークのように落ちるチェンジアップで三振が取れます。ほかにスライダー、カーブと球種も豊富で何より抑えに不可欠なコントロールがありますので、安心して後ろを任せることができます。

 さて、2試合を終えてまだ未勝利の群馬ですが、シーズンはまだ始まったばかりです。元NPBの富岡、山田憲(千葉・東海大浦安高−日本ハム、サウザンリーフ市原)や、BCリーグ2年目の井野口祐介(群馬・桐生商業高−平成国際大−富山サンダーバーズ)、小西翔(新潟・高田高−慶応大−新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ)の4人を除けば、休みなく半年以上も続くリーグ戦を戦うのは初めてのこと。開幕は緊張からか動きが鈍く、いくつか凡ミスも出ましたが、決して内容は悪くありませんでした。今後は勝てる試合を落とさないよう、一戦一戦を大事に戦っていきたいと思っています。


河野博文(こうの・ひろふみ)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサス投手コーチ
1962年4月28日、高知県出身。明徳高(現・明徳義塾高)、駒澤大を経て1985年、ドラフト1位で日本ハムに入団。3年目の88年には防御率2.38をマークし最優秀防御率のタイトルを獲得した。96年、巨人にFA移籍し、リリーフに転向。6勝1敗3セーブの成績で最優秀中継ぎ投手賞を獲得し、リーグ優勝に大きく貢献した。2000年、千葉ロッテに移籍し、同年オフに現役を引退した。実働16年間の通算成績は462試合に登板し54勝72敗15セーブ、防御率3.93。今季より群馬ダイヤモンドペガサスの投手コーチに就任した。


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