先月のドラフト会議、愛媛からは西川雅人がオリックスから5巡目指名を受けました。昨年は梶本達哉が同じくオリックスに入団しましたが、その時は育成指名。本ドラフトで評価していただいたことは非常にうれしく感じています。

 西川は大学時代から速球派としてNPBのスカウトには注目を集めていた存在でした。愛媛にやってきた時も評判どおり、素晴らしいストレートを放っていました。課題はコントロール。制球が定まらず自滅するケースも目立っていたようです。

 アマチュア時代、西川はほとんど先発で投げていました。しかし、彼のストレートを活かすには短いイニングのほうがいいのではないか。アイランドリーグにやってくるまで、少しブランクがあったことも考慮し、悩んだ末に愛媛ではクローザーを任せることにしました。

 結果的に、“クローザー西川”は本人にとってもチームにとっても吉と出ましたね。抑えが固定できたことで、愛媛では「西川につなげ」と投手陣が1つにまとまりました。後期優勝は投手陣の貢献が大きかったことは言うまでもありません。西川にとっても厳しい場面で投げることで、1球に対する集中力が増し、制球力がアップしました。

 印象に残っているのは、M1で迎えた香川戦。勝てば引き分ければ優勝が決まるゲームです。1点リードの8回からマウンドにあがった西川は味方のまずい守備をきっかけに連打で同点に追いつかれてしまいました。しかし、彼は慌てません。このイニングを最小失点でしのぎ、9回も走者を背負いながら洋輔、智勝の好打者を得意のフォークで空振り三振。この時点で愛媛は優勝が決定しました。

 ベンチに戻った西川をみるとプレッシャーから開放されたのか、男泣きをしていました。絶対に負けられないシビアなゲームでクローザーとしての役割を果たし、彼は一回り大きくなりました。オリックスも右のリリーバーとして大いに期待しているようです。1年間の愛媛での経験がきっとNPBの舞台で役立つと信じています。

 1軍で活躍できるかの分かれ道は「緩い変化球をいかに磨くか」でしょう。アイランドリーグでは基本的にストレートとフォーク主体の投球スタイルでした。しかしストレートとフォークのみで通用するほど、NPBは甘くありません。打者のタイミングをはずす第3のボールを武器にできれば、よりストレートが活きるはず。幸い、西川はスライダーやカーブも投げられます。これらのボールを早いうちにしっかり練習してほしいものです。

 愛媛は後期優勝を果たしたとはいえ、チャンピオンシップでは3連敗で香川に敗れました。敗因を一言で言えば、「あと1本が出なかった」。特に第2戦の9回裏、1点ビハインドながら一死満塁での打撃が明暗を分けました。結果は初球に手を出してホームゲッツー。逆転サヨナラの好機を逃し、チャンピオンシップの流れは大きく香川に傾きました。

 チャンスでの打撃は今年に限らず、球団創設以来の課題です。投手力はリーグでも1、2を争うレベルだけに、勝負強いバッティングを身につけることはチームにとっても、各バッターの将来を考える上でも必要不可欠でしょう。

 打撃担当の斉藤浩行コーチとは、この秋から改めて「初球に対する意識付け」を行っています。ピンチではピッチャーだってストライク先行で攻めたいはずです。当然、初球はストライクを取りにくる確率が高くなります。甘い球なら勇気をもって打ちに行くべきですし、そうでなければ勇気をもって見逃さなくてはいけません。ファーストストライクのボールをいかに絞り込めばいいのか。ベンチワークも含め、思い切って初球から振れる環境をつくりたいと考えています。

 昨オフに続き、今オフも多くの選手がチームを去りますが、来季は少数精鋭でなるべくメンバーを固定して戦う方針です。補強ポイントは俊足の内野手。攻守にスピード感を高め、ワンランク上のチームづくりを目指しています。来年こそはチームとしても選手個々にとっても最高の結果を出せる1年にしたいものです。愛媛のみなさん、今年1年、応援ありがとうございました。2009年も引き続き、よろしくお願いします。


沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げ、08年は悲願の初優勝(後期)に導いた。





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