現在、アイランドリーグ選抜の監督としてフェニックス・リーグ(秋季独立リーグ)参加のため宮崎に来ています。昨年、このリーグでアイランドリーグの試合を初めて観てから1年。監督としてユニホームを着て、この場所に戻ってくるとは予想していませんでした。

 普段の1日限りの交流試合と違い、フェニックス・リーグではNPBの各球団と連戦を重ねます。指揮する立場からすると、1試合で全選手の出場機会を与えなくてはいけないと気を遣う必要がありません。投手にしても1イニング限定ではなく、ある程度のイニングを放らせて力を試すことが可能です。野手も打席数を限定せず、フルイニング出て自分の持ち味を出すことができます。

 初戦となった7日の東北楽天戦はもったいないゲームでした。7回まで5−0とリードしながら、8回に一挙5点を失い、同点に追いつかれました。直後に2点を勝ち越したものの、抑えの上里田光正(高知)が最終回に2点を失い、再び同点。試合は7−7の引き分けでした。

 しかも同点に追いつかれたのはショート丈武(香川)のエラー。リーグではセーブ王に輝いた投手がリードを守れず、打撃部門2年連続2冠とリーグを代表する野手がミスを犯す。2人ともリーグでの経験は浅くないだけに、残念な結果でした。このフェニックス・リーグはドラフト指名直前にアピールする最後のチャンス。それだけに力んだ部分もあったのでしょう。

「NPBの2軍と互角の力はあるな」。これは昨年、初めてアイランドリーグの試合を見た時の第1印象です。それは1年たった今も変わっていません。むしろ、選手たちとシーズンをともに過ごす中で、彼らのキラリと光る部分がより目立つようになりました。

 ただ、さらに上のレベルを目指すためには、スカウトの目に留まるようなプレーをみせなくてはなりません。その点がアイランドリーグの選手たちに足りない部分と言えるでしょう。人にアピールするためには、まず自分の長所をしっかり掴むことが必要です。足で勝負するのか、力強い打撃で勝負するのか、あるいは速球で勝負するのか……。「これだ!」というものがはっきりすれば、盗塁を積極的に仕掛けたり、甘いボールは見逃さず打ちにいったり、自ずとアピールの仕方もうまくなってくるはずです。

 このフェニックス・リーグでは、セ・パ12球団の若手選手が一挙に集結します。たとえば、楽天では伊志嶺忠というルーキー捕手がマスクを被っていました。リーグ選抜は高知の飯田一弥がキャッチャーを務めましたが、伊志嶺と比べて何が勝り、何が劣っているのか。同じフィールドでゲームをすることで、相対的に比較ができるはずです。その上で、自分の伸ばすべき長所に気づいてほしいと願っています。

 最後にチームの振り返りをしておきましょう。後期は残り数試合まで優勝を争いながら、最後の最後で勝ちきることができませんでした。やはり、最終的に痛手となったのは投手陣のコマ不足。先発から抑えの上里田光正につなぐリリーフをそろえることができず、勝ちゲームを落としたことが、あと一歩優勝に届かなかった原因でしょう。

その一方で、西川徹哉は17勝、野原は15勝とシーズンを通じて安定した成績を残してくれました。来季に向けては投手、特にサウスポーを重点的に探したいと考えています。補強という観点はもちろん、左腕はNPBでも重宝されますから、このリーグで素質を磨けばドラフトの有力候補になるはずです。来季、3年ぶりの優勝を目指すためには、あと3、4枚投手を集めることは最低条件。トライアウトなどを通じて、埋もれた才能を見出したいと考えています。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸(元長崎監督)と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は千葉ロッテの内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。




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