第293回 “義足レスラー”谷津嘉章が藤原喜明、船木誠勝とリングで対峙! 何が起こる? ~7・14大阪『闘宝伝承2024』~
大阪でレジェンドレスラーが集うプロレスイベントが大いに盛り上がっていることを御存知だろうか?
『闘宝伝承』――。
2011年9月11日、兵庫・アイホール(伊丹市立演劇ホール)大会が皮切りとなった同イベントは、定期的に開催されすでに三十数回を数える。プロモートするのは、プロレスに造詣が深い湯川禎哉氏だ。
始まりは元全日本プロレスのザ・グレート・カブキと元新日本プロレス・グラン浜田の初遭遇だった。その後に木村健吾、青柳政司、斎藤彰浩、金本浩二、ケンドー・カシンら、そして天龍源一郎も参戦。最近では船木誠勝、藤原喜明、アレクサンダー大塚、KEI山宮、冨宅飛駈、伊藤崇文らを中心に20世紀から活躍を続けるレスラーたちがリング上を彩っている。
『闘宝伝承』の魅力は、懐かしのレスラーが登場するだけではない。湯川氏のマッチメイクも絶妙だ。
6年前の秋にはエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)第2競技場で『闘宝伝承2018 甦ったサムライ船木誠勝デビュー33周年記念大会』が開催され、そのセミファイナルで、因縁の二人が顔を合わせてもいる。
菊田早苗とアレクサンダー大塚が、タッグマッチで対戦したのだ。『PRIDE.20』(2002年4月、横浜アリーナ)で“遺恨試合”を繰り広げた両者が、16年の刻を経てプロレスのリングで再会――驚かされた。
「ワクワクした記憶」が甦る
さて7月14日、大阪・176BOX『闘宝伝承2024』でも興味深いカードが組まれている。
メインエベントは、タッグマッチ60分1本勝負。
藤原喜明&船木誠勝vs.谷津嘉章&KEI山宮
注目は、同イベント2度目の参戦となる谷津嘉章だ。
谷津は1970年代後半、アマチュアレスリング・フリースタイル重量級の日本トップ選手だった。76年モントリオール五輪に出場し8位。80年モスクワ五輪にも日本代表に選ばれていた。しかし西欧諸国にならって日本はモスクワ五輪参加をボイコット。
その直後に谷津は新日本プロレスに入門している。
同年12月29日に米国ニューヨークMSGでプロデビュー戦を行い、カルロス・ホセ・エストラーダに勝利。その後も米国で試合を続け、日本のリングに初登場したのは翌81年6月だった。蔵前国技館大会のメインエベントでアントニオ猪木と組み、スタン・ハンセン&アブドーラ・ザ・ブッチャー組と激突。一方的に攻撃を受け血だるまにされたシーンは忘れ難い。
84年には、レスリングの先輩である長州力と行動をともにしジャパンプロレス所属となり全日本プロレスに参戦。さらにSWS、SPWF、WJプロレスなど数多くの団体のリングに上がり続けた。
総合格闘技に挑戦したこともあった。
2000年10月・大阪城ホール『PRIDE.11』、01年9月・同所『PRIDE.16』に参戦し、2度にわたりゲーリー・グッドリッジと闘っている(いずれもTKO負け)。
そんな谷津が悲劇に見舞われたのは2019年のこと。
糖尿病の影響から体内に細菌が入り、右足膝下を切断する事態に。これで彼の選手生命に終止符が打たれたと誰もが思った。
しかし、谷津は諦めなかった。
2021年6月に“義足レスラー”としてリング復帰を果たす。そして昨年12月には『闘宝伝承32』のリングにも上がり、船木誠勝と組んで菊田早苗、KEI山宮組と対戦。義足着用とは思えぬスピーディな動きを見せ、場内の喝采を浴びた。
今回は、同じ新日本出身の藤原、船木と手を合わせることになる。
試合の5日後に68歳の誕生日を迎えるも血気盛んな谷津が、75歳の藤原相手に何を仕掛けるのか?
レジェンドたちの躍動が観たくなった。ティーンエイジャーだった頃の「ワクワクした記憶」を蘇らせてくれることだろう。
7月14日は私も会場に駆けつけ、レジェンドプロレスを堪能するつもりだ。
<直近の注目格闘技イベント>
▶7月12日(金)、東京・場所非公開/「GLADIATOR CHALLENGER SERIES 02」松嶋こよみvs.ソドノムドルジ・プレブドルジほか
▶7月14日(日)、東京・後楽園ホール/「DEEP 120 IMPACT」ウェルター級タイトルマッチ、鈴木槙吾vs.佐藤洋一郎ほか
▶7月14日(日)、千葉・TIPSTAR DOME CHIBA/「RWS JAPAN」ラジャダムナンスタジアム認定スーパーフライ級タイトルマッチ、吉成名高vs.ジョムホート・コースワンタットほか
▶7月14日(日)、大阪・176BOX/「ACF104」グラップリング・バンタム級王座決定戦、渡部修斗vs.神野翼ほか
▶7月20日(土)、東京・両国国技館/プロボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチ、中谷潤人(M.T)vs.ビンセント・アストロラビオ(フィリピン)ほか
▶7月21日(日)、東京・後楽園ホール/「PROFESSIONAL SHOOTO 2024 Vol.5」バンタム級王座決定戦、藤井伸樹vs.齋藤奨司ほか
▶7月21日(日)、東京・立川ステージガーデン/「PANCRASE 346」女子フライ級タイトルマッチ、重田ホノカvs.杉山しずかほか
▶7月26日(金)、東京・後楽園ホール/「RISE 180」宮﨑小雪vs.サムサン・C2Mムエタイアンドフィットネスほか
▶7月27日(土)、東京・後楽園ホール/「Krush.163」ライト級タイトルマッチ、伊藤健人vs.大岩龍矢ほか
▶7月28日(日)、さいたまスーパーアリーナ/「超RIZIN.3」朝倉未来vs.平本蓮ほか
▶7月28日(日)、大阪市立阿倍野区民センター/「PROFESSIONAL SHOOTO 2024 Vol.6 in OSAKA」ライト級王座決定戦、キャプテン☆アフリカvs.大尊伸光ほか
▶7月28日(日)、滋賀ダイハツアリーナ/プロボクシングIBF世界ミニマム級タイトルマッチ、重岡銀次朗(ワタナベ)vs.ペドロ・タドゥラン(フィリピン)ほか
<近藤隆夫(こんどう・たかお)プロフィール>
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)