体操NIPPON、最終ローテで逆転の金 ~パリ五輪・体操男子団体~
パリ五輪大会6日目が現地時間29日に行われ、体操の男子団体は前回大会銀の日本が259.594点で優勝。2大会ぶり8度目の金メダルを獲得した。2位は0.532点差で中国、3位には1.801点差でアメリカが入った。日本は6大会連続の表彰台。0.103点差に泣いた東京五輪の雪辱を果たした。
前回の東京五輪メンバーであるエースの橋本大輝、主将の萱和馬、最年長(学年は萱と同じ)28歳の谷川航(いずれもセントラルスポーツ)に加え、五輪初出場の25歳・杉野正尭、20歳・岡新之助(いずれも徳洲会)の5人で臨んだ。2日前の予選は、橋本が鉄棒で落下するミスもあり、中国に次ぐ2位で通過した。
中国と同じ組で回る日本。第1ローテーションは床運動(ゆか)だ。橋本、萱、岡を起用し、いずれも14点台をマークし、イギリスに次ぐ全体2位と好スタートを切った。しかし第2ローテーションのあん馬で、橋本が落下するミスを犯し、13.100点。あん馬得意の中国に抜かれ、0.500点差を付けられた。主将の萱はエースに対しても「絶対諦めんなよ」と声をかけ、チームを鼓舞し続けた。
第3ローテーションのつり輪も中国が得意とする種目だ。中国は43.566点、日本は42.633点と差を広げられる。それでも第4ローテーションの跳馬で差を詰める。日本は橋本が14.900点をマークするなど43.433点。中国はスー・ウェイデがマットからオーバーする減点を受け、42.099点とスコアを伸ばせなかった。
第5ローテーションの平行棒。日本は萱、杉野、谷川がいずれも14点台後半をマークするも、中国はそれを上回るハイスコアは叩き出す。東京五輪の種目別平行棒金メダリストのゾウ・ジンユアンが16.000点を記録するなど、45.833点。44.365点を積み上げた日本と中国との差は3.267点に開いた。
最終種目は鉄棒。1種目3人がエントリーされるため、1人で1点以上のアドバンテージを稼がないと中国には追いつけない。日本にとっては得意種目だが窮地に追い込まれたと言っていい。ところが中国の1人目、スー・ウェイデがまさかの2回落下。11.600で一気に日本が逆転した。杉野、岡は14点台でまとめて、エースに託す。
日本のアンカーは橋本。2日前の予選では落下するミスを犯したが、チームメイトに背中を押されて演技に向かう。「背中にみんなの想いを乗せて演技することができた」と橋本。離れ技もきっちり決め、最後の着地を内側に半歩ずれるにとどめた。前回の個人総合&種目別鉄棒金メダリストの意地を見せた。「みんなに助けられた金メダル。この4人がいなかったから取れなかった。4人のおかげで最高の演技をすることができた」
0.103点差に金メダルのROC(ロシアオリンピック委員会)に届かなかった、東京の借りは返したかたちだ。橋本はあん馬での減点はあったが、ゆか、跳馬、鉄棒の3種目では14点台後半をマークし、エースの実力を発揮。跳馬でミスをした谷川もつり輪と平行棒で取り返した。萱と岡は4種目、杉野は3種目で14点台と安定した演技でチームを支えた。絶対的エースの力ではなく、総合力で勝ち取った金メダルだったと言えよう。
(文/杉浦泰介)