「NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24」ディビジョン1第11節が24日に行われ、2位の東芝ブレイブルーパス東京が10位のリコーブラックラムズを40-33で下した。両チームの順位は変わらず。通算成績はブレイブルーパスが10勝1敗、ブラックラムズが2勝9敗となった。

 

 ノーサイドの瞬間、チームの勝ち負けに関係なくヒザに手をつく者、座り込む者がいた。死力を尽くした――激闘を物語るワンシーンだった。

 

 ここまでの順位はブレイブルーパスが2位、ブラックラムズが10位。それでもブレイブルーパスのトッド・ブラックアダーHCは手綱を緩めない。「順位表では下位かもしれませんが、火力があり、馬力があるチーム。厳しい試合になると予測していました」。FWのフィジカルが売りの両チーム。現在の順位を額面通り受け取らないのは選手も同じ。ブレイブルーパスのPR眞壁照男は言う。

「今週のテーマは“ファーストパンチ”。僕らからパンチをしようというテーマでした。ブラックラムズさんはキャリーができる選手がいて、乗せてしまったらFWがどんどん前にきてしまう」

 

 東京を冠するチーム同士の対決は互いのプライドがぶつかり合う一戦となった。5分、ビッグゲインを見せたのがWTB桑山淳生だ。CTBセタ・タマニバルからパスを受け取ると、26歳の快速WTBは、右サイドから左サイドを斜めに走り抜けてインゴール左隅に飛び込んだ。「スペースがある中でボールを持てばいいランができると自負している。自分の強みを見せられた」。これで3試合連続、今季7個目のトライとなった。

 

 ブラックラムズは12分、WTBネタニ・ヴァカヤリアやFBアイザック・ルーカスがボールを運び、敵陣深くに侵入。最後はNo.8ネイサン・ヒューズがねじ込むようにトライを奪い返した。CTBで起用されたマッド・マッガーンのコンバージョンキックが決まり、7-7と同点に追いついた。

 

 追いつかれたブレイブルーパス。14分、右ラインアウトから左に展開すると、左サイドでボールを持ったSOリッチー・モウンガが魅せる。パスダミーで外に餌を撒き、縦に突破。サポートに回っていたFB松永拓朗にラストパスを送った。松永は悠々とトライを挙げた。さらにブレイブルーパスは22分、31分とWTB森が連続トライ。モウンガがコンバージョンキックをここまで100%の成功率(4/4)で28-7と突き放した。

 

 36分、ヒューズにこの日2本目のトライを与えて迫られたが、前半終了間際にNo.8シャノン・フリゼルのトライで33-14と19点差で試合を折り返した。スコアだけで言えば、ブレイブルーパスの一方的な展開にも見えなくもない。だがキャプテンのHO原田衛が「感触としては、前半からフィジカルで圧倒できていたわけではなくて、コンタクトやブレイクダウンでプレッシャーを掛けられていたので、ワンサイドゲームにはならなかった」と語ったようにブラックラムズも粘り強く戦っていた。

 

 すると後半はブラックラムズに流れが傾く。4分、WTB西川大輔のトライを皮切りに敵陣で試合を運び、プレッシャーをかける。ブレイブルーパスは反則が目立ち始める。9分にモウンガ、13分に原田とBKとFWのキープレーヤーがイエローカードを受けた。ブラックラムズはこの数的有利のチャンスを最大限に生かし、ルーカスとヴァカヤリアのトライなどで33-33と追いついた。前日の同会場で行われた東京サントリーサンゴリアス対横浜キヤノンイーグルス戦は、イーグルスが最大25点差を逆転し、勝利していた。2日連続の逆転劇か――。

 

 ブレイブルーパスはそれを許さなかった。敵陣に侵入し、FWがシンプルに縦を突く。今度はブラックラムズが反則を連発。32分にはマッガーンをイエローカードで失った。数的有利となったブレイブルーパスは34分、最後はCTB眞野泰地がタックルを受けながらもインゴールに飛び込んだ。モウンガがコンバージョンキックを決め、40-33と勝ち越し。ブラックラムズの反撃を抑えてノーサイド。ブレイブルーパスがタフな一戦をモノにした。

 

 昨季はマッカラン兄弟(兄・ブロディ、弟・ニコラス)が直接対決したカードだが、今回は眞壁兄弟が揃って左PRで先発出場した。8分には兄・貴男が弟にタックルを見舞った。「ボールを持った瞬間、顔が見えたので思い切り当たりに行きました」。タックルを受けた弟・照男も「目が合って、“来る”と思った」と“直接対決”のシーンを振り返った。2人は後半15分に兄が、その2分後に弟がベンチに退いた。照男がブラックラムズベンチの前を通ると、兄弟で「お疲れ」と声を掛け合ったという。兄からは「こっちのベンチも座っていいぞ」とイジられるなど、試合終了後を含め仲の良さが窺えた。

 

 父と四兄弟全員がPRという眞壁家。4歳違いの二男と四男はリーグワンでは初対決となった。互いの存在を弟・照男は「各カテゴリーではかぶっていないのですが、追いかけていた」と語れば、兄・貴男は「弟が日本代表の合宿に呼ばれたりして、すごくいい刺激になっている」と答えた。55分間の兄弟対決を照男はこう振り返った。

「同じチームでやることはなかったし、同じピッチに一緒に立つこともあまりなかった。今回はスタートとして貴重な体験ができた。不思議な感じでした」

 

 先述したマクカラン兄弟以外にもリーグワンで兄弟対決や兄弟チームメイトというケースは少なくない。2日前には埼玉パナソニックワイルドナイツの山沢兄弟(兄・拓也、弟・京平)がそれぞれのトライをアシストし合った。前日は田村兄弟(兄・優=イーグルス、弟・熙=浦安D-Rocks)が同日別会場で逆転のプレースキック(兄がPG、弟がG)を決めた。今後も兄弟対決、共演が見られそうだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)