女子48kg級・⻆田夏実、今大会メダル第1号&夏季五輪500個目のメダル ~パリ五輪・柔道~
パリ五輪大会第4日目が、28日(日本時間)に行われ、柔道女子48kg級は⻆田夏実(SBC湘南美容クリニック)が金メダルを獲得した。日本勢今大会第1号&夏季五輪500個目のメダル獲得。男子60kg級は永山竜樹(SBC湘南美容クリニック)が準々決勝で微妙なジャッジにより敗れたが、敗者復活戦&3位決定戦に勝利して銅メダルを獲得した。
巴投げからの関節技という黄金ルートで、頂点に上り詰めた。「最後まで自分を信じようと思った」。31歳にして初出場のオリンピック。警戒されても確立した勝利の方程式を貫いた。
1回戦はナタシャ・フェレイラ(ブラジル)から巴投げで技ありを奪うと、腕ひしぎ十字固めで一本勝ち。46秒という“秒殺”で初戦を突破し、2回戦のジェロネー・ホワイトブーイ(南アフリカ)にも同じ流れで一本勝ちを収めた。試合時間1分9秒で料理した。準々決勝は昨年の世界選手権銀のシリヌ・ブクリ(フランス)。ホスト国の選手を相手にも巴投げで一本勝ち。試合時間は1分。3試合ともに時間をかけずに準決勝にコマを進めた。
勝てば銀メダル以上が確定する準決勝は18歳のタラ・バブルファト(スウェーデン)。⻆田同様に寝技を得意とする選手に苦戦した。互いに2度の指導を受けるものの4分が経過。どちらかがポイントを取った時点で決着となる無時間制限のゴールデンスコアに突入した。2分55秒、バブルファトが、消極的な姿勢と取られ、この日3度目の指導を受けて反則負け。⻆田は決勝進出が決まった。
決勝の相手はバーサンフー・バブードルジ(モンゴル)。⻆田が出場しなかった今年の世界選手権金メダリストだ。共に巴投げからの組み立てを得意とする。試合時間が3分経過しようとしたところで、⻆田が巴投げを仕掛ける。技あり。ポイントをリードすると、その後も守りに入らず試合終了の銅鑼の音を聞いた。
2021年の世界選手権から3連覇。金メダル候補としての重圧も小さくなかった。それでも自らの武器を信じ、勝ち切った⻆田に、ふさわしい色のメダルが架けられた。
「“手ぶらで帰るわけにはいかない”と思った」
準々決勝で不可解な判定により、敗れた永山だったが、意地の銅メダルだ。
準々決勝で対戦したフラン・ガルリゴス(スペイン)は昨年の世界選手権王者、苦戦していたのも事実だった。相手の絞め技に耐えている最中、主審が「待て」を掛けたようなジェスチャー&コールをした。だがガルリゴスは気付かないのか絞め技を緩めようとはしなかった。すると落ちてしまった永山を見て、主審はなんと「一本」を宣告したのだ。納得のいかない永山は抗議の意で握手を拒否し、しばらく畳を降りなかったが判定が覆ることはなかった。
一度切れた糸を取り戻すのは難しいところだが「せっかく親とか妻とか、たくさんの方々が応援にきてくれたので“手ぶらで帰るわけにはいかない”と思った」と目標を金から銅へと切り替えた。まずは敗者復活戦で、東京五輪銀メダリストの楊勇緯(台湾)に優勢勝ち。3位決定戦に進んだ。
サリー・イルディス(トルコ)との決戦で開始48′秒、大腰で技あり奪って試合を優位に運ぶ。残り1分を切ったところで返し技の横車で技あり。合わせ技一本で、銅メダルを手にした。
(文/杉浦泰介)
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