大相撲の決まり手に、新たに「骨抜き」なる技が加わろうとしている。
 時津風部屋の力士死亡事件を受けて昨年10月に発足した「再発防止検討委員会」は14日、全53部屋の視察を終えた。日本相撲協会は同委員会の名称のみを変更して、そのまま存続させる方針のようだが、おいおい、大事なことを忘れてもらっては困る。文部科学省の松浪健四郎副大臣が協会に要求した「外部からの理事登用」はいったい、どうなったのか。

 北の湖理事長は「検討していかなければならない」と答えただけで、現在に至るも、実質的には「ゼロ回答」である。

 相撲界の密室談合的体質は親方衆だけで理事会を構成していることに起因する。財団法人の定款である「寄付行為」の試行細則には「理事及び監事の選挙に立候補できるものは、年寄である評議員に限るものとする」とある。

 相撲界が本当に変わろうとしているのなら、まずはこの部分に手をつけるはずだ。それが先述したように「ゼロ回答」なのは要するに、「ヨソの人間は入れたくない」ということなのだろう。信用できるのは、“まわし組”だけとの本音が透けて見える。

 それにしても協会が「外部からの理事登用」をそこまで拒絶する理由がわからない。「外部から有識者が加われば、その知恵を借りて、さらに大相撲は発展できるだろう」。なぜ、そう前向きに考えないのだろう。うがった見方だが、外部からの登用で理事の席が減れば、苦労して購入した年寄名跡(親方株)の価値が損なわれる。理事になれば2000万円程度の年収が保障される。既得権益にメスが入ることに対する恐れが“鎖国主義”の背景にはあるのかもしれない。

 相手にされない文科省も随分、ナメられたものだ。通告が反故にされる危険性があると判断した時には行政指導に乗り出してもいいのではないか。それくらいやったところで、いまさら国民は「やりすぎだ」とは言わないはず。むしろ「骨抜き」に終わった時の反発のほうが強いだろう。相撲界が「骨抜き」なら、文科省は「極め出し」でいくべきだ。

<この原稿は08年4月16日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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