流れを変えた交流戦

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 6月のプロ野球は交流戦を東北楽天が20年目にして初優勝しました。選手個人が力を発揮した結果かと思います。ただ首位・福岡ソフトバンクもシーズンの勢いのまま交流戦でも勝ち越しており、4位の楽天(6月30日現在)としてはまずはクライマックスシリーズ(CS)に照準を合わせることが現実的かと思います。今江敏晃監督は私の母校PL学園出身ですし、頑張ってもらいたいものです。

 

 交流戦のMVPには北海道日本ハムの水谷瞬選手が打率4割3分8厘、3本塁打、13打点の活躍で選ばれました。打率は交流戦最高記録でした。実は彼がプロ1年目の時、私は香川オリーブガイナーズ監督。ソフトバンク3軍と試合で対戦したことが何度かありました。水谷選手がまだ粗削りではあったものの、身体が大きく身体能力の高さは光っていましたね。ただ当時はなかなかボールがバットに当たらず、細かいことが得意ではない印象でした。

 

 そこから数年が経ち、日本ハムのスカウティングが彼の能力を買い、現役ドラフトで加入しました。また水谷選手も与えられたチャンスを見事に生かした。起用した新庄剛志監督の素晴らしいですね。昨季の細川成也選手(横浜DeNA→中日)、大竹耕太郎投手(ソフトバンク→阪神)らに続き、現役ドラフトでのブレイクが期待されます。今後は水谷選手本人の伸びしろにかかってくるでしょう。

 

 私の古巣カープは交流戦で順位を上げ、セ・リーグの首位に立ちました。大瀬良大地投手、床田寛樹投手をはじめ投手陣が安定しており、チーム防御率は両リーグトップの2.05です。打線は新外国人選手がケガで退団するなど、補強の効果が表れなかった。ただ日本人選手からすればチャンスとも言えます。小園海斗選手、末包晃大選手、矢野雅哉選手らカープの将来を担うであろう選手たちが少しずつ育ってきていると感じています。注目は右の大砲として期待される末包選手。ケガなどでまだレギュラー定着はできていないものの、彼の力を持ってすれば年間20~30本塁打を打てる。各チームを見渡しても、年間20、30本打てるバッターは貴重な存在です。

 

 今季はバイプレーヤーの活躍も目立ち、チームが粘り強い印象です。39歳の代打の切り札・松山竜平選手が存在感を示しています。代打通算安打で私の記録(108)を抜き、113本まで伸ばしていると聞きました。彼も粘り強い打撃と現役生活。私は35歳で引退しましたが、松山選手にはできるかぎり現役を頑張ってもらいたいですね。彼をはじめ、守備の矢野選手などスペシャリストの活躍も目立ちます。

 

 好調の投手陣では大瀬良投手が6月7日の千葉ロッテ戦でノーヒットノーランを達成しました。三振はわずか2つと打たせて取るピッチング。守備陣がヒット性の当たりを抑え、大記録をサポートしました。球持ちがよく腕がしっかり振れている。下半身がしっかりしている証拠でしょう。ストレートとカットボールの見分けがつきにくく、インサイドに厳しいボールを放れています。若い時はストレートで押す印象がありますが、コントロールが安定し、内外をうまく使う投球術ができています。先発はいかにゲームメイクできるかが大事です。今季の大瀬良投手は防御率0点台(0.80)と安定し、4勝負けなし。今後の活躍にも大いに期待しています。

課題を見つめ直す

 さてセガサミー野球部は、6月19日には巨人の2軍とプロ・アマ交流戦を行いました。PL学園の後輩にあたる吉村禎章編成本部長、桑田真澄2軍監督とも話すことができました。試合の方は、2軍から1軍半クラスの選手が出ていましたが、そのクラスのピッチャーから2ケタ安打を奪い、4対2で勝てたことは好材料と言えるのではないでしょうか。大勢投手の球は久々に生で観て、その球威にビックリしました。ただあれだけの球を放るということは身体にも負担がかかるのでケガが少し心配ですね。

 

 セガサミーは日本選手権に向けて、立て直しの段階です。社会人野球では日本製鉄鹿島がJABA北海道大会を優勝しました。彼らも都市対抗の本戦出場を逃しましたが、モチベーションが下がっている中で中島彰一監督の手腕が光ります。この時期は勝ちグセを付けていくことが大事。今はセガサミーの選手たちと、いろいろな練習プランを考えながら取り組んでいるところです。

 

 都市対抗の連続出場は途切れてしまいましたが、日本選手権を見据えながら、オープン戦を通じ、個々がどう感じていくか、チームで同じ方向を見ていけるかがカギを握るでしょう。予選で敗退した瞬間はチームがバラバラになるリスクがある。もう一度、意思疎通を図り、同じ方向を見て、チームとしてやるべきことをやっていく。オープン戦では主力を欠いても勝ち続けることを重要視していきたいと考えています。

 

 都市対抗予選では、いまひとつチームとして機能しなかった。そこを我々スタッフ陣が見直し、徹底的に詰めていくことも大事だと思っています。もちろん選手たちも内容のある練習をやっているはずですが、もう一度チームとして見直し、短期決戦で結果を出せるように取り組んでいきたいと思います。

 

 今年は4年前の優勝チームHondaに加え、昨年の日本選手権優勝の大阪ガス、準優勝のHonda熊本という強豪チームすら本戦出場を逃しています。社会人野球では予選から力を発揮しなければいけない。そこまでに積み重ね、逆算していくことが必要です。負ければ何かが足りないということ。その課題を洗い出し、修正していくしかありません。7月は、都市対抗本戦に出場できなかった関東のチームとオープン戦を組んでいます。いささか寂しくはありますが、日本選手権に向けて前進あるのみです。

 

 7月19日からの都市対抗野球本選には、セガサミーからも中川智裕(明治安田)、荘司宏太(東京ガス)、尾﨑完太(JR東日本)の3選手が補強選手で出場します。各チームのいいものを吸収し、より一層のレベルアップに期待したいです。日本代表を含め、いろいろな選手と交流することで経験値は上がる。他チームとはいえ都市対抗という大きな舞台を経験することで、彼ら自身の今後の人生にも生きてくると思います。皆さん、ぜひセガサミーの選手たちへの応援をよろしくお願いします! それでは今月はこのへんで。

 

<このコーナーは毎月1日更新です>

 

西田真二(にしだ・しんじ)プロフィール>
1960年8月3日、和歌山県出身。小学3年で野球を始める。PL学園高、法政大学を経て、83年にドラフト1位で広島カープに入団。高校時代は78年夏にエース&4番として甲子園優勝に貢献した。大学時代は5度のベストナインに輝くなど、3度のリーグ優勝に導いた。プロ入り後は左投げ左打ちの外野手として、91年のセ・リーグ優勝に貢献するなどカープ一筋13年で現役を終えた。現役引退後は野球解説者を経て、カープ、四国アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)の愛媛、香川などで後進を育成。20年よりセガサミー野球部の監督を務める。

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