ストロー級・箕輪ひろば&フライ級・和田竜光、トップ戦線生き残りかけた一戦へ 〜ONE〜

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『ONE Fight Night 23: Ok vs. Rasulov』(7月6日、タイ・ルンピニースタジアム)に出場するストロー級・箕輪ひろば(総合格闘技道場STF)とフライ級・和田竜光(TEAM WADA)のMMAファイター2人が3日、オンライン取材に応じ、試合への意気込みを語った。

 

 現在3連敗中の箕輪は同じく3連敗中のジェレミー・ミアド(フィリピン)と対戦する。共に上位戦線生き残りを賭けた戦いとなりそうだ。この試合に向け、25歳の箕輪は練習環境は変えていないが、取り組み方を変えているという。
「若き頃と言うと、歳を食ったみたいになっちゃうんですけど、10代前半か後半の周りにトガリ散らしていた感じの頃のメンタルを呼び戻さないといけないなというふうに思っています」


 22歳から挑んでいるONEでの戦績は2勝3敗だ。「頭良く戦って2戦目まで調子良くできた。3戦目は負けましたが、いい感じで持ってこれていた。4戦目のボカン(・マスンヤネ=南アフリカ)と(グスタボ・)バラート(キューバ)でも同じような感じで挑んだ。それで悪くなっていた部分があった。今回は頭じゃなくて気持ちで戦おうと思っています。ガリ勉みたくなっていて、応用問題に対応できていなかったですね」。

 

 3連敗はいずれも判定負け。中には納得のいかないジャッジやレフリーの対応もあったという。ONEの採点基準、ジャッジにもアジャストしていかなければいけない。必要なのは「やっぱり決定力ですね。一本なり、KOなり、決定力」と言い、こう続けた。
「ジャッジに判断をさせないという。きちっと勝たなきゃいけないというプランニングをつくらなきゃいけないんだなというふうには改めて思いました。先ほどの話に付随してなんですが、ここ何戦かは勝つためにリスクを負ってまでフィニッシュを狙いにいかなかったんですね。今回はそうじゃなくて、リスクが負ってでもフィニッシュを取りに行かなきゃいけないんだなというふうに思っています」

 

 ミアドに対する印象は「今日(3日)も予備計量だったんですけど、その前に朝から走っていて、すごい偉いなと思いました。ちょうど会ったら、話まではいかないけど、握手して、“悪い人ではないんだろうな”と」と述べた。ストライカータイプに対し、どう試合を組み立てていくのか。
「もちろん僕はスクランブラー(際の攻防を得意とするファイター)なので、寝かして、ゴチャゴチャした展開の中で一本を取りたい。別にストライキング(打撃)でも負ける気しないです。今までは相手の得意なところでは戦わないという戦法だったんですが、今回はそこも逃げずに戦おうかなと考えています。もうガッチリ相手の得意なところで勝負して、さらに自分の強いところでも勝負するという感じです」

 

 この試合でストロー級上位戦線に生き残れば、ベルト争いも見えてくる。箕輪自身は「もちろん今回きちっと勝ってアピールできたら、僕は正直、ベルトは後からついてくるもの」と考えている。優先順位は1度敗れたジャレッド・ブルックス(アメリカ)へのリベンジだ。「ブルックスをボコボコにしたい。彼にきちっと負け分を清算させてもらって、その後、またベルトが無いのであればベルトを取りに行くという筋書きは立てています」
 箕輪の試合の1カ月後(8月3日)、ルンピニースタジアムで行われる『ONE Fight Night 25: Brooks vs. Balart』で、現ストロー級MMA1位ブルックスと同3位バラートによる「ストロー級暫定王座戦」が組まれている。

 

 改めて、ONEの魅力について聞くと、「それはもう外資でもらえるので、円安バンザイです」と笑った。
「ぶっちゃけて言うと、国内でもらっている選手たちよりも、いい額をもらっているので。最初はそれを単純に嬉しいなと思っていましたが、それくらいもらっている以上、それなりの仕事はしなきゃいけない。いくら円安といえど、3連敗していると収入が厳しい。今回はきちんと勝って、(パフォーマンス)ボーナスも狙いにいくつもり。稼いで頑張らなきゃなという感じです」


 箕輪はジュニアの子どもたちに格闘技を無料で教えたり、2022年から実施しているひとり親家庭の子ども応援のパントリー、ジュニア大会開催という活動も継続している。
「6月にもパントリーをやらせてもらったんですけど、ちょうど僕のファイトキャンプに重なったので直接参加できなかったんですが、開催はさせてもらえた。試合もおそらく年内できるかなという感じではあるので、まだまだ継続してやっています」
 この活動が自身のファイトへのモチベーションになっているのも事実だ。 
「夢だなんだを語っている人間が3連敗して腐るわけにはいかない。やっぱりどんな状況でも戦わなきゃいけない。そう言っている以上、僕も『3連敗したので辞めます』とか軽々しく言えない。最後の部分の砦にはなっていますね」


