第207回 オーバーエイジは不要! この世代で真っ向勝負を

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 パリ五輪開幕まで約1カ月となりました。直近のニュースだとバレーボール女子日本代表がネーションズリーグで銀メダルを獲得しました。この勢いを維持して、パリに向かってほしいです。たくさんの競技が拝見できるのが五輪の楽しみの1つです。今から開幕が待ち遠しいものです。

 

 厳しい組み合わせ

 

 さてさて、本題のサッカーについて語りましょう。まずは男子のU-23日本代表から。マリ、パラグアイ、イスラエルと同じグループDです。パラグアイは南米予選1位で通過してきました。マリはこの3月に親善試合を行ない、1対3と敗戦を喫しました。イスラエルは昨年のU-20W杯ではありますが、3位に入るなど若手の成長が著しい国です。一部では、日本が属するD組が“死の組”“地獄の組”と報じられています。

 

 実際、どの国も日本から勝ち点3を奪うことを見積もって戦ってくるでしょう。もちろん、こちらも勝ち点3を計算し、1位でグループリーグ通過を狙っています。ここで気を付けてほしいのは、23歳以下の若い選手たちを型にはめすぎないこと。チャレンジ精神がある選手たちをうまくコントロールし、良い方向に促すべきでしょう。

 

 6月12日は、U-23アメリカ代表(パリ五輪ではA組)と強化試合を行ない、2対0で勝利しました。やる気満々で臨んだ日本と少々様子見の感が強いアメリカといった構図でした。日本はU-23アジアカップに招集できなかったFW斉藤光毅を左ウイングとFW水戸舜介(ともにスパルタ・ロッテルダム)らをテストできました。アジアカップで10番を背負ったFW佐藤恵允(ヴェルダー・ブレーメン)もいます。ウイングの競争は激しさを増していて、7月3日のメンバー発表では誰が選ばれるか楽しみです。

 

 「ボロボロに言われても経験こそが宝」

 

 男子といえば、オーバーエイジ(OA)の話題が常です。僕は、OAは不要だと考えます。この世代の選手たちで戦ってきて、連係面も構築されています。ここでOAがギリギリに合流して、“オレもなにかしなくちゃ、なんかやらなくちゃ”と力み過ぎて空回りするパターンもあるし、短期間で溶け込むのは容易ではありません。

 

 報道を見るに、ボランチの遠藤航(リバプール)や谷口彰悟(アルラーヤン)、板倉滉(ボルシアMG)らセンターバックを中心にリストアップしているようですが……。いやあ、僕はやっぱりOAの活用は見送っていいように思います。若い選手がひとりでも、世界のフィジカルコンタクトやスピード感を肌で感じることの方が、よほど日本サッカーのためになります。OAを使って五輪を勝ち進むよりも、たとえグループリーグ敗退の憂き目にあったとしても、23歳以下の選手たちに経験を積ませる方がかえってくる恩恵は大きいと考えます。“この世代で真っ向勝負してこい! ベストを尽くして戦って、ダメでボロボロに言われたとしても選手たちにとっては世界の大舞台を肌で感じることはものすごく宝になるんだから”というのが僕の本音です。

 

 なでしこは8割の可能性で決勝へ

 

 さて、女子日本代表(なでしこジャパン)に話を移しましょう。なでしこも相当おったまげるグループに入っています(苦笑)。スペイン、ブラジル、ナイジェリアと同じグループC。昨年夏のオーストラリア・ニュージーランドW杯でスペインは女王に輝きました。しかし、なでしこジャパンはグループリーグでスペインにこの大会で唯一土を付けました。それも4対0と圧勝しました。宮澤ひなた(マンチェスターユナイテッドWFC)の俊足を生かした高速カウンターが面白いように機能しました。

 

 厳しい組み合わせなのは事実ですが、さほど心配はしておりません。なでしこジャパンはショートパスでもカウンターでも崩せるし、長短の両レンジからのシュートが狙えます。ワールドカップ優勝経験国と世界のビッグクラブで主力を担う選手が多いためか、攻撃のバリエーションはかなり豊富だと評価しています。決勝には80%くらいの確率で進むのではないかなと予想しています。

 

 男子も女子も決勝を除き中2日で大会は進行します。厳しい戦いですが、選手たちには頑張ってほしいものです。

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。

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