ライルズ、1000分の5秒差で金 写真判定の大混戦制す ~パリ五輪・陸上男子100m~
パリ五輪大会12日目、陸上競技の男子100m決勝が日本時間5日に行われ、ノア・ライルズ(アメリカ)が9秒79で金メダルを獲得した。銀メダルは写真判定による1000分の5秒差(記録は9秒79)でキシェーン・トンプソン(ジャマイカ)、銅メダルには0.02秒差でフレッド・カーリー(アメリカ)が輝いた。日本勢はサニブラウン・アブデルハキームが準決勝で日本歴代2位となる9秒96の自己ベストをマークしたものの、決勝に進出できなかった。
陸上競技の華、人類最速のスプリンターが決まる種目だ。世界記録保持者のウサイン・ボルト(ジャマイカ)が引退以降は絶対王者が不在。世界選手権を含め、優勝者は毎回変わった。前回の東京五輪はラモント・マルセル・ジェイコブスが同種目イタリア初の金メダルをもたらした。
ファイナリストには陸上大国アメリカから昨年の世界選手権ブダペスト大会金のライルズら3人、短距離王国のジャマイカからは今季世界最高9秒77をマークしたトンプソンら2人。連覇を狙うジェイコブスに加え、アカニ・シンビネ(南アフリカ)、レツィレ・テボゴ(ボツワナ)が名を連ねた。
静寂を打ち破るように号砲が鳴らされ、8人が一斉に飛び出した。序盤先行したのはジェイコブス。30m付近でトップに立ったのはトンプソンだ。するとライルズが外側のレーンからまくってきた。40m通過までは最下位だったが、ほぼ一列に並び、ゴールへ雪崩れ込む。
なんと7人までが写真判定という僅差。ライルズとトンプソンに至っては9秒79の同タイムで、わずか1000分5秒先着した前者が“最強のスプリンター”という称号を得た。ライルズは自己新記録を更新し、世界選手権に続く金メダル。陸上大国の威信を示した。
日本からはサニブラウン、東田旺洋(関彰商事)、坂井隆一郎(大阪ガス)の3人が挑んだ。結果は東田と坂井が予選敗退。サニブラウンは予選を通過したものの、準決勝で自己ベストを塗り替え、日本記録まで0秒01と迫る好タイムをマークしながらファイナルの舞台に立つことはできなかった。
サニブラウンはレース後、「こういうところでもっと出していかないといけない。全部を出し切る勢いでスタートしたのですが、最後まとまりきらなかったので失速した」と悔やんだ。この悔しさは4×100mリレーで晴らしたいところだ。
(文/杉浦泰介)