TAKUMI&FISHBOYのLegitコンビが2年連続で大賞受賞! ~D.LEAGUE~
26日、「第一生命 D.LEAGUE AWARDS SHOW 2023-24」が東京・虎ノ門ヒルズのTOKYO NODEで行われた。最優秀選手賞にあたる「MVD OF THE YEAR」(MVD)はCyberAgent Legit(サイバーエージェントレジット)のリーダーTAKUMI、最優秀ディレクターを決める「MOST CREATIVE DIRECTOR」(MCD)にはLegitのFISHBOYが2年連続で選ばれた。
チャンピオンシップ(CS)ファイナルで敗れ、初のリーグ制覇こそ惜しくも逃したが、レギュラーシーズン連覇は史上初の快挙である。そのLegitのリーダーTAKUMIとFISHBOYディレクターがそれぞれ“シーズンNo.1”の称号を手にした。
昨季MVDを受賞した際には「この賞を獲るのが今年の目標だった」と語っていたTAKUMI。あれから約1年が経ち、彼のリーグ内、チーム内における立ち位置も変わったように思う。
「目標としている賞ですし、受賞でき光栄です。でも2年連続ということに関しては、今シーズンそこまで意識をしていませんでした。チームでの優勝を目標に戦っていました。自分が前に出るというより、みんなの良さが出るようにと考えていました。その結果、いちプレーヤーとしても評価していただけたことがうれしいです」
フォア・ザ・チームの姿勢を崩さないTAKUMIにあえて「今季のチームMVDを選ぶなら?」と意地悪な質問をした。すると彼は「いやぁもうそれは無理ですよ、本当に全員ですね。1人1人に頼りましたし、誰か1人欠けたら(優勝は)できなかった」と答えた。
D.LEAGUEに参入した1年目からリーダーを任されている。「最初の頃は“自分はみんなに支えてもらうリーダーだ”と自覚していた。引っ張っていくリーダーではないと。全くそんなことはない。今シーズンはTAKUMIがみんなを引っ張っていると明らかに感じる場面が何度もあった。彼はリーダーとしての自覚を持ち始め、それが行動や言葉に伴っている。これが今シーズンの変化と成長だと思います」とはFISHBOYディレクターの談だ。
それを受けて、TAKUMIは「うれしいです」と噛み締めるように言った後、自らのリーダーシップについてはこう説明する。
「リーダーとしての自覚はどんどんついていきました。これだけ素晴らしいダンサーのいるLegitだからこそ、チームワークが必要で、自分のリーダーとしての役割にすごく責任があると思っていました。でもみんなが自分をリーダーにさせてくれた。発言しやすい環境をつくってくれて、自分が示した方向を向いてくれる。みんながいたからこそ、自分がよりリーダーしているように見えたのかなと思います」
自分のリーダーシップに関しては謙遜したが、チーム力に対しては「完成されたなと確信できるくらい良い状態になっていたと思います」と自信を覗かせる。今季は開幕から11連勝。ROUND.13で敗れたため無敗の優勝はできなかったものの、圧倒的な強さを示した。涙のCSファイナルからは17日間が経過していた。
「優勝という結果を獲れなかったことに対しての悔しさはありますが、結果だけを見れば昨シーズンと同じ。でも体感としては、得られたものが全然違う。チーム状態も全く違うものになっている。本当に自信を持って、昨シーズンを超えられた1年だったと言えると思います」
MVD受賞の檀上では「D.LEAGUEをもっと世界に、たくさんの人に届けられるよう頑張ります」とコメント。「世界に」という言葉の真意を訊ねると、主語は自分よりもチームに向けられた。
「シーズン中に出させていただいたBGT(イギリスのオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出場したりして、メンバーの国際意識がすごく強くなりました。既に海外で仕事をしているメンバーもいる。メンバーが世界各地で大会に出たり、ショーをやったり、講師を任されたりするスター軍団になっていきたい」
そのスター軍団における一等星に――。彼の潜在能力に期待する1人がFISHBOYディレクターだ。
「必ずものすごい人になると思います。僕は各メンバーに対してもそう思っていますが、TAKUMIに限った話をしますと、彼は文化のひとつの価値基準を変えるくらいの人材になると信じています」
そのTAKUMIと同じく2季連続の栄誉に浴したのがFISHBOYディレクターだ。まだ4季目ではあるものの、2季連続も通算2度目も史上初である。
「昨年は素晴らしいディレクターがたくさんいる中、自分が選ばれるとは思っていなかった。今年はCSで負けてしまったことで反省点が胸の内に満ちていたので、(受賞を)期待する余裕がなかったのかなと思いました。ただCSで負けたからといって、これまで積み重ねてきたものが無駄ではなかったと、この賞をいただいて、改めて感じることができました」
