グレコ77kg級・日下尚、逆転の金 女子50kg級・須﨑優衣は意地の銅 ~パリ五輪・レスリング~
パリ五輪大会15日目、レスリング競技が日本時間8日に行われた。男子グレコローマンスタイル77kg級決勝は日下尚(三恵海運)がデメウ・ジャドラエフ(カザフスタン)を5-2で破り、金メダルを獲得した。前日の文田健一郎(ミキハウス)に続き表彰台の頂点に立った。女子50kg級は須﨑優衣(キッツ)が銅メダルを獲得。東京五輪金に続く2大会連続で表彰台に上がった。同級の金メダルにはサラアン・ヒルデブラント(アメリカ)が輝いた。
「最高の6分間でした」
自身の「尚」の由来でもある2000年シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子のコメントをオマージュした。日下は香川県出身の23歳。レスリングの名門日本体育大学卒業で、60kg級で金メダリストの文田の5学年後輩にあたる。「中学、高校生の時に健一郎先輩が世界チャンピオンになって、本当に憧れの選手が先輩として自分を引っ張っていってくれたなって感じです」。初出場の檜舞台に立ち、日下は先輩に続いた。
前に出るレスリングが持ち味だ。初戦(9-0)、準々決勝(12-2)とテクニカルスペリオリティー(グレコローマンスタイルは8点差)で勝ち上がり、準決勝は3-1で競り勝った。
決勝ではジャドラエフに場外へ押し出されて先制を許す。先にパッシブを課され、さらに1ポイント。バーテレポジション(腹ばい状態)のディフェンスは凌いだものの、トータル0-2とリードして第1ピリオドを終えた。
第2ピリオド開始早々に試合は動いた。日下が組みながら相手を押し出すように圧力をかけ、そこから投げを打つようなかたちでマットに打ち付けた。その後の攻撃は凌がれ、一旦は2-2の同点。その後審判団がビデオで確認をし、2点が加えられて4-2と逆転に成功した。日下は残り数分間も攻め続ける。相手にパッシブが宣告され、1点を追加。バーテレポジションから追加点を奪えなかったものの、5-2のまま試合を締めた。
日下は「最高の6分間」と話したが、須﨑は「苦しい2日間だった」と振り返った。東京五輪金メダリストはまさかの初戦負け。その後、決勝に進出した対戦相手が翌日の計量で失格となったため、敗者復活戦はなしで3位決定戦に臨むこととなった。
東京五輪5位のオクサナ・リバチ(ウクライナ)をスピーディな攻撃で圧倒した。タックルで足を取って早々に2ポイント先取すると、第1ピリオドは鋭いタックルで得点を重ね、8-0とリード。第2ピリオドに入っても攻め手を緩めなかった。タックルでバックを取って10-0となりテクニカルスぺシャオリティ(フリースタイルは10点差)で勝利した。
連覇こそならなかったが、意地を見せた。
「オリンピックチャンピオンの須﨑優衣じゃなかったから、もう価値がないんじゃないかと思っていた。負けたにも関わらず声援を送ってくれて、信じてくれ励ましてくれた方々に感謝したい。オリンピックチャンピオンになる姿を、もう1度見てもらえるように、これからの4年を頑張っていきたいと思います」
(文/杉浦泰介)