日本円で6億8000万円以上(報道初期の金額)の大金を、大谷翔平本人の同意なしに、どうやって送金できたのか。その経緯については、未だに明らかになっていないが、水原一平通訳による“違法賭博問題”が大谷に累を及ぼす可能性は、新事実でも出てこない限り、現時点では極めて低いと考えられる。

 

 

<この原稿は2024年4月29日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 周知のように、これまでの大谷と水原氏の関係は、まさに一心同体と呼べるもので、分身に裏切られた大谷の心境は察して余りある。

 

 通常、一介の通訳が、札付きの胴元から“信用貸し”の特権を与えられることは皆無と言っていい。実際、胴元のマシュー・ボウヤー氏は「イッペイはオオタニの親友だから」と語っている。ボウヤー氏は大谷の名前を利用して、一儲けを企んでいたに違いない。

 

 今回の一件、大谷にとっては高い授業料だが、別の見方をすれば、ひとり立ちする絶好の機会を得たとも言えなくない。

 

 古くは、あの“伝説の大投手”沢村栄治も、米国でスキャンダルに巻き込まれている。

 

 1935年2月から7月にかけて、沢村は現在の日本代表にあたる大日本東京野球倶楽部の一員として米国遠征に参加した。

 

 遠征先のミルウォーキーで、見知らぬ男性から、突如、自分と契約したことを告げられる。もちろん沢村は何のことかさっぱりわからない。

 

 不審に思ったマネージャーの鈴木惣太郎が沢村に訊ねると「わし何か知らんがサインをしてくれというさかいその紙にサインしたのや」(『不滅の大投手・沢村栄治』鈴木惣太郎著・恒文社)と答えたという。

 

 真相はこうだ。試合前の練習中、ボールを追って外野まで行くと、件の男がペンを持って立っていた。単なるサインかと思い、差し出された紙にペンを走らせたところ、それはカージナルスの契約書だった。男はカージナルスのスカウトという身分を隠していたのだ。

 

 今から90年近く前の話である。今も昔もスターには受難がつきまとう。

 


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