いろいろなことが起きた1年が終わりました。監督代行を引き受けて臨んだ後期シーズンは18勝21敗1分の5位。途中までは勝率5割を超え、優勝を狙える位置にいただけに最後は力不足を感じました。

「気持ちの部分では勝て!」
 後期に入って、僕は選手たちに何度もこのことを強調してきました。正直言って、経験豊富な上位チームと比べると、長崎の選手たちは個々のレベルでは見劣りします。でも、チームがひとつになって強い気持ちで戦えば、互角の勝負ができる。それは後期の戦いを通じて、選手たちも理解してくれたのではないかと感じています。

 個人的には選手育成も地域密着の試みも、まずは試合に勝たなければ意味がないと考えています。チーム内での競争に勝ち、相手チームに勝つ中で選手は伸びていくものであり、強いチームだからこそ、地域のみなさんに応援してもらえるはずです。勝つためであれば、僕も先発、リリーフとフル回転することにためらいはありませんでした。

「練習からアピールした者はどんどん使う。そうでないものは使わない」
 選手たちにはこうも言ってきました。しかし、結果的にはレギュラーメンバーが固定され、チャンスでの代打、ピンチでのリリーフ不足に泣きました。レギュラーを脅かすような存在が控えにいなくては、チーム力は上がっていきません。選手層の差が最終的には上位との差につながったように思います。

 1年間戦ってみて、選手たちはそれぞれ自分の課題がわかったはずです。課題が明確になれば、このオフに何をすればよいか必然的に見えてくるでしょう。僕は秋季練習で選手たちに何かを強制するつもりはまったくありません。「練習をやりたい人間は、とことんやってほしい」。そう選手には伝えてあります。

 今年、そこそこの成績を残せた選手もそうでない選手も、来シーズンは非常に大切な1年になります。プロとして成功するかどうかの条件のひとつは、2年目に伸びるかどうかだからです。NPBでもどの世界でも、2年目で芽が出ない選手は長く生き残ることはできません。NPBのスカウトだって、一部の即戦力を除いては、選手たちの伸びしろを見て獲得します。2年目に急成長を遂げれば、注目度は増すはずです。そう考えると、このオフが非常に大事ということがわかるでしょう。選手たちには、今が自分の将来を左右する時期だとの意識を強くもってほしいものです。

 既存の選手の底上げはもちろん、チーム力を高めるためには補強も必要です。先日、地元・鎮西学園高校の庄崎龍馬選手が長崎セインツ入りを希望しているとの報道がありました。左のいいバッターだと聞いているので、もし入団が決まれば、チームの刺激になることでしょう。今後もトライアウト等を通じて、投打ともにチーム内の競争意識をあおるような選手を獲得したいと考えています。

 チームとしても来季は何より結果が求められる年です。優勝、そしてNPBに行ける選手をひとりでも多く出せるチームにしていきます。引き続き、応援よろしくお願いします。
 

前田勝宏(まえだ・かつひろ)プロフィール>: 長崎セインツ監督代行
 1971年6月23日、兵庫県出身。神戸弘陵学園高、プリンスホテルを経て、92年のドラフト2位で西武に入団。150キロを超える速球をひっさげ、96年にはメジャーリーグ挑戦を目指して海を渡る。メジャー昇格こそならなかったが、通算5年間、マイナーリーグでプレー。01年には帰国して中日にテスト入団する。その後、台湾、イタリア、中国と世界各地で野球を続け、05年からはアスピア学園でコーチ兼任投手に。補強選手として都市対抗野球出場も果たした。06年には岩手赤べこ野球軍団に移籍。ここでも都市対抗に出場した(登板機会なし)。今シーズンより長崎セインツに入団。後期シーズンより選手兼任で監督代行に就任した。今季の成績は33試合、9勝5敗5S、防御率1.90。


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