NFL08〜09年シーズンが大詰めを迎えている。
 今シーズンはプレーオフに入って、両カンファレンスの上位シードが軒並み敗退するという意外な展開となった。昨季王者ジャイアンツ、名QBペイント・マニングを擁するコルツら、ビッグネームはすでにすべてウィンターバケーションに突入。そんな波乱続きの今季、「地球上最大のスポーツイベント」スーパーボウルはいったいどんな対戦になるのか……。
 今週末、最終決戦への切符を賭けた各カンファレンスのタイトル戦に全米のスポーツファンの熱い視線が注がれることになる。
(写真:今週末はアメリカで一番人気のスポーツNFLに多くのファンの視線が注がれる)
 1月18日 NFCタイトル戦
フィラデルフィア・イーグルス(11勝5敗1分)

アリゾナ・カージナルス(11勝7敗)

 NFCの頂上戦は、プレーオフ開始前には誰も予想できなかった意外なカードとなった。イーグルスは第1シード・ジャイアンツの2連覇の夢を砕き、伝統の弱小球団・カージナルスはパンサーズにまさかの快勝でフランチャイズ史上初のタイトル戦進出を決めた。
 昨年11月の直接対決時には、イーグルスが28点差をつけて地元フィリーで圧勝。ただ今回の試合はアリゾナで行なわれる上に、両者を取り巻く環境も大きく変化しているため過去の結果は参考になるまい。

「シーズン中の試合とプレーオフ戦は別物なんだ。特にカージナルスのアリゾナでの強さは誰もが知っている(今季地元で7勝2敗)。相手のファンの大歓声の中で凄い雰囲気となるだろうね」
 イーグルスのRBブライアン・ウエストブルックもそう語り、敵地での戦いに気を引き締める。実際に地力では、より厳しい戦いを勝ち抜いてきたイーグルスがやや上かもしれない。だがホームフィールドの有利・不利を考慮すると、両者はほぼ互角との見方をせざるを得ないだろう。

 注目選手は2人。まずイーグルスのQBドノバン・マクナブは好調時には超人的な力を発揮し、駄目な日には地元フィリーのファンからも激しいブーイングを喰らってしまうような選手。イーグルスが勝つとすれば、この波の激しい大黒柱が本来の力を発揮したときに違いない。
 一方、カージナルスのWRラリー・フィッツィジェラルドからも目が離せない。これまで全国的には無名だったエースWRは、今プレーオフで驚異的なレシーブを連発して一躍ブレイクした。長身とバネ、捕球技術のすべてが一級品。いまやフィッツジェラルドがリーグ最高のレシーバーと断言する識者は多く、QBカート・ワーナーとのホットラインはイーグルス守備陣にとっても脅威となる。
 いずれにしてもこのフレッシュなタイトル戦は、激しい攻防の末に接戦となることが濃厚。どちらが勝つにせよ、ファンの溜飲を下げさせるような好ゲームが期待できそうだ。
(写真:カート・ワーナー(写真)からのパス回しラリー・フィッツジェラルドへのパス攻撃がカージナルスの生命線)

 1月18日 AFCタイトル戦
ボルチモア・レイブンス(13勝5敗)

ピッツバーグ・スティーラーズ(14勝4敗)

「良いチームというのは守備に秀でているものなんだ。優れたディフェンスを備えている限り、どんなゲームにも勝つチャンスがある。そういった意味で、ウチとレイブンズがAFCで最強だとずっと信じてきたよ」
 スティーラーズのLBラリー・フッテがそう語るように、固いディフェンスを基調とした両チームは今シーズンを通じて常に安定した力を示してきた。
 レイブンズは第6シードだが、スティーラーズと同地区でなければもっと上の順位となっていたはず。シーズン中に2度対戦し、2度とも小差(23−20/13−9)ながらスティーラーズが制したライバル戦は、文句なしのAFC最強対決と呼んで良いだろう。
 怪物LBレイ・ルイスを中心に守備の伝統を築き挙げてきたレイブンズは、今季も相手攻撃陣に強烈なプレッシャーを与え続けている。LBジェームス・ファリアー、ジェームス・ハリソン、Sトニー・ポラマルら経験豊富なリーダーに支えられたスティーラーズ守備陣もハードタックルで相手を恐れさせる。

 そんな両者が迎えた3度目の対決も、ロースコアでの熾烈な守り合いとなることは必至。しかし直接対決ですでに2度勝っていること、故障者が少ないこと、地元で戦えること、などの理由から実力伯仲の1戦は今回もスティーラーズがやや有利と見る。
 さらに肝心のQBをジョー・フラッコというルーキーに任せるレイブンズに対し、スティーラーズのエースQBベン・ロスリスバーガーにはスーパーボウル制覇の実績がある。緊迫の攻防戦の中で、QBの年輪の違いが勝負を分ける気がしてならないのだ。
(写真:フィラデルフィアのスタジアムの記者席からの風景。この時期は全米から記者たちが集まってくる)

 ただ……入団時の前評判は決して高くなかったフラッコだが、今季の安定した司令塔振りからは類い稀なポテンシャルは感じさせた。この新人QBが好むロングパスが大舞台で効力を発揮した場合、両チームの力関係も逆転する。そしてそのときには、フラッコは一躍シンデレラボーイとしてスター街道に躍り出るかもしれない。


杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
1975年生、東京都出身。大学卒業と同時に渡米し、フリーライターに。体当たりの取材と「優しくわかりやすい文章」がモットー。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシング等を題材に執筆活動中。

※杉浦大介オフィシャルサイト Nowhere, now here
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