第794回 水谷瞬、現役ドラフトの一番星
プロに入った時から素材は一級品と聞いていた。しかし、ここまで大化けするとは……。
<この原稿は2024年7月15日号『週刊大衆』に掲載されたものです>
北海道日本ハムの水谷瞬がセ・パ交流戦のMVPに輝いた。打率4割3分8厘は、2005年に交流戦がスタートしてから最高。名前も一躍、全国区となった。
「最高の賞をいただけて光栄です。初めての交流戦でしたが、意識せずに1打席、1打席を大切にできたことが結果につながったと思います」
満面の笑みで、水谷は語った。
父親はナイジェリア人、母親は日本人。193センチ、99キロの偉丈夫だ。
2018年のドラフトで福岡ソフトバンクから5位指名を受け、石見智翠館高(島根)から翌19年に入団。だがソフトバンクでは5シーズンで1度も1軍の試合に出場できなかった。
昨年オフ、将来性とスケールの大きさを買われ、現役ドラフトで日本ハムに移籍した。これが幸いした。もしソフトバンクに残っていたとしても、層の厚い外野の一角を崩すことはできなかっただろう。
その意味では、水谷には運が残っていた。プロ野球選手は、“試合に出てナンボ”である。
現役ドラフトは22年シーズンオフからスタートした制度だが、成功例が多い。
たとえば今や中日の主砲とも言える細川成也。横浜DeNA時代は6年でわずか6本塁打だったが、昨年だけでチーム最多の24本塁打を記録した。
今年も好調で6月24日現在、打率2割9分6厘、8本塁打、30打点。貧打のチームにあって、ひとり気を吐いている。
野手の“大当たり”が細川なら、投手はソフトバンクから阪神に移籍した左腕の大竹耕太郎。5年で10勝とくすぶっていたが、昨年は12勝2敗、防御率2.26という好成績で、チームの18年ぶりのリーグ優勝に貢献した。今年もローテーションを守り、4勝4敗と健闘している。
NPBには、まだまだ“埋もれた宝”がたくさんある。未開発の“資源”に目を向けたい。