五輪の戦いはコンディショニングが生命線

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 圧倒されたとはいえ、悪くはない。

 

 パリオリンピックに臨むU-23日本代表は大会前ラストの強化試合として優勝候補のU-23フランス代表と対戦し、1-1で引き分けた。

 

 前半25分、相手のビルドアップを狙って藤尾翔太がボールを奪い、三戸舜介からパスを受けた藤田譲瑠チマが右足で流し込んで先制。だが後半3分、オーバーエイジ(OA)のアレクサンドル・ラカゼットにロングボールを頭で落とされ、それを拾った攻撃の要ミカエル・オリーズにミドルシュートを決められて1-1となる。その後も再三再四、ピンチを迎えながらも相手のミスにも助けられて何とか耐え切ったという試合展開だった。

 

 日本のシュートが数えるほどだったことに対し、フランスにはその5倍ほど打たれた印象。守備に時間を費やされ、ゴールシーン以外はフランスを脅かすような攻撃もできなかった。とはいえ優勝候補のレベルを肌で感じたうえで本大会に入れる意義は大きい。フランスを相手に引き分けという結果もポジティブに受け止めていい。

 

 強化試合はあくまで強化試合。内容が乏しくとも、本大会に向けてチーム全体でコンディションを上げていくことが肝要になる。

 

 オリンピックは過酷すぎる大会と言っていい。日本はグループステージにおいて第1戦(現地時間7月24日)U-23パラグアイ代表、第2戦(27日)U-23マリ代表、第3戦(30日)U-23イスラエル代表との日程になる。真夏の中2日でそれも18人という少ない登録メンバーで戦わなくてはならない(ルール変更に伴い、4人のバックアップメンバーとの入れ替えは可能)。準々決勝、準決勝も中2日、決勝のみ中3日の〝鬼スケジュール〟を乗り切るには、心身ともにタフに戦えるだけのコンディションをつくる必要がある。それこそがメダルへの最低条件だ。

 

 フランスとの一戦でも、大岩剛監督がここに気を配っていることは十分に理解できた。後半スタートからサブに置いていた細谷真大、西尾隆矢、大畑歩夢を、後半途中に佐藤恵允、川崎颯太を送り込み、終盤には三戸からトレーニングパートナーとして帯同するロス五輪世代の佐藤龍之介にスイッチした。登録メンバーで出場しなかったのはGK野澤大志ブランドンと、別メニュー調整が続いている荒木遼太郎のみだった。

 

 なぜ登録外の選手を出すのか、不思議に思う人はいるかもしれない。荒木に無理はさせられず、三戸のコンディション面を考慮すれば当然の判断である。

 

 筆者は12年前をふと思い出した。ロンドンオリンピック直前にU-23ニュージーランド代表と強化試合を行ない、関塚隆監督が登録メンバーの齋藤学ではなくサポートメンバーの山崎亮平を先に出場させた交代カードの切り方に対して、批判の声が上がったのだ。

 

 大会後、関塚監督にインタビューした際、こう打ち明けてくれた。

「齋藤のことで言えば、実はあのとき太腿裏に違和感が少しあったというのもあって、時間を考慮しました。ニュージーランド戦の前後にJリーグの試合があって、それから(強化試合の)ベラルーシ戦、メキシコ戦と続く。中2、3日で5試合をやることになるので、それを18人の本大会メンバーだけで回したら疲れが取れないまま本大会に向かわなきゃならなくなる。だから全体のコンディションを考えながら、そのうえで戦術や編成をどうやって固めていこうかと考えたんです」

 

 イギリスに入ってからもコンディションに気を配って、U-23ベラルーシ代表との強化試合では21人を起用。指揮官のマネジメントが実を結び、本大会ではメダルまであと一歩の4位という好成績を残すことができた。

 

 しかしながら本大会ではほぼメンバーを固定して戦ったことでU-23メキシコ代表との準決勝、U-23韓国代表との3位決定戦では疲労の色も濃かった。これは前回の東京オリンピックでも同様のことが言える。

 

 メダルを獲得できるかどうかのポイントは18人全員の力を使うこと。いろんな背景があるにせよ、大岩監督がOAを1人も呼ばなかった意図を感じなくもない。OAがいると、どうしてもそこに頼りがちになってしまう。しかしゼロであれば、逆にターンオーバーももっと大胆にやれるようにも思う。メンバー構成やフランスとの一戦を見ても、18人全員で勝つというメッセージを強く感じることができる。

 

 コンディショニングを制して、1968年メキシコオリンピック以来のメダルを。大岩ジャパンの戦いがいよいよ始まる――。

 

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