五輪で確変状態に入るアタッカーは出現するのか
まずは先週木曜日に決まったW杯アジア最終予選の組み合わせについて。
どこも簡単な相手ではないし、特に、インドネシアには国としての勢いを感じる。序盤戦でひとつでも番狂わせを演じるようなことがあると、そのまま一気に突っ走ったりするかもしれない。
いずれにせよ、今回の最終予選が、前回大会よりも難しいものになることだけは間違いない。枠が広がったのになぜ? と思われるかもしれないが、今回の予選では、グループ4位までに入ればチャンスが残る方式となっている。ということは、CSを導入した日本のプロ野球同様に、終盤の消化試合が減る。ヘタをすると最下位で最終戦を迎えたチームであっても、結果如何では4位に滑り込むといった展開もありうるわけで、上位陣からすると終盤の草刈り場がなくなったことを意味する。
前回最終予選で日本は2敗を喫しているが、どちらの敗戦も、最初の対戦で喫したものだった。どのチームにも予選突破の可能性がある序盤戦は、それほどに危険なものなのだ。だとすれば、終盤まで多くのチームに突破の可能性が残る今回の方式が、日本にとってラクなものであるはずがない。
とはいえ、予選の強度が上がるのは悪いことばかりでもない。正直、敗退の可能性自体はかなり低い方式でもあるだけに、タフな終盤戦が日本の選手たちを磨いてくれることを期待する。
続いて前日発表されたパリ五輪のメンバーについて。オーバーエージ枠を使わなかったこと、有力視された選手の名前がなかったことで、はや本大会での戦いを悲観する声もあるようだが、おそらく、一番苦々しい思いをしているのは大岩監督だろう。
遠藤や久保、松木がいなかったこと以上にわたしが驚いたのは、18人の中に西尾、佐藤の名前があったことだった。2人とも、最終予選での働きぶりに関しては、申し訳ないがかなり下のランクに入れざるをえない。それでも大岩監督が選んだということは、最終予選の減点をもってしてもあまりあるだけのポイントを2人が持っていたということなのだろう。つまり、最終予選は、必ずしもメンバー選考の最終試験ではなかった。
だとしたら、彼ら以上にポイントを蓄積させていた松木のような選手を、大岩監督が呼びたくなかったはずもない。また、徹底的に勝負にこだわる姿勢を打ち出しているだけに、勝つための手はすべて打ちたかったはず。OA枠の補強が不必要だったわけがない。
ただ、以前にも書いたが、欧州のクラブにとって、五輪は明らかなお荷物になりつつある。まして、欧州選手権が質量ともにW杯に匹敵する大会に成長しつつある昨今、五輪のために選手を貸し出してもいいと判断するクラブは、減りこそすれ増えることはまずない。
そもそも、W杯よりはるかに過酷な日程を、W杯よりはるかに少ない人数で戦わせようとするIOCの姿勢には、唖然とするしかない。多くのチームがGKを2人登録で大会に臨むようだが、GKが退場処分を受けたチームは、控えGKなしで次の試合を戦うことになる。よからぬことを考える対戦相手が出てこないことを、IOCは祈った方がいい。
藤田、山本の中盤には力がある。最終ラインも安定感はある。求められるのは爆発力。大会期間中に確変状態に入るアタッカーが出現するか。そこが最大の焦点だとわたしはみる。
<この原稿は24年7月4日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>