リザーブではなく“ジョーカー”菊池が流れ変えて銅メダル! ~パリ五輪・フェンシング女子フルーレ団体~
日本時間2日(大会9日目)、パリ五輪フェンシング女子フルーレ団体で日本代表(東晟良=共同カイテック、上野優佳=エア・ウォーター、宮脇花綸=三菱電機、菊池小巻=セガサミーホールディングス)が銅メダルを獲得した。フェンシングの日本女子勢では個人・団体を通じて初のメダル獲得となった。3位決定戦・日本代表対カナダ代表戦はグラン・パレで行なわれ、日本が33対32で接戦をものにした。金メダルはアメリカ代表、銀メダルはイタリア代表が獲得した。
フェンシングには、フルーレ、エペなど複数の種目がある。エペは全身が攻撃の有効面であり、そこを突けばポイントが入る。一方、今回女子団体が銅メダルを獲得フルーレは、攻撃の有効面が胴体のみだ。さらに、攻撃には「優先権」がある。この優先権の説明については、日本フェンシング協会公式サイトから引用する。
<フルーレは「優先権」を尊重する種目です。剣を持って向かい合った両選手のうち、先に腕を伸ばし剣先を相手に向けた方に「優先権」が生じます。相手がその剣を払ったり叩いたりして向けられた剣先を逸らせる、間合いを切って逃げ切るなどすると、「優先権」が消滅し、逆に相手が「優先権(すなわち反撃の権利)」を得ることになります>
団体戦は、両チームから3選手が出場し、9回(1ピリオド=3分)の対戦で合計ポイントが多い方、もしくは先に45点を取ったチームが勝利となる。
歴史的快挙を達成したパリ五輪・女子フルーレ団体日本代表チームに、話を戻そう。
1回戦(準々決勝)、ポーランド代表には45対30で日本が勝利。準決勝では、第1シードのイタリア代表に39対45で敗れ、日本は3位決定戦に回った。
3位決定戦の相手はカナダ代表。第1ピリオド、上野が3対3。第2ピリオド、宮脇が5対5。第3ピリオド、東が10対10。
迎えた第4ピリオド――。ここで日本を率いるフランク・ボアダンコーチが動いた。宮脇に代えて、リザーブの菊池を送り込んだ。この左利きの27歳が流れを日本に大きく引き寄せた。カナダの左利きの選手に対し、積極的に攻めた。このピリオド、4得点3失点、計14対13。日本が初めてリードを奪った。
第5ピリオドで上野もこの流れに乗り、19対14。後続のために貯金をつくった。第6ピリオドの東は1得点3失点、計20対17。
菊池の再登場は第7ピリオドだった。相手陣地に攻め込むだけでなく、わざと自陣に引いて相手を引き込み、得点を奪うなど巧みな駆け引きも披露。9得点8失点、計29対25とリードを4点に広げて東にバトンを渡した。
このリードを第8ピリオドの東、第9ピリオドの上野が守り切り、33対32で日本が逃げ切った。
試合の流れを変えたのは、難しい場面で投入された菊池である。彼女はパリに発つ前、この活躍を予言していた。5月下旬、都内にあるナショナルトレーニングセンターで、菊池はパリへの抱負をこう述べていた。
「チームの雰囲気が悪いときは自分が出て、盛り上げたい。1つでも多くポイントを取れる存在になりたいと思います。それはコーチから求められていることだろうと思います。(リザーブの自分は)オリンピックで、どんな場面で出場するかわからないですが、試合に出たときには、ポイントを取り返してみんなの元に帰ってくる。頼りになる存在になれたらいいなと思います。
冷静に試合運びをすることが私の長所。ディフェンスでもアタックでも全部、私は取れる。どの状況でも戦えるのが私の強み。どういう状況に置かれても頼りにしてもらっていいかなと思います」
リザーブという単語は、菊池には当てはまらない。技術はもちろん、会場の雰囲気にのみこまれず、大舞台でも自分の実力を発揮するメンタルの強さを併せ持つ彼女こそ、流れを自軍に引き寄せる最高のジョーカーである。
(文/大木雄貴)
日本代表選手4名は、日本フェンシング協会を通じてコメントを発表した。
■東晟良
ずっと目指してきたオリンピックでメダル獲得ということを実現できて本当に嬉しいです!まずは、勝ってくれたチームの皆、声が枯れるまでサポートしてくれたコーチ達、スタッフの皆さん、日本から来てくださった皆さん、そして両親に本当に感謝しています。自分達ならいけると信じていましたが、いざメダルを手に持つと驚きと、喜びがすごくわいてきました!今までサポートしてくださった皆さんにメダルを見せて感謝の気持ちを伝えたいです。
■上野優佳
オリンピックの舞台で戦う事ができ、メダルを獲得する事ができて本当に嬉しいです。
メダルを獲得する事を目標にしていましたが、試合前は取れるかどうか不安の方が大きかったと思います。しかし、試合に入るとチーム全員が同じ目標に向かって全力で戦う事ができたので、この結果に繋がったと思います。そして、夜遅くまで会場やテレビで応援してくださった方には本当に感謝しています。ありがとうございました。
■宮脇花綸
念願のオリンピックメダリストになりました。「絶対に」という気持ちはありましたが、決して約束されたものではなく、大舞台のプレッシャーもありました。そんな中で心強い仲間たちに本当に支えて貰いました。個人戦ではまだまだ甘さもあり、4年後に向けていい刺激となる大会にもなりました。ロスに向け、これからも頑張ってまいります!
■菊池小巻
今回、日本女子フルーレ史上初の銅メダルを獲得することが出来て嬉しい気持ちでいっぱいです。これまで苦しいことも一緒に乗り越えてきたチームのみんなとオリンピックという大舞台で喜びを分かち合えて幸せな瞬間でした。たくさんの人に感謝を伝えたいです。ありがとうございました。