開幕4試合を終わっての成績は1勝3敗。少なくとも2勝2敗の5割を計算していただけに、ちょっと残念です。特に新加入の選手たちが、緊張で持っている力の半分も出せませんでした。敵地(福岡)での開幕、慣れないナイター、といろいろなマイナス要素も重なってしまったのでしょう。普段では考えられないようなミスが続出してしまいました。

 たとえば開幕2戦目(対福岡)。2点を追う2回、2死2、3塁のチャンスでルーキーの流大輔(祐誠高−福岡オーシャンズ9)の打球はセンターの頭上を越えました。2者が生還して、まずは同点。さらに流が得点圏へ進んで、一気に逆転のチャンスをつかめるはずでした。

 ところが――。流が何を勘違いしたのか、塁間で立ち止まってしまったのです。結局、流はタッチアウト。同点止まりで試合の流れは福岡に行ってしまいました。浮き足立っている選手たちを象徴するようなボーンヘッドでした。

 1週間後のホーム開幕戦でようやく初勝利をあげ、連勝を狙った翌日の試合、僕はルーキーの山中智貴(伊野商高−ツネイシホールディングス)を先発に送りました。ところが山中は不安定な立ち上がり。いきなり先頭打者に四球を与えると、あっさり2点を奪われてしまいました。100%勝負に徹するのであれば、交代を告げてもいい状況です。

 でも、僕はあえて続投を決断しました。彼を交代させることは簡単です。しかし、まだ彼は19歳。今後を考えれば、何より経験が必要です。結局、山中は2回、3回にも1点ずつを失いましたが、4回途中まで交代を我慢しました。

 山中は線が細いものの、スライダーはいいものを持っています。体力をつけ、まっすぐの球速が伸びれば、将来的に楽しみなピッチャーになるでしょう。特に地元出身選手ということもあり、多くのファンに応援をしていただいています。ぜひ一本立ちをさせたい投手のひとりです。

 特に高知は現時点で投手がたった7名しかいません。そのうち、吉川岳(登美丘高-桃山学院大)が肩、ひじの違和感を訴えて、戦線を離脱中。ひとりひとりの投手が役割を果たさないことには、戦えない状況になっています。さしあたりゴールデンウィーク期間中の連戦が大きなヤマです。山中には少なくとも5、6回を3点で抑え、できれば7回まで投げることを目標にマウンドへ上がってほしいものです。

 ボーンヘッドをしてしまった流にしても、センスはあります。開幕カードは9番で起用しましたが、高知での2試合は、2番に打順を上げました。今後はトップバッターで使う構想も持っています。

 彼のよさはなんといっても足が使えること。単に足が速いだけではなく、走塁のテクニックを持っています。盗塁のサインをこちらから出すと、すぐに走れる選手です。バットコントロールもうまく、出塁率も悪くありません。

 まだ非力なため、今後はしっかりプロ仕様の体をつくることが当面の目標です。NPBでいえば巨人の小坂誠タイプ。170センチ、65キロと小柄ですが、力をつければスカウトの目に留まる存在になることでしょう。

 チームの勝利と個々人の育成。この両方が求められているのがアイランドリーグだと僕は考えます。育成のため、特に前期は少々の失敗には目をつぶって、選手を起用するつもりです。もちろん、勝利を目指すのは大前提ですが、ファンのみなさんも、あたたかい目で見守っていただければうれしいです。

 とはいえ、同じ失敗を何度も繰り返すような選手はプロではありません。そういった選手は次のチャンスがなくなるだけです。これまで10個失敗していたことを、次は5つにし、その次は3つにする。そうやってマイナス部分を1つ1つ確実にプラスに転じることが大切です。

「失敗は反省してもひきずるな」。選手たちにはたとえミスをしても、前を向いてプレーしてほしいものです。そして何かを掴んで立ち上がってほしいと思っています。4、5月に我慢した成果が、夏場以降に出てくることを期待しています。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸(現長崎監督)と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は千葉ロッテの内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。



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