第292回 7・28『超RIZIN.3』でマニー・パッキャオvs.鈴木千裕! だがその前に大きなハードル

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 プロボクシング6階級制覇王者マニー・パッキャオ(フィリピン)が、ついに「RIZIN」のリングに登場する。7月28日、さいたまスーパーアリーナ『超RIZIN.3』で鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)と対戦することが決定したのだ。

 

(写真:RIZINの榊原信行CEO<中央>を挟んで記念撮影に応じる2人)

 パッキャオは言わずと知れたボクシング界のレジェンド。7本の世界のベルトを腰に巻いた実績がある。

 

WBC世界フライ級王座(1998年12月獲得)

IBF世界スーパーバンタム級王座(2001年6月獲得)

WBC世界スーパーフェザー級王座(2008年3月獲得)

WBC世界ライト級王座(2008年6月獲得)

WBO世界ウェルター級王座(2009年11月獲得)

WBC世界スーパーウェルター級王座(2010年11月獲得)

WBA世界ウェルター級王座(2018年7月獲得)

 

 通算戦績62勝(39KO)8敗2分け。2021年8月にヨルデニス・ウガス(キューバ)に判定で敗れWBA世界ウェルター級王座を失って以来、公式試合からは遠ざかっている。それでもまだファイティングスピリットを失ってはいない。

 

 そんな”アジアの英雄“に鈴木が挑む。

 闘いのルールは、以下の通りだ。

・RIZINスタンディングバウト(ほぼボクシングルール)。

・3分×3ラウンド、判定決着なし。KO、TKOでのみ勝敗を決する。

・契約体重68キロ。

・8オンスグローブ着用。

 

 6月10日、都内ホテルで開かれた記者会見でパッキャオは言った。

「この試合はエキシビションではない、真の闘いだ。私は1ラウンドで終わらせるつもりでいる。ボクシングは甘い競技ではない、そのことを(鈴木千裕は)知ることになるだろう。いや、私が学ばせる」

 鈴木は、こう応えている。

「そう言ってもらわないと!(パッキャオが本気であることに)安心しました。パッキャオ選手にはボクサーのパンチは当たらない。でも僕の、MMAファイターのパンチは当たる。パッキャオ選手からボクシングを学ばせてもらいますけど、僕はパッキャオ選手に(ボクシングの試合の中で)MMAを学ばせます。RIZINとKNOCK OUTのチャンピオンとして負けるわけにはいかない」

 

(写真:「通常と同じ、3ラウンドではなく12ラウンドを戦うための準備をする」とパッキャオ)

 興味深い対決だ。

 実はパッキャオは、ボクシング本格復帰を目論んでいる。

 米国メディアESPNが、WBC世界ウェルター級暫定王者マリオ・バリオス(米国)とパッキャオが対戦に向けて交渉中であることを報じている。パッキャオにとって、鈴木戦は絶対に負けられない闘いなのだ。

 ルールがボクシングであることを考えれば、キャリア豊富なパッキャオが有利だろう。しかし、鈴木はこれまでに幾つものアップセットを起してきたファンタジスタ。またもや観る者を驚かせてくれるかもしれない。果たして、どうなるか――。

 

 だが一つ、気になることがある。

 このカードを現段階で発表してよかったのだろうか、本当に実現するのだろうか、との疑念。それは、パッキャオ戦の前に鈴木が大勝負に挑むことになっているからだ。

 6月23日、東京・国立代々木競技場第二体育館『KNOCK OUT 2024 SUPER BOUT “BLAZE”』のメインエベントで五味隆典(東林間ラスカルジム)vs.鈴木千裕が、ほぼボクシングルールで行われる。

 

 この一戦、現役バリバリの鈴木が優位と見られてはいるものの、五味のコンディション次第では何が起こるか分からない。もし、鈴木が五味にKO負けを喫したなら、パッキャオ戦は吹っ飛ぶ。

 そういえば、以前に五味は「パッキャオと闘いたい」と口にしていた。自分との試合を目前に控える中、鈴木の次戦が発表されたことは面白くなかろう。その相手がパッキャオなら、なおさらだ。

 パッキャオと同じ45歳になった五味が、“火の玉ボーイ”と化して鈴木を仕留めに行く。

 もしや、「パッキャオvs.五味」もあり得るのか――。

 

 

<直近の注目格闘技イベント>

▶6月15日(土)、エディオンアリーナ大阪/「RISE WORLD SERIES 2024 OSAKA」スーパーフライ級タイトルマッチ、大﨑一貴vs.政所仁ほか

▶6月15日(土)、東京・後楽園ホール/「SHOOT BOXING 2024 act.3」海人vs.アルマン・ハンバリアンほか

▶6月23日(日)、東京・後楽園ホール/「Krush.162」ミドル級王座決定トーナメント決勝戦、神保克哉vs.ブハリ亜輝留ほか

▶6月23日(日)、東京・国立代々木競技場第二体育館/「KNOCK OUT 2024 SUPER BOUT “BLAZE”」五味隆典vs.鈴木千裕ほか

▶6月30日(日)、東京・後楽園ホール/「RISE 179」志朗vs. クリスティアン・マンゾほか

▶6月30日(日)、東京・竹芝ニューピアホール/「PANCRASE 344&345」内藤由良vs.ディラン・オサリバンほか

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)プロフィール>

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)

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