ゴールデンウィーク期間中は5連戦が2回続く日程でした。主砲の伊奈龍哉やキャプテンの大二郎など、体調不良やケガ人も多く、結果は3勝6敗1分。選手のコマ不足が響き、負けが込んでしまいました。

 投手陣でも10人の登録メンバーのうち、3年目の竹原俊介が脇腹を痛め、開幕前に離脱しました。疲労骨折が判明し、少し時間がかかりそうです。昨年も先発、中継ぎとフル回転してくれただけに、彼のケガは痛いですね。他にも新人の松本英嗣(明石北高−神戸調理製菓専門−全播磨硬式野球団) 、赤城卓(法政二高−法政大−WIEN BASEBALL CLUB)が故障中で、現状は7投手で試合に臨まなくてはいけません。

 その中で期待しているルーキーは先発を任せている佐藤学(埼玉栄−所沢グリーンベースボールクラブ)です。彼は自主トレできちんと体をつくっており、万全の状態でキャンプに臨めました。4年目の渡邊隆洋とともに、一番投げ込みができた投手ではないでしょうか。

 佐藤は、これといって目を見張るようなボールはありません。ストレートとスライダー、スローカーブのコンビネーションで打者を打ち取るタイプです。ただ、制球力があるため、大崩れしない点が長所になっています。

 課題は完投できる体力をつけること。球威が不足しているため、疲れが出てボールが高めに浮くと痛打を浴びてしまいます。まだ経験が浅いこともあり、現時点では5回がヤマです。下半身をもっと鍛えることで、単に体力をつけるだけでなく、ボールにキレを出すことが求められます。

 2年目以降の投手では、4月27日の福岡戦で安里渉が好投しました。彼の持ち味はコントロールのよさ。この春には千葉ロッテの打撃投手のテストを受けに石垣島へ行きました。そこで、ロッテの一軍クラスのピッチャーを間近で見たことも刺激になったのでしょう。投球のコツをつかんだようです。

 彼は試合になるとバックスイングに力が入り、制球を乱す悪い癖がありました。ところが、今シーズンはだいぶ力を抜いて、投げられるようになってきています。そのため、チェンジアップやカーブといった変化球がいい具合に決まり、ストレートを効果的に使えているのです。練習熱心な男で年々、球威も増していますから、より緩急をつけたピッチングで相手を牛耳れるようになりました。以前は完全に打たせて取るタイプでしたが、最近は三振の数も増えてきています。

 安里がこの調子で投げてくれれば、渡邊、片山正弘に続く3番手の先発投手としてローテーションに入ってくるでしょう。先発がある程度、投げてくれる計算が立てば、少ない駒数で1試合を乗り切ることができます。苦しい台所も少しはラクになるはずです。

 攻撃陣は得点力が相変わらず低いものの、昨年より機動力が使えるようになってきました。チーム盗塁は福岡、香川に次いでリーグ3位の成績です。高知からやってきた森山一人コーチの指導もあり、エンドランなどの作戦も仕掛けやすくなりました。守備も自主トレ、キャンプを経て基礎練習を徹底的に繰り返した結果、昨シーズンまでのような凡ミスは減りました。

 以前も書きましたが、このリーグからNPBを目指そうと思うなら、自分の限界まで挑戦しなくてはいけません。故障を恐れて、力を出し惜しみをしているうちは結果は出ません。スカウトの目にも留まらないでしょう。昨年より、チーム力は向上していますが、もう一段階、個々人の意識を高めること。これが結果的に徳島の巻き返しにつながるのだと思っています。


白石静生(しらいし・しずお)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
 1944年5月22日、徳島県出身。鳴門高から四国鉄道管理局(現JR四国)を経て、66年、ドラフト2位で広島に入団。左の本格派投手として69年に11勝、70年には13勝をマークした。当時、外木場義郎、安仁屋宗八、大石弥太郎とともに先発の4本柱を形成していた。75年に阪急に移籍。77年、78年の日本シリーズで1勝ずつを挙げている。81年限りで引退。16年間の通算成績は394試合、93勝111敗、防御率3.81。引退後は徳島に戻り、全国野球振興会(日本プロ野球OBクラブ)の徳島県代表幹事や徳島中央シニアの監督を務め、野球の底辺拡大に力を注いでいた。06年10月より徳島インディゴソックスの監督に就任。



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