顔が老けて見えるので「ジジィ」、登録名はそれをもじって「G・G・佐藤」。
 さる4月8日、本拠地の西武ドームで大仕事をやってのけた。対千葉ロッテ戦、9回裏2死一塁、2対3と1点ビハインドの場面で打席に入ったG・Gは、ライトスタンドに自身初のサヨナラ2ランを叩き込んだのだ。
「マジうれしいです。言っていいですか? キモティー!」
 ちなみに「キモティー」は「気持ちいい」。今ではすっかり西武ドームの人気者だ。

 今季の埼玉西武ライオンズは昨季27本塁打のアレックス・カブレラ(現オリックス)、昨季18本塁打の和田一浩(現中日)が抜けたことで打線の弱体化が指摘された。
 しかし4月16日現在、13勝9敗1分でパ・リーグの首位。チーム本塁打は25本で2位オリックスの17本を大きく引き離している。

 新生レオ打線を引っ張るのが、クリーンアップの一角を占めるG・Gだ。打率3割1分、4本塁打、16打点(4月16日現在)。渡辺久信監督も、
「G・Gは追い込まれてからしぶといし、頼りになる」
と絶大な信頼を寄せる。

 このG・G、昨オフは契約更改交渉が難航し、キャンプは自費でのスタートとなった。「未更改選手を試合に出すことはできない」(前田康介球団本部長)との理由で、紅白戦は最初の3試合を締め出された。
 やっと契約がまとまったのはキャンプを打ち上げた2月22日。
「球団も歩み寄ってくれたのでサインしました。期待に応えるためのモチベーションも上がった」
とG・Gは前向きに語ったが、当初希望していた4500万円には800万円届かなかった。

 G・Gは年俸調停を申請しようとしたが、パ・リーグの小池唯夫会長が「話し合う余地がある。参稼報酬は両者が話し合って決めるのが大原則だ」と言って申請を受理しなかったため、調停は見送られた。

 昨季のG・Gはキャリア・ハイの成績を残した。開幕から2試合連続ホームランを放つと一気に波に乗り、136試合で打率2割8分、25本塁打、69打点と大ブレイクした。長距離砲の資質が開花したシーズンだった。二塁打が多いのもG・Gの特徴。昨季は稲葉篤紀(北海道日本ハム)に次ぐ、パ・リーグ2位タイの31二塁打を放った。今季も現時点でリーグトップの10二塁打を放っている。アメリカ風にいえば“ドクター・ダブル”である。
 しかし、サクラにたとえていえば、まだ5分咲きか6分咲き。ホームランを30本台に乗せないことには、本当の意味での長距離砲とは言えない。

 大学(法大)卒業後、フィリーズの1Aでプレーしていたこともあり、パワフルな野球への憧れは誰よりも強い。プロレスラーのような肉体はボディビルでつくり上げた。経験を積めば、そう遠くない将来、“ミスター・レオ”と呼ばれる存在になるかもしれない。

<この原稿は2008年5月4・11日合併号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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