リーダーのTAKUMIは「メンバーは同年代なのでコミュニケーションは取りやすい。その中で1人だけディレクターという立場で、僕らに言えない悩みも抱えていた。何よりほとんどの作品のディレクションを担当してくれた。その仕事量は計り知れない。だからこそFISHBOYさんの受賞はうれしかったです」と彼の負担を慮りつつ、受賞を自分事のように喜んだ。FISHBOYディレクター自身はその功を自分だけの手柄とは言わない。
「僕はディレクターとしての役割を果たしただけ。チームのメンバーだったり、アシスタントとして手伝ってくれたメンバー、スタッフだったり、全員で獲った賞だと、今シーズンは特に感じました」
レギュラーシーズン2連覇、CSで2季連続ファイナル進出、BGTでもセミファイナルに進んだ。ディレクターとしても十二分に胸を張っていい成績のように映る。
「今シーズン、ROUND.0で(観る前も後も皆さんにワクワクしていただきたいに加え)3つの誓いを立てました。1つは海外挑戦、2つ目はシーズン完全優勝、3つ目はワンマンライブ。そのうちの2つは叶えたんですが、残りの1つはあと1票差で果たせなかった。そこまでは自分を褒めたいのですが、あと1票を取れなかったのは、僕の始まる前の準備不足に至るなと感じました。もちろんレギュラーシーズンが始まる前からCSのことを考えいたはずなのですが、そこに穴が何個かあったと感じています。シーズンが始まってしまえば、精一杯やるしかない。その前段階でディレクターである自分がもっと準備できたと反省しています」
FISHBOYディレクターの口からは他者への感謝と、自責の言葉が目立つ。CS前、FISHBOYディレクター曰く「イライラしてしまった」ことがあったという。お笑い芸人の明石家さんまの言葉を用い、「イラッとするということは自分が偉いと思い始めていた」と当時の心境を分析する。
「いつの間にか自分が偉いと勘違いしていた。それが反省点です」
それはチーム結成4シーズン目にして初のことだった。もちろんLegitのメンバーはFISHBOYディレクターを責めていない。リーダーのTAKUMIが代表して「それが起こり得るだけの仕事量と負担がいっぺんにいってしまっていた」と言い、こう続けた。
「その後、チームで話し合いました。FISHBOYさんは(アワードの)壇上で『迷惑をかけた』と言っていましたが、本当に迷惑をかけていない。逆にもっとかけて欲しい(頼って欲しい)くらいの感覚です」
FISHBOYディレクターは改めて、この1年を振り返り、「キラキラしていた1年でした。メンバー、私、スタッフ、オーナー企業全部が頑張った結果だと思っています。実りがあり、後ろを振り返れば積み重なりが感じられました」と手応えを口にする。その積み重なりのひとつにメンバーの成長がある。一例を挙げてもらった。
「メンバーの話し方が変わりました。誰かに伝えようとする姿勢がダンスパフォーマンスだけではなく言葉にも表れてきている。それはメンバー間だけだったものが、徐々に外へ向けられていった。ロジカルな考え方、それを伝えようとする姿勢が醸成がされてきたと感じます」
来季はあと一歩届かなかった頂点に再び挑む。
「CS制覇はまだ成し遂げられていない。結果はこだわりつつ、優勝の先にあるものだったり、各々ダンサーとしてキャリアをより良くしていくためにもっと頑張りたいと思います」(TAKUMI)
「他のチームが素晴らしいので、何も安心していられない。他チームの進化のスピードは本当に早い。私たちもそこに負けないよう頑張るのみです」(FISHBOYディレクター)
SEGA SAMMY LUX(セガサミー ルクス)のリーダーTAKIは「MOST FAV DANCER」、LUXも「MOST FAV TEAM」に2季連続で輝いた。その一方、「BEST SKILL」を受賞したLIFULL ALT-RHYTHM(ライフル アルトリズム)のCalinはチームとしても自身としても初のアワードで賞を受け取った。
「うれしいです。昨シーズンはアルトリで初のレギュラーシーズンのMVDをもらうことができました。今シーズンはアワードでまた選んでいただけてうれしいです。チームとしては、なかなか勝てていなかった。ステージ上から見るみんなの顔が笑顔で、それがうれしかったです」
実はCalin、11日前のKADOKAWA DREAMS(カドカワ ドリームズ)のワンマンライブ『THE GREATEST SHOW』で、ALT-RHYTHMのKarimと2on2バトルに参加し、優勝している。今回も「BEST SKILL」で賞金を手にし、この短期間で荒稼ぎした。それについて聞くと、「ウチはよく食べ、よく飲むチームなので、みんなで美味しいご飯を食べたいなと思います」と笑顔で答えてくれた。
