なでしこ、初戦は黒星発進 ~パリ五輪・サッカー女子~

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 開幕を翌日に控えた26日(日本時間)、パリ五輪の大会第2日目の競技が行われた。フランス・ナントで行なわれたサッカー女子日本代表(なでしこジャパン)対スペイン代表の一戦は1対2でなでしこジャパンが黒星を喫した。試合は前半13分、FW藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の直接FKでなでしこジャパンが先制したものの、スペイン代表に22分、後半29分と失点を許し、なでしこジャパンはパリ五輪、黒星発進となった。次節は中2日でブラジル代表と対戦する。

 

 採用システムがちぐはぐ(ナント)

なでしこジャパン 1-2 スペイン代表

【得点】

[な] 藤野あおば(13分)

[ス] アイタナ・ボンマティ(22分)、マリオナ・カルデンテイ(74分)

 

 パリ五輪でなでしこジャパンは、スペイン、ブラジル、ナイジェリアと同じC組。パリ五輪、女子のサッカーはA、B,C組の各組2位以上と、3位チームの上位2チームがノックアウトステージへと進出する。

 

 なでしこジャパンの初戦の相手は、昨年ワールドカップ女王のスペインだった。

 

 厳しい言い方をすれば、この試合の戦犯は池田太監督だろう。スペインは慣れ親しんだ4-3-3の布陣で得意のパスサッカーを前半から披露した。なでしこはメインシステムの3-4-2-1(守備時は5-4-1)ではなく、4-4-2でスタートした。試合開始直後、攻撃時には3-4-2-1への可変を試みたようにも見えたが、前半終了時のなでしこのボール支配率はわずか34%。“攻撃時の可変”などはあまり意味を持たなかった。

 

 付け加えて言えば、スペインの中盤、特に両インサイドハーフのMFアイタナ・ボンマティとMFアレクシア・プテジャスは豊富な運動量を武器に、縦横無尽に走り、パスの中継地点を担った。中盤で数的不利が起きるかみ合わせの布陣では彼女たちを捕まえるのは無理があった。早くから5-4-1に変更し、最終ラインの両ストッパーが相手2枚のインサイドハーフを捕まえるように対処すべきだっただろう。

 

 それでも、先制したのはなでしこだった。13分、ペナルティーエリア右サイドからの直接FK。相手の壁はわずか4枚。キッカーの藤野は右足で壁の外を巻いた。相手GKの手をかすめ、ボールはゴールに吸い込まれた。リードをしているうちに手立てを考えるべきだった。

 

 すると、22分。昨年のFIFA最優秀選手賞者のボンマティは、なでしこジャパンの隙を突いた。スペインは右サイドから細かなパスワークを披露。その間にインサイドハーフのボンマティはDFラインの裏に抜け出し、GK山下杏也加を嘲笑うようにワンフェイクを入れ、ゴールに流し込んだ。

 

 なでしこは、MF宮澤ひなた(マンチェスター・Uウィメン)とMF清家貴子(三菱重工浦和レッズレディースから今夏ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンWFCに移籍が決定)というスピードスター2人を先発で同時起用したことが痛かった。清家は本来の右サイドではなく、左サイドで使われたこともあり持ち味を発揮したとは言い難く、前半でベンチに下がった。結果的に“捨て駒”のようになった。

 

 後半に入ると池田監督はようやく5-4-1に変更した。ピンチの数は前半より減ったが、それでも相手は世界女王の意地を見せてきた。29分、左サイドからカットインしたMFマリオナ・カルデンテイがパス交換から右足を一閃。ボールはゴール右隅に吸い込まれた。なでしこにとって、この失点は重くのしかかった。

 

 20分には副キャプテン・DF清水梨紗(マンチェスター・Cウィメン)がアクシデントに見舞われた。相手アタッカーとの1対1の際、右ひざを負傷。ピッチに倒れ込むと同時に、自らベンチに交代を要請した。このメンバーの中で、唯一替えの利かない存在が清水だ。大会期間中に復帰できないとなると、大きな痛手となる。

 

 なでしこジャパンは追いつくことなく、タイムアップの笛を聞いた。試合後、キャプテンのDF熊谷紗希(ローマ・フェミニーレ)はこう語った。

「前半、相手のインサイドハーフに対してなかなか出ていくことができなかったので、自分たちのかたちを変えて出やすくした」

 

 中2日でブラジルと対戦するなでしこジャパン。指揮官には、選手たちが少しでも楽に戦えるような柔軟な采配を期待したい。

 

(文/大木雄貴)

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