サンフレッチェ広島レジーナ(S広島R)は24日、味の素フィールド西が丘で行なわれた第12節、対日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)と対戦し、1対2で敗れた。負けはしたものの、この日もS広島Rの武器の1つ、市瀬千里のロングフィードは健在だった。

 

 開始早々から東京NBにペースを握られたS広島Rだったが、中盤以降は市瀬のフィードで果敢に裏を狙った。

 

 19分、左センターバックの市瀬が左サイドへフィードを展開。相手DFの裏を取ったMF中嶋淑乃が追いつき、クロスを上げたものの惜しくも相手DFのブロックにあった。

 

 21分にも市瀬が中嶋を狙ったが惜しくもカットされた。26分にも市瀬-中嶋のラインがつながった。相棒からロングパスを受けた中嶋はショートバウンドのボールをピタリと収め、観客を魅了した。34分にも市瀬は左サイドの中嶋を狙った。

 

 今季のS広島Rはショートパスを封じられても、市瀬のロングフィードがある。このセンターバックが攻撃の幅を広げている。

 

 受け手の中嶋はこう語った。

「裏に蹴ってもらったら、行ける場面が結構あったので、そこは積極的に狙っていこうと話していました。ちぃ(市瀬)からの裏のボールは常に狙っています。そこが相手にケアされたら、少し中に入ってちぃから縦パスを受けたり、いろんなコンビネーションを作れたらいいなと思います。ちぃがボールを持ったら、“来る”と感じているので常に裏を狙う準備はしておきたいなと思います」

 

 市瀬は自分のロングフィードについてこう話した。

「今日は相手の方が一歩遅れていると感じたので、しの(中嶋)の裏に蹴れば、しのの方が速いだろうという判断でロングパスを蹴りました。つながる場面も多かったですが、ちょっと流れてしまう場面もありました。あれを百発百中通せて、しっかりと攻撃の起点となれるようにしたいです」

 

 このロングフィードはいつから自分の武器だと自覚したのか、と水を向けると意外な答えが返ってきた。

 

「高校生の時は武器ではありましたけど……。精度は突き詰められていなかった気がします。(今季)広島に移籍してきてゴールに直結するロングフィードに磨き上げるという目標を掲げて努力してきて、いまやっと胸を張って“これが私の武器です”と言えます」

 

 市瀬は続けた。

「パスコースを探して、探して、相手の動きを見て蹴るというより、“ここに蹴るから走って欲しい”と味方には伝えています。私がジェフに在籍していた時から、しのは嫌な選手でした。味方になった今、すごく頼もしいです。しのは常に私に対して“ロングを出してほしい、裏を狙ってほしい”と言ってくれています。相手がどんな状況であれ、狙っていきたいなと思っています」

 

 市瀬-中嶋の長距離ホットラインは、間違いなく対戦相手の脅威になっている。

 

(文/大木雄貴)