東海大、王座奪還! 2年・新井道大が4点獲得で貢献 ~全日本学生柔道優勝大会~
23日、全日本学生柔道優勝大会最終日が東京・日本武道館で行われ、男子決勝は東海大学を2対1で下し、2年ぶり27度目の優勝を果たした。22日に実施された女子は1部(5人制)を東海大学、2部(3人制)を広島大学が制した。
昨年連覇を6で止められた東海大が、王座を奪い返した。男子100kg級の新井道大は5試合中4試合を任され、全試合一本勝ち(合せ技を含む)、チームの優勝に貢献。昨年も1年生ながら主力となったが決勝で引き分けた。敗戦の責任を背負い込んだが、その悔しさを世界ジュニア選手権優勝、グランドスラム東京大会2位、世界選手権銅メダルという好成績に繋げた。
大会1週間前に体調を崩すなどコンディションが万全というわけではなかった。それでも4回戦(チームは3回戦が初戦)から出場すると決勝までひとつもポイントを落とさなかった。準決勝では大将(7人目)を任され、0対1の場面で出番が回ってきた。引き分け以下で準決勝敗退という窮地にも、開始13秒、内股で一本勝ちを収めた。決勝は副将(6人目)。大外刈りで技ありを奪い、試合を優位に運ぶ。2分半過ぎに横四方固めで10秒抑え込み、合わせ技一本。これで2対1と勝ち越した。東海大は大将の石本慎太郎 (4年)が引き分けて優勝を決めた。
殊勲の新井は「決勝の舞台に立たせてもらいながら、ああいうところで仕事できないようでは使えないと自分自身では思っていました。1年間、そのことが頭に残っていて忘れようとしても忘れられなかった」と昨年の決勝直後はチームの負けをなかなか受け入れられなかったという。「4年生を勝たせずに学生柔道を終わらせてしまった。つらかった……」。柔道でつくった借りは柔道で返すしかない。「とことん柔道をした。自分が柔道を続けていく上で楽しさを忘れてしまってはいけない。そこに緊張感、勝負がある。今日は勝ちで終われましたが、負けで終わる日もある。これで舞い上がらず、次の大会に頑張っていきたい」と締めた。
上水研一朗監督は、新井の責任感に舌を巻く。「自身に課す責任の重さに関してはキャプテンをも超えているかもしれない。世界選手権の銅メダルは、我々からすれば“頑張ったじゃないか”という感じだが、アイツは本気で悔しがって泣いていた」。パリオリンピック日本代表選考レース、世界選手権など心身共にハードなスケジュールでも稽古量を落とそうとしなかった。休みの日でも母校・埼玉栄に足を運んでいたという。「休めと言っても休まなかった。異常なまでの自覚が彼をここまで押し進めている。責任感は人を成長させる」(上水監督)
昨年連覇が止まり、体重別団体も優勝できなかった。周囲から心配の声も上がったという。「たかが1年ですが、されど1年。長かったですね」と振り返ったのは上水監督。2008年の監督就任以来、常勝軍団を築き上げてきた。
「負けるということがどれだけ重いか思い知らされた。学生に言っているのですが、我々は覇権を獲る戦い方ではなく、王道をいくことを求められる。王者の道は高く険しい。野村克也さんの言葉を引用すると『無視、称賛、批難で人は試される』。我々は勝っても称賛をされないんです。今は批難の時期。一度でも負けたら批難される。それでも勝ちに行く。王道にふさわしい集団を目指していかなければいけない。勝利のメンタリティーは勝たなければ得られない。去年負けたことで自信を失った。今回勝ち切ったことで次の世代に受け継がれていくんです。コロナで一度リセットされたと思っている。ここがスタートだと感じています」
(文・写真/杉浦泰介)