伊藤紗弥&藤原乃愛、女子ムエタイ牽引する2人が揃ってKO勝ち 〜ムエローク〜

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 12日、国内ムエタイ興行の「ムエローク2024HACHIOJI」が東京・八王子富士森体育館で行われた。メインイベントに登場した地元出身の伊藤紗弥(尚武会)はペチャサグジャン(タイ)に2ラウンドTKO勝ち。藤原乃愛(尚武会フジワラムエタイジム)はペッイサーン・シッシャンウー(タイ)に4ラウンドTKO勝ちを収めた。
 
 
 この日、東京・代々木では「タイフェスティバル東京2024」(11日からの2日間)が開催されていた。同イベントには現役ムエタイトップファイターのスーパーレック・キアトモー9(タイ)が参加した。試合は実施されなかったもののミット打ちなどのパフォーマンスで会場を盛り上げていた。その「タイフェスティバル東京」から距離にして約36kmほど離れた富士森公園内にある体育館では、“草ムエタイ”の雰囲気を醸した「ムエローク」が行われていた。

 

「ムエローク」はムエタイの普及・振興のため2009年にスタートした興行だ。旗揚げ戦は東京・代々木第二体育館で行われた。13年以降は八王子にジムを置く尚武会の単独主催となり、地元大会を定期的に開いている。尚武会の今井勝義会長は「地元を盛り上げようと思い、(八王子開催を)始めました」と語る。

 

 

 派手な演出はなく、どこか牧歌的な雰囲気を纏っている。伊藤曰く「“草ムエタイ”、自由な大会」という。藤原も「メチャメチャ独特。“本当タイじゃん”って感じです。みんながニコニコしている雰囲気がタイらしい」と口にする。飲食販売ブースに用意されているのは、もちろんタイ料理(写真)だ。今井会長は「いい選手を輩出していき、子どもから大人まで楽しめる大会にしたい」と意気込む。目指すのは「ムエタイのオリンピック種目入りです」と力強く語った。

 

 

 

 本場タイと同じくメインカードは最終試合に置かない。オープニングファイトを含む14試合中9試合目に、地元出身の伊藤が登場した。「ムエローク」は2年ぶりの参戦。昨年は2大会(5月に八王子富士森体育館、9月に新宿FACEで開催)で運営側(マッチメイク)に回っていた。対戦相手のペチャサグジャンはタイ・イサーンのアトム級タイトルホルダーという情報はあれど、「試合映像が一切なく、ぶっつけ本番に近かった」と伊藤。RWS(ラジャダムナン・ワールド・シリーズ)では2分3ラウンドだが、今回は2分5ラウンドで行われた。「様子見と、5ラウンドある中でまずはやりたいことをやってみようと思っていました」。第1ラウンドはキックを中心に自分の距離で闘った。

 

 

 昨年からパンチ強化をテーマに掲げる伊藤。決着は第2ラウンドに訪れた。ミドル連打で相手を追い込むと、パンチも織り交ぜながら圧倒する。「相手の心が折れていた」とトドメのテンカオ(組まずに打つ膝蹴り)を突き刺し、このラウンドで仕留めた。
「ムエロークはIPCCとWMCのタイトルを獲った思い入れのある大会。ウチのジム(尚武会)の興行ですし、地元の人が来てくれて、八王子がムエタイで盛り上がる1日。そこのメインは緊張しました」

 

 

 次戦は7月のRWS日本大会を予定している。自身が目指すラジャダムナンスタジアムのベルト。伊藤のアトム級のベルトはまだ創設されていないが、彼女の今後の闘い次第で、その可能性は広がる。「強敵がやってくると思いますが、そこは負けられない」と闘志を燃やす。

 

 リング上では「ムエタイ女子も注目してください」とアピールした。
「ムエタイ女子を牽引している自負はあります。私がタイトルを獲れば、さらに盛り上がるはず。キックボクシングの選手が“ムエタイをやってみたい”と思ってもらえるような大会や試合をしていきたいです」

 

 

 これまで女子ムエタイ界を引っ張っているのが伊藤なら、次代のエースとして期待がかかるのが19歳の藤原だ。第9試合にリングに上がり、ペッイサーンと対戦した。「Fairtex Fight(フェアテックス・ファイト)」(タイの大手プロモーション興行)に出場する1階級上で闘っているファイターだ。藤原も「6月の試合(フェアテックス・ファイト)が決まっているので、絶対に勝たないといけない」と臨んだ。

 

 自身3度目のムエロークだった。「小学6年生の時にオープニングファイトで出させていただきました」。昨年はパトンスタジアムミニマム級王者のモンクットペット・カオラックムエタイ(タイ)に判定で敗れた。

 その試合以来となる約1年ぶりの日本のリング。藤原は第1ラウンドから相手を圧倒した。第3ラウンドにヒザ蹴りでダウンを奪い、第4ラウンドにラッシュをかける相手は戦意を喪失した。危なげない勝利だったが、「もっと綺麗にフィニッシュしたかった」と納得はいっていない。

 

 長い脚から繰り出すキックが持ち味。その見栄えの良いキックは藤原がムエタイを始めたきっかけである伊藤と共通する。伊藤自身も「キックが多彩。昔の私に似ているところもある」と認める。「2人でムエタイの話ばかりしている。それくらいムエタイが大好きな子なんです」と伊藤。藤原は3週間後、タイで「フェアテックス・ファイト」に出場予定だが「自分は試合が好きです。もっといっぱい試合がしたい」と笑顔で語った。試合が好きなところも2人に似ている。

 

 姉のように慕う伊藤は5本の世界ベルトを獲得した。藤原は17歳でキックボクシングのミネルヴァ認定日本ピン級のベルトを巻いた。「世界の名が付くベルトが欲しい」。リングコスチュームと髪色は緑と会場でも一際目立つ。「格闘技全般はもちろんですが、女子のムエタイを盛り上げられるようになりたいですね」

 

(文・写真/杉浦泰介)

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