今シーズンは打者1本に専念するドジャース大谷翔平に、「40―40」(40盗塁・40本塁打)の期待がかかる。

 

 

<この原稿は2024年4月1日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 その驚異的な飛距離に注目の集まる大谷だが、脚も速く、46本塁打を放った2021年は26盗塁、44本塁打でア・リーグの本塁打王に輝いた昨シーズンは20盗塁をマークしている。

 

 忘れられないのは、21年5月2日(現地時間)のマリナーズ戦だ。エンゼルスの2番DHで出場した大谷は第1打席で、先発ジャスティス・シェフィールドから右ヒジに死球を受けた。大谷は「ウォ!」という悲鳴とともに、その場にうずくまった。

 

 甘いマスクに似合わず、負けん気は誰よりも強い。大谷には「こんちくしょう!」という思いがあったはずだ。

 

 ヒジの仇は脚で討つ、とばかりに大谷は3番マイク・トラウトの打席で二盗、4番アンソニー・レンドンの打席で三盗と、立て続けに次の塁を陥れた。死球を三塁打にしてしまったのである。

 

 こうなると、どっちが痛いかわからない。マウンド上でシェフィールドは、大谷にぶつけたことを後悔したはずだ。

 

「オレにぶつけたら、こうなるぞ。気を付けろよ!」

 

 私の目には大谷の“甘美な復讐”のように映った。

 

 過去、メジャーリーグにおいて「40―40」を達成した選手は、ホセ・カンセコ(88年)、バリー・ボンズ(96年)、アレックス・ロドリゲス(98年)、アルフォンソ・ソリアーノ(06年、ロナルド・アクーニャJr(23年)の5人しかいない。

 

 大谷の走力とスライディング技術をもってすれば、「40―40」どころか、まだ誰も達成したことのない「50―50」も夢ではあるまい。

 

 おそらくシーズンに入っても、大谷は2番で起用される可能性が高い。3番を打つと見られる20年のMⅤPフレディ・フリーマンは「いつでも走っていい。100盗塁して欲しいね」とアシストを明言している。ひょっとすると、ひょっとするかもしれない。

 


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