第113回 ヤンキース.vsレッドソックス 戦力徹底比較
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近年以上に実力伯仲の戦いが続くと目される今季は、いったいどちらの力が上なのか。今回は、投手力、攻撃力、守備力の三部に分けて、両チームの戦力を具体的に直接比較していきたい。
(写真:宿敵レッドソックスとの対戦で松井秀喜も確実にチームに貢献している)
・投手力
投手陣は、構成、長所、短所のすべてで非常に似通っている。
先発では両チームともに昨季19勝以上を挙げた若きエース(ジョシュ・ベケット、王健民)、実績のある2番手(松坂大輔、アンディ・ペティート)が2本柱。背後に黄昏期を迎えたベテラン(ティム・ウェイクフィールド、マイク・ムシーナ)が続き、鍵を握るのが2人のヤングガン(クレイ・バックホルツ&ジョン・レスター、フィル・ヒューズ&イアン・ケネディ)である点も同じ。さらに言えば、ブルペンにリーグを代表するクローザー(ジョナサン・パぺルボン、マリアーノ・リベラ)を抱えているところまで共通している。
新旧が上手く噛み合った好スタッフではあるが、どちらも2人のルーキーに重責を担わさなければならないという意味で、長いペナントレースを考えた時に不安も決して少なくない。
両軍の優劣を考えるなら、先発&クローザーの能力的にはほぼ互角で、決め手になるとすれば中継ぎ陣か。
岡島秀樹、マイク・ティムリン、ハビアー・ロペス、マニー・デルカーメンと粒ぞろいのレッドソックスに対し、ヤンキース側で頼りになるのはジョバ・チェンバレンただ1人。チェンバレンは好調時にはほとんど3人力の逸材だが、それでもチーム内の層の薄さから来る負担の大きさは懸念材料である。今後ヤンキースがトレードに動こうとも、シーズン中のブルペン投手の補強が難しいことはMLBの歴史がすでに証明している。
優位なのは?:レッドソックス
・攻撃力
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あえて優劣を付けるなら、アレックス・ロドリゲス、ジェイソン・ジアンビ、松井秀喜、ホーヘイ・ポサダ、ボビー・アブレイユら25本以上の本塁打が期待できる打者がずらりと揃っているという意味で、破壊力ではヤンキースが上。
(写真:ボビー・アブレイユらパワーと上手さを備えたスラッガーたちによる得点力がヤンキースの生命線)
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しかしそんな昨季王者にも、今季は頼みのデビッド・オルティースが絶不調な上に、マイク・ローウェルが故障、ジェイソン・バリテックには衰えが見えるなど、弱点は確実に存在する。
(写真:近年のレッドソックスには強者の風格が感じられるようになった)
全体のバランスではレッドソックスだが、共に不確定要素もまだ多いため、現時点ではこの部門はひとまず互角としておきたい。勝負強い松井がこのまま5番に座り、好調を保ったときには、ヤンキースが評価を逆転させる可能性も否定できない。
優位なのは?:互角
・守備力
両チーム間で最も差があるのはこの部分である。
ヤンキースではアレックス・ロドリゲス以外はほぼ全選手の守備力が平均以下。ホーヘイ・ポサダのキャッチングへの評価は未だに低く、デレック・ジーター、ジェイソン・ジアンビらの守備範囲の狭さはすでにMLBの誰もが知るところとなった。外野に目を移しても、守備力はやや過大評価されているメルキー・カブレラもセンターとしては物足りなく、松井、ジョニー・デーモンらは弱肩。総合的に見て、ヤンキースはディフェンスではメジャー最低レベルのチームと言える。
一方のレッドソックスは、逆に穴と言えるのはマニー・ラミレスくらい。そのラミレスも本拠地フェンウェイパークでは狭いレフトの守備をとても上手にこなす。それ以外には、ケビン・ユーキリス、マイク・ローウェル、ジェイソン・バリテック、ココ・クリスプら名手ぞろい。守備面ではレッドソックスにほとんどスキはなく、彼らが接戦に強い秘密はそこにもあるのだろう。
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(写真:レッドソックスの人気は全米に広がり、さらに広まりつつある)
優位なのは?:レッドソックス
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1975年生、東京都出身。大学卒業と同時に渡米し、フリーライターに。体当たりの取材と「優しくわかりやすい文章」がモットー。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシング等を題材に執筆活動中。
※杉浦大介オフィシャルサイト Nowhere, now here