 以前、インタビューで箕輪は自身のMMAの成長度合いをラーメン屋に例えていた。12歳で現在の所属先である総合格闘技道場STFの門を叩いて10年の歳月が経った。ラーメンの味は変わったのだろうか?
「いや、とんこつなことは、たぶんとんこつではあるんです。“新しいジャンルのとんこつなんだ”というふうに、昔から来てくれている人にも思わせられるような、インタビューで“昔から変わらないね”というなかで実は“ずっと変わってるんだよ”みたいなことを言ったじゃないですか。その人たちでさえ『あれ、ちょっとなんか変わったね。けどこれならまた来るよ』と言ってもらえるレベルのものを提供できるようにしたいなと思っています」
 箕輪の“とんこつ味”が、ルンピニーのケージで、どう表現されるのかにも注目だ。

 

 日本時間6月16日の『UFC Fight Night: Perez vs. Taira』で平良達郎(THE BLACKBELT JAPAN)が“おたつロック”を披露し、フィニッシュに繋げたため、和田の技が改めてフィーチャーされている。この技については元UFC世界バンタム級王者のアルジャメイン・スターリング(アメリカ)も言及したと言われている。

「あれ(“おたつロック”による負傷)は、結構起こり得る事故なんです。狙って極められるかというと、相手の対応もあるので。ただ、ああいう事故は起こりやすい動きではありますね。アルジャメインも、『それで一本取れるんだったら、オレも使うぜ』みたいな感じだったんですが、相手のリアクション次第で、あぁなっちゃうんです」

 

 DEEPフライ級王座を2度獲得した和田。ONE参戦後は5勝5敗と黒星と白星を交互に刻んでいる。今回のシェ・ウェイ(中国)戦が1年4カ月ぶりの試合となる。「いつでも試合できる状況だった。いろいろあって、今のタイミングになった。ようやく試合できる。ただ、その分、たくさん練習をできたので、自分のレベルが上がっているという気はします。全体的な精度が上がり、“おたつロック”への理解度は深まっていった。対応された時のバリエーションも少しずつですはありますが増えています」。試合勘に不安はないようだ。
「むしろ“飢え”ですかね。その間、仕事がなかったのは自分にとって大変なこと。ようやく試合、“仕事だな”って感じですね」

 

 今回の“仕事相手”に対する和田の印象はこうだ。

「ストライカーなことは間違いない。彼が負けた試合も見せ場をつくった。実力がある選手なのは間違いない。今、ランキング入りしている選手たちの少しだけ下にいる。僕もそのくらいだと思うので、現状の価値は同じくらいの相手なので、ちょうどいい相手かなという感じですね」
 シェ・ウェイは現在2連敗中ではあるものの、ONEでの試合に限れば、8勝全てがKO勝ちという破壊力は要警戒だろう。「触ってみないと分からないところがあります。打撃を出して切るのが強い人もいるし、寝てから力強い人とかもいる。それもちょっと楽しみだな、と。力が強いとか、簡単にテイクダウンをできないことも頭に入れながら、試合をしたいと思います」

 

 現在の“職場”ONEの魅力について聞くと、「DJ(フライ級MMA王者デメトリアス・ジョンソン=アメリカ)がいること」と答えた。

「DJがいる時点で、この階級に関しては世界一の団体なんじゃないですかね。ストロー級も世界一だと思います。僕がここでチャンピオンになったら、世界一と言ってもいいと思います。UFCのチャンピオンよりもDJの方が強いと思います」

 

 そのONEに対し、感謝の想いもある。「いろいろなところでも言うんですが、ONEに契約してもらっていなかったら格闘技を続けていたかどうか分からない。“もういっちょやるぜ”と思えたのは、やっぱりONEのおかげ。あとは先ほど言ったように、この階級や下の階級(ストロー級)に関しても強い選手がいるから、上を目指していきたいというのはあります。やっぱり海外で、対外国人と戦う面白さというか、ロマンがあります」
 ONEの舞台に立つ多くの者が望むように“世界最強”の称号を目指すことが和田のモチベーションだ。 

 

(文/杉浦泰介、写真/©ONE Championship)

 

BS11では毎週木曜日23時に『ワールドファイトCLIP Supported by U-NEXT」を放送中! 7月11日(木)の放送では「ONE Fight Night 23」の模様も紹介される予定です。

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