後期もいよいよ終盤に入ってきました。特に北陸地区は3チームがいずれも僅差と、まさにダンゴ状態。最後の最後までどこが優勝するかわかりません。
 現在、石川ミリオンスターズは11勝11敗3分。選手たちは頑張ってくれていますが、正直に言えば、この時点でいくつか貯金をつくっておきたかったというのが本音です。残りは11試合。とにかくチーム一丸となって挽回していきたいと思っています。
 石川がなかなか勝ち星を伸ばすことができない理由の一つには、投打のかみ合わせがうまくいっていないということがあげられます。投手が抑えたと思えば、打線からの援護がなかったり、逆に今日は打線がよく打ってくれたと思えば、投手が踏ん張りきることができなかったり……。チームとしてのまとまりがいまひとつ欠けているのです。

 それでも前期よりはだいぶよくなってきていると感じてもいます。今後、優勝するためにも投手はどれだけ我慢して粘りのピッチングができるか。そして打線は1点でも2点でも多く取ろうと積極的なバッティングができるか。こうした基本的なことをいかに実践できるかが大事となってくるでしょうね。

 それでも投手が踏ん張って、守り勝つ野球をしなければいけないのは昨季と同じです。現在のチームの投手成績はというと、昨季と同じくリーグでトップを誇っています。しかも防御率、完投数、被安打、被本塁打、奪三振、与四死球、失点とどれをとっても昨季以上の成績を残しています。チーム状態はむしろよくなっているといっても過言ではありません。

 しかし、うちのチーム以上に他球団のレベルが上がっているのが実状です。昨季は打てなくても、相手の四球やエラーといったミスにつけ入ることができました。しかし、今季はリーグ全体的にミスが激減しています。そのため、石川にとっては昨季以上に厳しい戦いとなっているのです。

 さらに、昨季は蛇澤敦(北陸高−ルネス学園金沢−NOMOベースボールクラブ)、渡辺孝矢(常総学院高)、都卓磨(駒場学園高−国士舘大−相模原クラブ−茨城ゴールデンゴールズ)と、しっかりとした3本柱がいました。ところが、今季はというとNPB経験者の南和彰(神港学園高−福井工大−巨人−カルガリーバイパーズ)が13勝を挙げ、エースとしてチームを牽引してくれているものの、その南に続く投手がなかなか出てきていません。

 今後は優勝を賭けた厳しい試合が続きます。そのため、南一人に頼ってばかりはいられません。そこで考えているのが昨季、エースとしてチームを優勝に導いてくれた蛇澤の先発復帰です。彼は春先から肩に違和感を覚え、調整が遅れていました。そのため、長いイニングを投げられる体力が不十分で、今は抑えとしての役割を与えられています。

 しかし、もうそろそろ蛇澤にも先発の機会を与えようと考えています。1カ月前くらいから「9月半ばにはいくぞ」と伝えてありますので、本人もその覚悟はできていることでしょう。とはいえ、今季は一度も先発登板していませんから、正直、スタミナはもちろん、試合勘などが戻るかという不安がないわけではありません。本人から「よし、やったろうか!」という強気な発言があればまだいいのですが、「負けてもいいんですか?」と冗談ともとれないことを言われるので、なおさらです(笑)。

 それでも「やる時はきっとやってくれる」という信頼感のある投手であることは間違いありません。南や他球団のエースとは違い、蛇澤のボールは決して速くはありません。緩いキレのある変化球でストライクを取ってカウントを整え、最後はストレートあるいはシンカーで仕留める。これが蛇澤のピッチングスタイルです。これがレベルの上がっている他球団の打者にどこまで通じるのかが今後のチームを占うカギとなることでしょう。

 まさにこれからが正念場。後期優勝に向けて、頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願いします!


長冨浩志(ながどみ・ひろし)プロフィール>:石川ミリオンスターズコーチ
1961年6月10日、千葉県出身。千葉日本大学第一高卒業後、国士舘大、NTT関東を経て86年、ドラフト1位で広島に入団。1年目から2ケタ勝利をあげてリーグ優勝に貢献し、新人王に輝いた。MAX150キロのストレートを武器とする本格派右腕として、その後も広島の投手陣の要として活躍。95年に日本ハムにトレード移籍し、技巧派リリーフ投手に転じた。98年にダイエー(現ソフトバンク)に移籍し、2連覇に貢献。2002年に現役引退。ダイエー、ソフトバンクコーチを経て、07年から石川ミリオンスターズのコーチに就任した。

★携帯サイト「二宮清純.com」では、「ニッポン独立リーグ紀行」と題して四国・九州アイランドリーグ、BCリーグの監督、コーチ、選手が毎週火曜日に交代で登場し、それぞれの今をレポートします。
 今回は石川・長冨浩志コーチのコラム「山崎よ、冷静な心をもて!」です。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
◎バックナンバーはこちらから