9日、第79回都市対抗野球大会の決勝が東京ドームで行なわれ、新日本石油ENEOS(横浜市)と王子製紙(愛知・春日井市)が対戦。4−1で新日本石油が黒獅子旗を手にし、13年ぶりの快挙を果たした。
 都市対抗最多となる8度の優勝を誇る新日本石油と4年前の初優勝以来、2度目の頂点を狙う王子製紙の試合。先に主導権を握ったのは新日本石油だった。初回、無死満塁から3点を奪い、早くも王子製紙の先発・蓬莱伸哉をマウンドからひきずり降ろした。

 なおも無死満塁のチャンスの新日本石油。しかし、王子製紙2番手の小町裕貴がその後をピシャリと抑える好投を披露した。そしてそれ以降、新日本石油の打線から快音がパタリとやみ、4回まで小町の前に無安打に抑えられた。

 一方、王子製紙の方も2回裏に1点を返したものの、3回以降は再び新日本石油の先発・清見賢司から追加点を奪えずにいた。

 再び試合が動いたのは6回裏。王子製紙が無死からランナーを出すと送りバントをきっちりと決めてランナーを得点圏に進めた。さらに次打者のセンターフライで2死ながら三塁とした。

 ここで新日本石油の大久保秀昭監督は2番手に左の廣瀬繁を上げた。この采配が見事に的中する。王子製紙、3番・湯浅貴博は廣瀬の鋭く落ちる変化球に思わず反応してしまう。必死にバットを止めたが、審判は空振りの三振を宣告。新日本石油はピンチを切り抜けた。

 ピンチのあとにチャンスあり。7回表、新日本石油は1死二塁とし、ダメ押しとなる追加点を狙った。王子製紙はここで左打者に対し3番手に奥村孝一を送った。次打者は一塁ゴロに倒れるも、その間にランナーは三塁へと進む。ここで王子製紙に痛恨のミスが出た。奥村の暴投で三塁ランナーが返り、新日本石油に待望の追加点が入った。

 そして3点リードで迎えた8回裏、新日本石油はメジャーリーグからも注目され、今年のドラフトでは最大の目玉とされているエース田澤純一をマウンドに上げた。田澤は150キロ近くのストレートと落差のあるフォークで三者凡退に切ってとった。

 そして、いよいよ最終回。マウンドに上がった田澤は大きく息を吐いた。簡単に2死を取り、優勝まであと一人と迫る。ここでストレートが内に入り、死球でランナーを出したが、田澤は全く慌てなかった。フルカウントからの8球目、緩い変化球で打ち取った打球が高々とセンターへ上がる。センターの前田将希がそのボールをがっちりとグラブに収めた。

「やっと日本一になりました! (チームに)恩返しができました」
 田澤が満面の笑顔でインタビューにそう答えると、東京ドームが歓声に沸いた。昨年秋、ドラフト上位候補と言われながら不甲斐ない成績を悔い、「恩返しがしたい」と自らチーム残留を決意した田澤。その願いが叶った瞬間だった。