19歳3カ月での満塁弾はセ・リーグ最年少記録だそうだ。
 巨人の新星・坂本勇人(青森・光星学院)が6日の阪神戦で阿部健太からレフトスタンドに満塁ホームランを叩き込んだ。打ったボールはカウント2−1からの内角低目の直球だった。

 実はこの前日も坂本は左腕の岩田稔から内角低目の直球を左中間に弾き返している。決して甘いボールではなかった。
 もうそろそろ他球団のバッテリーは気付くべきだろう。坂本は内角低目、すなわち“ヒザ元”あたりがツボなのだと。
 まるでゴルフのドライバーショットのように、下からきれいにヘッドが振り抜ける。近年、インローのボールを、これだけ見事にすくい上げられるバッターは見たことがない。

 巨人終身名誉監督の長嶋茂雄さんが報知新聞(4月7日付)にこんなコメントを寄せていた。
 「たとえば、ストレートを待っていて変化球が来ればだれでも体勢が崩れる。問題はそこからで、坂本は左手一本でバットを操作してどうにかシンに当てようとする」
 古い話で恐縮だが、現打撃コーチの篠塚和典もヒザ元のボールを捌くのがうまかった。これはきっと天性のものなのだろう。

 坂本が“ただ者”ではないと分かった今、他球団の攻め方はこれまで以上に厳しさを増すだろう。
 同じヒザ元を突くにしても、デッドボールぎりぎり、すなわち体に近いボールで立ち位置を崩しにかかるはずだ。
 あるいは“ツボ”から、さらにボールひとつ分落とし、空振りを誘うピッチャーも出てくるだろう。フォークボールなどが有効かもしれない。

 現在は7、8番を任されているが、2〜3年後には3番を打てる逸材である。パワーはともかく、バッティングセンスの面では、北海道日本ハムの怪物ルーキー中田翔よりも上だろう。
 坂本が順調に育てば巨人は10年間、ショートに苦労しないですむ。大きく、たくましく育ててもらいたいものだ。

<この原稿は2008年4月28日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

◎バックナンバーはこちらから