女子ソフトボール「JD.LEAGUE」の3季目が4月12日に開幕する。昨季、ダイヤモンドシリーズファイナルで優勝を争ったビックカメラ高崎ビークイーンとトヨタレッドテリアーズの両チームが、優勝争いの軸になると見られている。

 

 ビックカメラ高崎は上野由岐子、濱村ゆかり、勝俣美咲ら昨季の東地区優勝を支えた投手陣が残る。注目はリーグ最年長の上野。北京、東京と13年にまたがるオリンピック“連覇”に貢献した鉄腕も、もう41歳。24年目のシーズンを迎えるにあたり「毎年違う心境で開幕を迎えられている。今年は今年で楽しみ」と言い、続けた。

「今年はどのくらい自分が投げ続けられるか、いろいろなものに挑戦するシーズンにしていきたい。自分自身がパフォーマンスに期待しながらプレーしていきたい」

 

(写真:「皆さんの期待に応えたいし、自分の期待にも応えていきたい」と思いを述べる上野)

 昨季はリリーフとして20試合に登板し、防御率0.88。新境地を開拓した。

「クローザーとしての立ち位置をつくりながら、観に来てくれた方たちに毎試合投げる姿を披露できるようなコンディショニング調整をしていきたい。もちろん起用法は私が決めることがじゃないですが、1イニングでもいいから全試合を投げてみたいという大きな目標を持って、今シーズンに臨めたらいいと思っています」

 

 投手陣が盤石な一方で、正捕手の我妻悠香、セカンドのレギュラー市口侑果が現役を引退(いずれもコーチに)、センターラインに抜けた穴をどう埋めるか。「今年は試合をしながらどれだけ成長していけるかが、ウチの課題。今まで以上に勝つことが難しくなることを想定しています。その中で勝ち続けなければいけない。自分が若い選手の背中を押していかなければいけないし、若い選手がどれだけ頑張ってくれるか見守りつつも戦っていきたい」と上野は語っていた。

 

(写真:公式応援団を務める風男塾のメンバーと上野とポーズを取る後藤<後列中央右>)

 トヨタの顔は昨季西地区MVPに輝いた後藤希友。日本代表のエースも担うサウスポーだ。昨季は18試合に登板し、14勝1敗、防御率0.83をマーク、個人タイトルをほぼ総ナメにした。それでも本人は「結果としてチームは優勝し、タイトルもたくさん獲れた。私の中では葛藤のあった1年。満足しているかというとそうではない。今まで以上に勝負の年だと感じています」と殊勝な面持ちで語る。

 

 後藤に次ぐ先発は昨季、途中加入ながら3勝を挙げ、ダイヤモンドシリーズでも好投したメーガン・ファライモだ。日米代表の二枚看板で2年連続の頂点を目指す。

 

 注目のサウスポー

 

 後藤の他にもリーグには注目のサウスポーがいる。1人は昨年日本代表に選出され、アジアカップにも出場した太陽誘電ソルフィーユの曽根はん奈。「今まで以上に結果を求めながら、いい成績を残していきたい」。制球力が売り物の24歳だ。

 

 曽根は球種こそ多くはないが、“動く真っすぐ”を武器とする。昨季は5勝8敗と負け越したがチーム最多の29試合中21試合に登板した。「毎年納得のいく年はないんです。それは6勝を挙げた日本リーグ最終年(21年)も同じです。私自身、満足しない日々を送ることが大切だと思っています」と静かに語った。

 

 太陽誘電は主力の中溝優生らが抜け、昨季のチームから大幅に入れ替わった。5人の新人選手が加わり、23歳以下の選手が7割を占める。曽根は言う。

「若さ、はつらつした輝きに注目して欲しいと思います」

 

(写真:開幕節の入場者にプレゼントされる『ニトリカレー』をアピールする曽根<中央>ら選手たち)

 その曽根は、明るいキャラクターでも注目の的となっている。ヒロインインタビューではサービス精神旺盛なところを見せる。リーグの目玉企画である「推しプロジェクト」のPR役にも選出された。リーグ公式サイトの曽根のプロフィール欄には<見れば見るほど癖になる>プレーを目指すと書かれている。

「ソフトボールをプレーしている時だけではなく、それ以外の時でもお客さんに楽しんでもらいたい。“目が離せない”と思ってもらえることを意識しています。プレーしていない時も目を向けたくなる存在になれればと思っています」

 

 日立サンディーバからは、昨季プレーオフで涙をのんだ長谷川鈴夏を挙げたい。豊田自動織機シャイニングベガから移籍してきて3季目だ。「楽しみな気持ちと緊張、両方あります」と胸の内を明かす。

 

 長谷川は昨季、ライズボール、チェンジアップ、スライダーを駆使し、チーム日本人最多タイの5勝を挙げた。プレーオフ・セカンドステージのホンダリヴェルタ戦では先発のマウンドを任された。

「移籍1年目が不甲斐ない成績だったので、“この年が勝負”と挑んだのが昨季。今まで以上の自覚や責任感が試合を追うごとに強くなっていったシーズンでした。今季はチームの主軸として、フル回転できるように成長したいと思っています」

 

(写真:昨季チーム最多勝のマクイリンが抜け、今季の飛躍が期待される長谷川)

 日立は、今季セカンドユニホームを新調した。昨季までは紺が基調だったが、白と紺のストライプにデザインを一新。長谷川は「“新しい時代を日立からつくっていこう”と、みんなで口を揃えて言っているので、その表れだと思います」と語り、続けた。

「泥臭い印象があるソフトボールのイメージを変えていければと思い、髪の色を金に変えました。(金髪姿を)ファンの方からもお褒めの言葉をいただきました。ソフトボール選手には、普段は可愛くて、フィールド上ではカッコ良い――。そんな選手たちのギャップも楽しんでいただきたいと考えています」

 

 4月12日にスタートするレギュラーシーズンは、10月までに12チームが29試合ずつ戦う。東西地区各3位までの6チームに、ワイルドカード(東西地区4位の勝率上位チーム)の1チームを加えた7チームがポストシーズン(プレーオフ、ダイヤモンドシリーズ)に進める。手に汗握る熱戦に期待したい。

 

 BS11では「JD.LEAGUE」開幕戦デンソーブライトペガサスvs.ビックカメラ高崎ビークイーン戦を放送します。オンエアは4月12日(金)19時~。是非ご視聴ください。

※雨天の場合、「スポーツで未来をつなぐ fromおおいた&佐賀」を放送いたします。

 

(取材・文・写真/杉浦泰介)


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