北京五輪で金メダルを目指す星野ジャパンのキーマンは、2軍から1軍に上がってきたばかりの上原浩治(巨人)である。先頃、発表された代表候補39人にも名を連ねていた。

 星野仙一監督が不調の上原に最後までこだわったのは「(アジア地区予選)韓国戦でのあの1イニングが忘れられない」から。4対3と1点リードで迎えた9回、クローザーとしてマウンドに立った上原は3人でピシャリと締めくくった。
「たいした男だよ。これだけの場面で、あれだけコントロールできるなんて、どえらい投手だ」
 試合後、星野監督はこう言って舌を巻いたものだ。

 代表候補39人を発表する直前、星野監督は上原に直接、電話をかけた。
「登録抹消の兄ちゃん、調子はどうや?」
 すかさず上原はこう返した。
「2、3回なら今すぐにでも投げられますよ」

 この“チョクデン”でもわかるように、星野監督の上原に寄せる思いは尋常ではない。
 これが落とし穴にならなければいいが、と案じる。上原の舞台度胸、国際試合での実績は誰もが認めるとおりだが、それは昨季までの話だ。

 現時点でのクローザーとしての安定感となれば、明らかに藤川球児(阪神)の方が上だ。責任感を持たせる意味でも、藤川をセットアッパーからクローザーに昇格させてもいいのではないか。

 星野監督をよく知る球界OBがこんな不安を口にする。
「星野は昔から“こいつと心中”と腹を決めるクセがある。はまれば強いが、逆の目に出ることもある。北京五輪の代表権を勝ち取ったメンバー中心のチーム編成が吉と出るか凶と出るか……」

 監督として指揮を執った日本シリーズで全て負けているのは、勝負師としての才に欠けているからなのか、それとも最後まで運を残していたと考えるべきなのか。その答えは2カ月後に出る。

<この原稿は2008年7月12日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>

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