アジア最大級の格闘技団体『ONE Championship』(ONE)がタイ・ルンピニースタジアムで開催する「ONE Fight Night 22」を2日後に控え、キックボクシング世界バンタム級元王者の秋元皓貴(あきもと・ひろき)と、ONE参戦2連勝中のアトム級・澤田千優(さわだ・ちひろ)がオンライン取材に対応した。

 

 秋元は2022年11月、ONEキックボクシング世界バンタム級タイトルマッチでペッタノン・ペットファーガス(タイ)に判定負け(1-2)して以来、1年半ぶりの再起戦となる。

 

 昨年7月、シンガポールから国内に練習拠点へ移した。12月からはK-1スーパーバンタム級元王者でボクシングに転向した武居由樹、K-1世界フェザー級元王者の江川優生らを育てたキックボクシングジム「POWER OF DREAM」の門を叩いた。

「自分のやるべきことを1年半やってきた。その成長した姿を見せたい」

 具体的には「戦う時のメンタル、ステップワーク、リズムとか今までとは違う動きを取り入れてきました」と語る。


 武居は、5月6日に東京ドームでWBO世界バンタム級タイトルマッチに挑む。「試合が決まった時期も同じ。2人でいろいろと話しながら練習を積んできました」。2日早く試合を行う秋元にとっては勝って武居にバトンを渡したい。

 またモチベーションが高まるニュースが先月届いた。K-1トライアウト参加時の同期で、同じ愛知県出身の野杁正明のONE参戦が決まったのだ。

「いつかは来るだろうと思っていました。“やっと来たな”と。武尊選手も契約したので、日本人選手で一緒の大会に出たり、みんなで盛り上げていきたい」

 

 その秋元の対戦相手は、K-1ライト級元王者のウェイ・ルイ(中国)だ。「試合が決まる直前に彼がONEと契約したことを知りました。“やっぱり来た”という印象で、いつかやるだろうな、と思っていました」。ウェイ・ルイに対し、「巧い選手」という印象を抱いているという。ONE初参戦とはいえ、K-1でベルトを巻くなどキックボクサーとしての実績は十分。秋元も「試合をコントロールするのに長けている。ステップを踏みながら、蹴りを出しながら相手の嫌がることをするのが巧い。加えて、そこからの左ストレートが武器」と警戒する。

 

  タイトル奪還へ闘志を燃やす。「この舞台にいるならば、みんなベルトを獲りたいと思うはず。特に僕は1回獲って、失ってしまったので、返り咲きたいとの思いは強い。ベルトへの気持ちは他の選手よりも強いんじゃないかと感じています」。秋元が1年半前に失ったバンタム級のベルトは現在、ONEムエタイバンタム級王者でもあるジョナサン・ハガティー(イギリス)が手にしている。
「僕は負けているので(ペッタノンに)リベンジしたいという気持ちはもちろんあります。ただ自分としては組まれた試合をやるだけ。(ペッタノンか現王者)どちらとやるにしても、そこに合わせて調整するだけだと思います」

 

 小学2年時より始めた空手をベースに自らのキックボクシングスタイルを築いてきた。前に出ていくファイトスタイルは「観ている方が楽しめる試合をしたい。心掛けているというよりは、自然とそうなっている」という。ウェイ・ルイ戦に向け、「試合を完封するというのが自分のテーマ。ダウンを取ったり、KOで勝つことも大事ですが、まずは相手に何もさせずに勝つ」と意気込んだ。

 

 アトム級の澤田は前戦(3月8日)は同5位のジヒン・ラズワン(マレーシア)に3-0で判定勝ちを収め、勢いに乗っている。
「本戦デビューでランキング5位と組んでいたただいことはありがたい。そこには期待が込められていたり、“日本人はどんなものか”と思われていた中で組まれた試合。結果、3-0で勝てたことは、この階級で戦っていく自信にも繋がりました」

 

 今回の相手ノエル・グランジャン(タイ/フランス)はランカーではない。だが、澤田がランク入り、タイトル奪取を見据えるためには、ここで足踏みはしたくないだろう。
「身長(153cm)は大きくありませんが、足腰がしっかりしている印象です。柔道ベースでパンチが強く、投げ技が得意。世界で戦っている選手なので、強いことは間違いない。ナメてはいないですし、リスペクトを込めて戦っていきたいと思っています」

 

 レスリング出身の澤田は打撃を課題としているが、そこに固執するつもりはない。「打撃に頼ると今までレスリングで培ってきたものが疎かになる。あくまでもレスリングを使うための打撃を意識してきた」。理想の試合展開について聞かれると、こう答えた。

「あくまでも冷静に戦う。アグレッシブに戦いながらコツコツいいポジションを取り、相手を削って削って、バテたところでフィニッシュを決めたい」

 

 澤田も秋元同様、ベルト奪取に意欲を燃やす。2021年に修斗でデビューして以降、MMA転向後は無敗街道をひた走っている。ただ女王への道のりに近道はないと考える。

「このアトム級において、ONEが世界で一番レベルが高い団体と思って挑んでいるので、勝ち星と経験を重ねてベルトを狙っていきたい。ただすぐにチャンピオンに挑戦とは考えていません。自分ができることを増やし、現在ベルトを持っているスタンプ(・フェアテックス=タイ)選手に勝てるレベルに成長したい」

 

 現時点での女王との差を澤田は「(各項目の)ひとつずつアベレージを高く持って行かないと到底及ばない。ONEで戦いながらアベレージを上げていきたい」と冷静に受け止めている。

「少しずつですけど、近付けてはいる。それを自信にしながら、より高みを目指していきたい」

 

「ONE Fight Night 22」は日本時間の5月4日9時にスタートする。「ONE Championshipは世界のトップファイターが集まる場所。タイトルマッチだけでなく、どの試合もレベルが高い。自分も今まで試合をしてきた、どの選手もタイトルマッチのようなレベルの試合ばかり。そこが魅力だと思います」と秋元。大会の模様はU-NEXTでライブ配信予定。秋元、澤田ら日本人ファイターをはじめ、熱戦を期待したい。

 

(文/杉浦泰介、写真/©ONE Championship)

 

BS11では毎週木曜日23時に『ワールドファイトCLIP! Supported by U-NEXT」を放送中! 5月9日(木)の放送では「ONE Fight Night 22」の模様も紹介される予定です。