スキルへのこだわりについて、Calinは「私はテクニックを見せる踊りというよりは、その音や空間を大事にしています」と言い、こう続けた。
「バトルであれば対面している相手、ショーだったら目の前にいるお客さんの空気を感じて踊る。それがみんなに伝わることで、私の踊りを評価してくれたり、好きでいてくれたりするのかなと思っています。私自身はみんなに楽しんで見てもらいたいという想いが強いです。バトルもショーもどちらも好きですし、どちらも考えて踊っています。ショーではCalinが踊る作品ではなく、この作品の一部になりたい、と思っています。バトルの場ではCalinとして立っている。自分を魅せなきゃいけない。魅せる相手は対戦相手? ジャッジ? 観ている人? そう考えながら踊っています」
今季のALT-RHYTHMを振り返ると、勝ち星に恵まれず、13チーム中12位でCSに進めなかった。
「勝てる作品にしようというフォーカスの向け方というよりは、自分たちの大事なものはブラさず、どうやったら伝わるかを考えていました。勝つ負けるよりも、私たちの作品はそのテーマをどれだけ2分15秒の時間で伝えられるか。それは見てわかりやすいのか、心で感じやすいのか。それをどうやったらダンスで表現できるかにフォーカスしてつくっていました。“どうやったらもっとわかりやすくなるだろう”と、もがきはあったんですが、そのおかげでチームは強くなった。負けてはいたけど、それに対して落胆するメンバーはいなかったと思います」
CSの戦いは会場で見守った。
「進んだ6チームしかステージに乗れない。あそこになんで自分たちがいないんだろうと思う悔しさもありつつ、“自分たちはこうやって驚かせたい”というポジティブな感情が湧いていきました。それとは別に一観客として、Dリーガーのパフォーマンスを観てすごく楽しかったです。D.LEAGUEのダンサーはスペシャル。その中に自分もいることがうれしいし、光栄だし、幸せだなと感じました」
既に来季に向けた作品づくりが動き出しているという。
「来季はチームが増え、試合数が増えて長い戦いになる。オフシーズンからはリハーサルが始まるので、より長期戦になるけど、しっかり集中力を保ちながら、楽しみたいですね。今、苦しんでおけば、シーズンが始まれば楽になるかもしれない。未来への投資だと思って頑張ります。ガムシャラに今だけを見るのではなく、先を見据えながらみんなで高め合っていきたいです」
「ダンサーが輝ける場所」を創るためにスタートしたD.LEAGUEは4季目を終えた。
「誰かに貢献するとか、感動を与えるというプロとしての精神を植え付けられる素晴らしいステージ。誰かに口で言われるだけではプロの選手は育たないんです。こういう勝負の場、ステージがあり、お客さんを呼べる場所がある。そのおかげで若い子たちのマインドが変わってきていると感じます。どんどん醸成されていけば、世界に行った時、ビックリすると思います。海外にサプライズを与えられるステージだと思います」(FISHBOYディレクター)
「ありがたいこの場を大事したいと思っています。リーグを盛り上げたいと思うし、何よりアルトリというチームと一緒に成長していきたい。誰にでもできることではないので、そこには責任があります。リーグとアルトリを成長させて、いろいろな人に知ってもらわなければいけないと思っています」(calin)
平野岳史CEOは「ダンスの素晴らしさを伝えていくために毎シーズン、少しずつルールを変えてきています。来シーズンはもっと多くの人が分かる基準に変えていこうと思っています。サッカーで言うVAR(ビデオ判定)に近いものを採り入れる方向性を考えています」と来季に向けた施策を口にし「スキルアップために我々もDリーガーをサポートしていきたいと思っています」と語った。神田勘太朗COOは「子どもたちが夢見るD.LEAGUEのシーンを、みんなと一緒につくり続けていきたいです」と会場に集まったDリーガーたちに呼びかけた。来季の開幕は10月13日、List::X (リスト エクス)が参画し14チームで優勝を争う。
◆受賞者・チームはこちら
【MVD】
TAKUMI(CyberAgent Legit)
【MCD】
FISHBOY(CyberAgent Legit)
【MOST FAV DANCER】
TAKI(SEGA SAMMY LUX)
【MOST FAV TEAM】
SEGA SAMMY LUX
【MUSIC OF THE YEAR】
DYM MESSENGERS『In my eyes/feat.maco marets&reina』
【BEST SKILL】
calin(LIFULL ALT-RHYTHM)
【BEST BOUT】
CyberAgent Legit vs. KADOKAWA DREAMS ROUND.12-5th MATCH
(文・写真/杉浦泰介)