「NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24」ディビジョン1第9節が9日に行われ、埼玉パナソニックワイルドナイツが東芝ブレイブルーパス東京を36-24で破った。ワイルドナイツは9連勝、勝ち点42で首位をキープした。今季初黒星を喫したブレイブルーパスは勝ち点37で2位のまま。ワイルドナイツはコベルコ神戸スティーラーズ、ブレイブルーパスは三菱重工相模原ダイナボアーズと次節対戦する。

 

 前身のトップリーグでは互いに5度の優勝を誇るワイルドナイツとブレイブルーパス。今季はここまで開幕8連勝を負けなしで前半戦を終えた。ワイルドナイツはPR稲垣啓太、FL福井翔大ら、ブレイブルーパスはNo.8リーチ マイケル、WTBジョネ・ナイカブラらを欠くこととなったが、好カードということもあり熊谷ラグビー場には1万3839人が詰め掛けた。

 

 赤城おろしが吹き荒れる熊谷。開始早々、試合は動いた。ワイルドナイツのSO松田力也が敵陣を蹴り込んだボールをSOリッチー・モウンガがキャッチ。そこからアタックを仕掛けた。オールブラックスの司令塔を務めた男は、ワイルドナイツの守備ラインが見せた一瞬のスキを見逃さず大きく抜け出した。最後は松田をステップでかわして、インゴール中央左に滑り込んだ。ノーホイッスルトライ。自らコンバージョンキックを決め、7点のリードを奪った。

 

 風上のワイルドナイツは相手のミスに乗じて敵陣に攻め込み、最後はFLラクラン・ボーシェーが仕留めた。松田がコンバージョンキックを決めて同点に追いつく。その後もブレイブルーパスに圧をかけ、4本のPGを松田が射抜いた。28分と31分は40m超の飛距離もモノともしなかった。19-10でワイルドナイツがリードで試合を折り返した。

 

 後半5分、SH小山大輝がHO坂手淳史とのパス交換で、右サイドを抜け出す。2人にタックルを受けながら、ボールを上から繋いだ。WTB長田智希がインゴール右に飛び込み、24-10とリードをさらに広げた。20分にはCTBセタ・タマニバルがノーボールタックルをノーバインドで行い、イエローカード。一気にワイルドナイツに流れが傾くかと思われた。

 

 ところが1人少なくなったことで、開き直ったのかブレイブルーパスはシンプルにHO原田衛らFWを縦に当てるアタックを仕掛ける。ワイルドナイツの堅いディフェンスを徐々に後退させ、26分にLOワーナー・ディアンズが抜け出してトライ。30分にはPRタウファ・ラトゥがインゴール左中間に飛び込んだ。いずれもモウンガがコンバージョンを決めて24-29と5点差に詰め寄った。

 

 逆転を狙うブレイブルーパスの希望を断ったのは、途中出場のHO堀江翔太だった。35分、自陣でダブルタックルを受けたブレイブルーパスCTB眞野泰地に素早く絡み、ジャッカルに成功した。「ジャッカルしてやろうと常に狙っているわけではなく、あそこに僕が立っていたから。僕が立っていなかったら違う選手が同じ動きをしていたと思う」と堀江。ペナルティーで陣地を挽回すると、敵陣でプレーを継続。最後は途中出場のLOマーク・アボットがトライを挙げ、勝負を決めた。

 

 この日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)の小山は、ワイルドナイツの負けない強さの根源を明かす。
「“負けてはいけない”というカルチャーが、このチームには根付いている。ディフェンスから攻撃など、(やるべきことを)誰かが口に出さなくてもちゃんとできている」

 対するブレイブルーパス側の視点はこうだ。
「要所要所で決定力がある。勝つ術を心得ているチーム」(モウンガ)
「素晴らしいチームで付け入る隙がない。今日のようにこちらがミスをしてしまうと、そこをつけ込んでくる」(トッド・ブラックアダーHC)

 

 これでプレーオフ進出。だがゴールはそこではない。昨季は15勝1敗でプレーオフ進出。最後のファイナルで敗れてシーズンを終えた。2季連続決勝進出。それで良しとはしない。松田は言う。
「リーグ戦で勝っても、最後プレーオフで負ければ意味がない。昨季、それを経験しているからこそ、今日は勝って喜びますが、その後はしっかりと振り返る。これからもタフな試合が続く。前を見てやるしかない。昨季の負けを生かすためにも一戦一戦、準備を大事にし、パフォーマンスにフォーカスしたい」

 

 堅実なラグビースタイルだけではない。"もう負けない”。そんな堅い意思が垣間見えた3・9だった。

 

(文・写真/杉浦泰介)