「NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24」ディビジョン1第11節が22日に行われ、1位の埼玉パナソニックワイルドナイツが6位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイを55-22で破った。この結果によりワイルドナイツは開幕11連勝。スピアーズは通算成績で5勝6敗となった。

 

 昨季のプレーオフファイナリストでリーグワン王者経験のある両チーム。今季は対照的な歩みを辿っている。一昨季の王者ワイルドナイツはこの試合まで開幕10連勝。断トツトップを走っている。昨季のワイルドナイツの連覇を阻止し、初優勝を果たしたスピアーズは1勝3敗と出遅れて5勝5敗と波に乗り切れない。

 

 今季の両チームを象徴するように前半はワイルドナイツの一方的な展開となった。スピアーズFB島田悠平のPGで先制されたが、15分にCTBダミアン・デアレンデのトライで逆転。21分には第4節(1月6日)ぶりの復帰となったWTB竹山晃暉がインゴール左隅に飛び込んだ。

 

 21分には敵陣左ラインアウトモールからSH小山大輝が抜け出してトライ。39分にはSO松田力也がディフェンスラインの裏に絶妙なショートパントを送る。これをCTBディラン・ライリーがキャッチし、インゴール中央にボールを置いた。松田がコンバージョンキックを4本中3本成功し、26-3とリードして前半を終えた。

 

 後半開始早々にスコアしたのもワイルドナイツ。4分、FB山沢拓也がスピードを生かした突破でトライを挙げた。松田のコンバージョンも決まった。14分に松田のPGで加点。20分には、ライリーがこの日2トライ目を挙げるなど43-3と大量リードを奪った。

 

 スピアーズも意地を見せ、24分にSO岸岡智樹のキックパスを大外で受けたWTB山崎洋之がインゴール左隅に飛び込んだ。31分にはスクラムでペナルティーを誘い、獲得したラインアウトからモールで押し込む。HO江良颯がフィニッシュ。3試合連続トライを挙げた。

 

 終盤はワイルドナイツの山沢兄弟が観客を沸かせた。35分、FBからSOにポジションを移した兄・拓也が弟のFB京平へパス。兄が弟のトライをお膳立てすると、36分には京平のパスから拓也がトライ。前節の同時出場に続き、同一試合での兄弟トライを記録した。

 

 ワイルドナイツは終了間際にスピアーズに7点を返されたものの、33点トライ差の完勝。計8トライを挙げ、3トライ差以上(スピアーズ3)によるボーナスポイントを獲得し、プレーオフ進出へまた一歩近づいた。試合後、ロビー・ディーンズ監督は「パフォーマンス自体にとても満足しています。クボタスピアーズ船橋・東京ベイは粘り強いチームで、彼らとはいつも挑戦的な戦いになります。そうした相手から55点を取れたことはとてもうれしく思います」と語った。

 

 HO坂手淳史は「ショートウィークで強い相手と戦うというすごくチャレンジングな1週間でした」と振り返り、こう続けた。

「今日ゲームに出たメンバーもそうですし、出ていないメンバーたちも、この1週間、いい準備をしてくれたということが今日のパフォーマンスに表れたと思っています。ほとんどの時間をいいかたちで進めることができた。最後は少しペナルティの部分を含め、修正すべき部分が出たのですが、そこに対してはこれからしっかりと修正して、次に向かっていきたい」

 

 第2節以来のスタメンとなった山沢拓也は、フル出場し、2トライ1ゴールを挙げた。前節は兄・拓也が途中出場での同時出場となったが、この日は弟・京平が後からピッチに立った。互いのトライを演出し、トライ共演に弟は「純粋にうれしい」とコメント。兄・拓也は「なかなか叶えられない目標。一緒に出られた上にこういうことができたのは、だいぶ幸せなこと」と笑顔で、ミックスゾーンを後にした。

 

 一方、厳しい現実突き付けられたのが敗れたスピアーズだ。プレーオフ進出に向け、痛い黒星。フラン・ルディケHCは「私たちが求めていた、プランしていた結果ではありませんでしたが、まずはこの試合をしっかりと受け入れ、次に繋げていくしかない。それ以上でもそれ以下でもありません」と肩を落とした。昨季プレーオフ決勝以来の公式戦で対戦。指揮官が「80分間、クボタのラグビーができていた。ディフェンスでも相手にテンポ良くプレーさせなかった」という出来だった10カ月前とは違う姿。だが希望をすべて打ち砕かれたわけではない。

 

「控えの若手選手たちがいいパフォーマンスを見せてくれた。彼らがペナルティーを取り、それをチャンスに繋げてくれた」とルディケHC。キャプテンのCTB立川理道も「若い選手たちがチームに勢いを与え、スコアできたというのはチームにとっても明るくポジティブなニュース」と振り返った。

 

 この日はアーリーエントリーのPR為房慶次朗がデビュー。後半8分に投入されるとボールキャリーやスクラムで持ち味を発揮する。「試合前は緊張もありましたが、いざ試合に入れば緊張することなくプレーできました」と為房。同じくアーリーエントリーのHO江良颯(後半15分から出場)と共にチームをプッシュした。

 

 ラインアウトモールから3試合連続トライ挙げた江良は「スクラムやモールすべてのところでインパクトを残そうと、後半全員インパクトプレーヤーは出ていったと思います。ああやってスコアを重ねられたのは良かったです。最後まで諦めずやり切った結果」と胸を張った。

 

(文・写真/杉浦泰介)