この企画は成功だったと言えよう。選手が選手を選ぶ「選手間投票」が今年のプロ野球オールスターゲームで初めて実施された。1位になった選手はファン投票の1位同様、自動的に出場権を得ることができる。

 素人(ファン)が選ぶ選手と玄人(プロ選手)が選ぶ選手はどこがどう違うのか。そこに興味があった。

 そのリトマス試験紙と呼べる選手がカープの東出輝裕だ。二塁手部門でリーグトップの279,873票を獲得し、初めてファン投票でオールスターに選ばれた。
 東出は打率3割5分4厘で目下、打撃成績の2位。首位打者だって夢ではない。選手間投票でも1位間違いなしと思われた。
 ところが玄人の視線は厳しい。こちらは中日の荒木雅博、東京ヤクルトの田中浩康に次いで第3位。票数は荒木257票に対し、東出は125票。倍以上の差がついた。

 二人の成績(7月7日時点)を比べよう。東出が打率3割5分4厘、0本塁打、17打点、盗塁6。荒木は打率2割5分6厘、2本塁打、13打点、盗塁23。荒木が東出を大幅に上回っているのは盗塁数くらいで、打率では実に1割近く引き離されている。

 にもかかわらず玄人たちは荒木に軍配を上げたのだ。あるベテラン内野手は冷静な口ぶりでこう言った。
「確かに今季の東出はよく打っているが、守備力、走塁技術など数字に表れない点では全て荒木が上。だから(五輪代表監督の)星野さんも荒木を北京での代表候補に挙げているのでしょう。ショートもファン投票では巨人の坂本勇人がトップだったが『選手間投票』では中日の井端弘和が1位。ホンモノが分かるいい企画だったと思いますよ」

 いっそのことオフの査定でも“玄人の眼”を活用してみてはいかがか。誰がもらい過ぎで誰が損をしているかがはっきりわかる。どこか実施する球団は出てこないか。

<この原稿は2008年7月26日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されたものです>

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